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女子野球の新時代到来!~無限大の可能性を開拓~

女子野球の注目度が全国的に高まる中、野球大国である広島でも、三次市と廿日市市が一般社団法人全日本女子野球連盟により「女子野球タウン」として認定されたニュースは記憶に新しい。あわせて女子硬式野球部を新設する高校が増加。ほか、県内初となる社会人女子硬式野球チーム「はつかいちサンブレイズ」が誕生するなど、県全体で明るい動きが見えている。

今回は、三次市で開催された侍ジャパン女子代表候補合宿の合間に、女子野球のキーパーソンであるお二人にインタビュー。
 侍ジャパン女子日本代表監督の中島梨紗(なかしま・りさ)さん、そして全日本女子野球連盟代表理事の山田博子(やまだ・ひろこ)さんに、女子野球の普及発展への思いを聞いた。

女子野球人口拡大!プレーも仕事も女性が輝ける環境を整備

―現在の女子野球の盛り上がりをどう捉えていますか。

中島 私が選手だった頃に比べ、女子野球が世間に広まっている印象があります。顕著に示すのは、高校の女子硬式野球部の数です。私が高校生の頃は、全国に女子の硬式野球部はたった5校しかありませんでした。現在は大幅に増え、来年には60校近くになると聞いています。

山田 私が女子野球に関わるもっと前から、たくさんの人が女子野球普及のために力を注がれてきました。それらの活動が蓄積されて、点が線になり、線が面になって推し進めている感覚があります。この数年、あらゆる規定を整備してきました。そのひとつに、組織変革があります。女子野球の課題として、組織の複雑化が問題になっていました。それぞれ歴史ある組織がまとまり、ひとつにとなれたことは大きいです。皆さんから「一緒に頑張りましょう」と言ってもらえて、嬉しいですね。当然、連盟がやるべきことと、チームがやるべきことは違います。私たち連盟ができることは、最大限に頑張っていきたいと思います。

―女子野球選手がプレーを諦めることなく、輝ける時代の到来です。
 中島 小中学校で、男子に混じり、部活や地元チームで野球をやっていた子が、高校でも野球を続けられる環境が徐々に整っていると感じます。女子硬式野球部をもつ高校が今はたくさんあるため、進学先の選択肢が増えました。プレー人口が増えれば、必然とレベルも上がっていきます。今後更に、上を目指す良い選手がどんどん増えていくのではと思います。

―山田さんは以前から「女性に野球を諦めてほしくない」とおっしゃっていました。
 山田 8月、全日本中学女子軟式野球大会が京都で開催されました。主催者の方から電話があり、「大会に出た女の子たちみんなが、『甲子園を目指して頑張る』って言っていましたよ」と教えてもらいました。すごく嬉しかったですね。そして選手だけでなく、審判やアナウンスなどの仕事に就く女性が、結婚して出産しても女子野球に携わっていける環境づくりにも力を注いでいます。先日、「子供がいるから現場に向かえない」というアナウンス担当の女性がいたのですが、「ぜひ子供も一緒に連れてきてください」とお願いし、保育士免許を持つスタッフを配備しました。出産して子供がいても野球から離れることなく、野球に関わる仕事を続けられる環境を整備していきたいです。

―プレイヤーとして、そして監督として、そのような環境は嬉しいですか。
 中島 嬉しいですね。本当にすごいことだと思います。私はよくスポナビをチェックしているのですが、「女子野球」というカテゴリーができていて、とても感動しました。プロ野球、高校野球、メジャーリーグと並んで「女子野球」枠ができているんです。メディアが女子野球を認識してくれたんだと本当に嬉しく思いました。私は現場の人間なので、博子さんが女子野球普及のために動いてくださっている隅々までを把握しておらず「博子さん!女子野球!女子野球が出てますねっ」と、興奮気味に話してしまいました(笑)。
 

山田 気づいてくれて、喜んでもらえて良かった(笑)。

―中島さんは長年トップ選手として活躍されてきました。女子プレイヤーゆえに苦労した経験はありますか?
 中島 私の場合、今では理不尽だと思われることでも、「それが当たり前」という感覚で野球をやってきました。今はスポーツの世界でも男女平等と言われていますが、私はちょっと違うなと思う節もあります。アメリカの女子サッカーを例に出すと、男女の賃金格差を撤廃する活動をしているようですが、あまり賛成はできません。現状、女子野球は男子の野球のように、お客さんを楽しませる力はまだまだだです。いつか、皆さんに楽しんでもらえる女子野球界をつくっていけたらと思っています。

山田 監督や選手たちは、向上心が非常に高いので「自分たちはまだまだ」と思っていると思います。でも、試合を見ている側の意見は全く違います。10月はじめに、愛媛県松山市で第18回全日本女子硬式野球選手権が開催されたのですが、手に汗握る試合ばかりでした。実際に球場で見ている人、中継を見ている人たちもびっくりされていました。YouTube の生配信は1万ビューを超え、本当に沢山の人が女子野球を見て楽しんでくださっていると感じています。「もっと宣伝しなくては。こんなすごい試合を松山でやっているのに」と市の担当の方がお話されていて、ありがたく思いました。
 中島 ありがとうございます。嬉しいですね。

山田 より上を突き詰めていく任務と責任を、中島監督は背負っておられると思います。私たち連盟は、選手たちをサポートすべく、現場とは違う役割を果たしていきたいと思っています。