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【突撃!広島アスリートの食卓<第5回>】『サンフレッチェ広島』OB・森﨑 浩司(サッカー)×『サンフレッチェ広島レジーナ』近賀 ゆかり(サッカー)

広島県はプロ野球やJリーグをはじめ、数多くのトップスポーツチームが存在する『スポーツ王国』だ。本連載は、競技の垣根を越え「新たなスポーツの楽しみ方」を提供する広島横断型スポーツ応援プロジェクト、通称『Team WISH』に参加する26チームの選手・関係者が登場し、選手を支える大事な要素である『食』を軸に、対談形式で彼らの魅力をお送りする。

連載第5回目は、広島市をホームタウンとするプロサッカークラブ『サンフレッチェ広島』から、アンバサダー・森﨑浩司(もりさき・こうじ)さんと、同じく広島市をホームタウンとする『サンフレッチェ広島レジーナ』から近賀ゆかり(きんが・ゆかり)選手が登場。

森﨑さんが2016年までプレーした『サンフレッチェ広島』は、Jリーグ発足時から加盟しているオリジナル10の1つ。J1優勝3回を誇り、2022年にはクラブ創設30周年を迎えた。Jリーグ初の双子プロサッカー選手、森﨑和幸さん(現・サンフレッチェ広島クラブリレーションズマネージャー)・浩司さん兄弟のほか、J1通算得点数歴代2位の記録を持つ佐藤寿人さんら多くのスター選手を輩出。現在は広島市中区基町にサッカー専用スタジアムの建設が進んでおり、2024年の完成に向け県民の期待と注目高まるプロサッカークラブだ。

一方、近賀選手が所属する『サンフレッチェ広島レジーナ』は、2021年にサンフレッチェ広島が創設した女子プロサッカークラブ。同年秋に開幕した女子プロサッカーリーグ『WEリーグ』に加盟しており、2シーズン目を迎えたばかりの新設クラブだ。WEリーグには2022年現在11クラブが参入しているが、前身となるチームを持たないクラブはレジーナのみ。近賀選手のほか、福元美穂選手、上野真実選手ら日本代表経験を持つ選手も複数所属している。

 今回は、同じ“サッカー”というスポーツに携わるお二人を招き、サッカー選手ならではの共通点や『食』へのこだわり、広島とサッカーの関係について語ってもらった。

スポーツへの“熱さ”は海外顔負け!? サッカー界のレジェンド2人が語る広島の印象

ー森﨑さんはサンフレッチェ広島のアンバサダー、近賀選手はサンフレッチェ広島レジーナの現役選手として活動されています。お仕事でご一緒されることはありますか?

森﨑「そうですね。レジーナの試合を観戦する機会があるときには、近賀選手にお話を聞かせていただいたり……」

近賀「いただいたり……(笑)」

森﨑「レジーナのチーム状況を、教えていただいたりしています(笑)」

近賀「私は浩司さんに、サンフレのことを全部教えていただいています」

ー非常に息のあったコメントを、ありがとうございます(笑)。それではまず、お二人がサッカーを始めたきっかけや、夢中になったきっかけを教えてください。

近賀「兄がサッカーをやっていたので、その影響もあって小さい頃からサッカーが身近にありました。周りの友達も男の子ばかりだったので、遊びの延長線上にサッカーがあったという感じですね。『遊ぶこと=サッカー』だったので、それが楽しくて夢中になっていきました」

(サンフレッチェ広島 アンバサダー 森﨑浩司氏)

森﨑「僕の場合は、通っていた小学校にサッカークラブがあったことがきっかけでした。僕とカズ(森﨑和幸)は双子で、当時から2人とも体が大きかったですし、学年の中でも足が早かったですから目立っていたんでしょうね。それで、サッカーをやっていた先輩から声をかけられたのもきっかけの1つでした。もともと体を動かすことは好きでしたし、近賀選手と同じで、遊びの延長のような感覚で夢中になりました」

近賀「確かに、足が速いと目立ちますよね。小学校のサッカークラブに女の子の部員はいましたか?」

森﨑「僕たちの代にはいませんでした。ここ数年では、サッカーをしている女の子が増えてきている印象がありますね。WEリーグが発足して、女子サッカーがプロ化したこともきっかけの1つになっていると思いますし、広島でサッカーをしている女の子たちはレジーナが誕生したことで、より夢や目標をもってサッカーができるようになっているのではないかと感じています」

(サンフレッチェ広島レジーナ キャプテン 近賀ゆかり選手)

近賀「私が小学生の頃は、女の子がサッカーをしているのが珍しい環境だったので、周りで他にサッカーをしている子はいませんでした。女子サッカーも今ほど身近な存在ではなかったので、中学に上がると競技を続けられる環境は学校のサッカー部しかありませんでしたし、そこでは『女子は試合には出ることができない』とも言われていました。私の場合は、たまたま学校以外にも女子のクラブチームがあると紹介してもらえたので、サッカーを続けることができました」

森﨑「そんな経緯があったんですね。そういう意味では、少しずつ環境は良くなってきているんじゃないかな」

近賀「そうですね。ただ、今でも中学に上がるタイミングでサッカーを続けられる場がなくなって、競技を辞めてしまう女の子たちがいると聞いています。WEリーグや女子サッカーが盛り上がっていく中、女の子がサッカーを続けられるクラブチームが増えてきていることは、私としてもすごくうれしく感じています」

ーお二人は、当時憧れていた選手はいましたか?

森﨑「僕たちの年代は、やっぱりカズさん(三浦知良)を挙げるんじゃないでしょうか。カズさんは当時、ヴェルディ川崎(現:東京ヴェルディ)で黄金期を迎えていました。僕たちが小学6年の時にJリーグが誕生したのですが、リーグ発足1年目にカズさんが大活躍して、初代MVPを獲ったことが印象的ですね。Jリーグアウォーズでバルーンの中から登場したシーンは、今でも忘れられません」

近賀「私は神奈川が地元ということもあって、もともと横浜マリノス(現:横浜F・マリノス)のファンだったんです。一度練習を見学しようと思って行ってみたことがあるのですが、その日がたまたまオフの日だったみたいで(笑)。見学できなくて残念がっていたら、井原(正巳。現:柏レイソルヘッドコーチ)さんが、愛犬といっしょにジョギングをしているところに遭遇して……(笑)。そのときの光景は、今でも鮮明に覚えていますね。選手としてかっこいいなと思っていたのはベッカムです。見た目だけでなく、キックのモーションも独特で、すごくかっこいいなと思っていました」

(今の髪形はベッカムヘアーの進化形!?)

森﨑「実は僕の髪型も、ベッカムヘアーに影響を受けているんですよ」

近賀「そうなんですか?」

森﨑「2002年の日韓ワールドカップのときに、日本でもベッカムが大人気になったじゃないですか。僕も『あの髪型いいなあ』と思って、美容院で『ベッカムヘアーにしてください』とお願いしたんです。今の髪型はそこからの進化形です(笑)」

近賀「なるほど、どうりでかっこいいなと思ってました!」

森﨑「忖度ありがとうございます(笑)。僕からも近賀選手に1つ質問したいんですが、小学生の頃、憧れの女子サッカー選手はいなかったんですか?」

近賀「当時は“女子サッカー”というものを知らなかったので、女子のトップリーグがあることや、『大きくなってもプレーできるリーグがある』、『プロサッカー選手になるという選択肢がある』ということさえ知りませんでした。女子サッカー選手の存在を知ったのは中学に入ってからですね。女子日本代表(なでしこジャパン)や、日テレ・ベレーザ(現:日テレ・東京ヴェルディベレーザ。東京をホームタウンとする女子サッカークラブ)の存在を知りました。ただ、そのときも選手というと澤(穂希)さんくらいしか知らなかったので、女子サッカーを身近に感じるようになったのは高校生に上がったくらいからでした」

ー近賀選手の考える、女子サッカーならではのおもしろさは何でしょうか?

近賀「女子サッカーの魅力としては、『最後まで諦めない気持ち』や『チームのために』といったメンタルの部分、選手の一体感などが男子チームよりも見えやすいと言われますね。技術的な面で非常に優れた選手もたくさんいますし、初めてサッカーを見る人たちに、『観戦しやすい』と言っていただけることもあります」

森﨑「決して体の大きな選手ばかりではないけれど、プレーはすごくパワフルだよね。どこからそのパワーが生まれるのかな、と見ていていつも感動します。試合の時間も男子と同じで、90分間ハードワークし続けないといけないじゃないですか?」

近賀「そうですね」

森﨑「女性ファンも、自分と体格や年齢がそんなに変わらない選手たちが頑張っているのを見ると、元気をもらえるんじゃないでしょうか」

近賀「体格が一般の人とあまり差がない選手もいるので、サッカーをしているときとしていないときの“ギャップ”があると言われることもありますね」

(女子高生に例えられたチームメイトを振り返り確認する近賀選手)

森﨑「確かに。レジーナの選手たちも、練習が終わったら女子高校生のように盛り上がっていることもあるし、本当に仲の良さが伝わってくるよね。そういう意味でも女子サッカーは、『チームで戦っているんだ』という一体感が伝わりやすいような気がします」

近賀「でも、一体感や諦めないメンタルというのは、男子とも共通する部分ですよね」

森﨑「もちろん。男子にも『最後まで諦めない』であったり『ひたむきに取り組む』という姿勢はあります。ただ、女子サッカーのほうが、よりファンやサポーターに“思い”の部分が伝わりやすいのかもしれないですね」

ー近賀選手は神奈川県出身とのことですが、広島の街や広島県民のスポーツに対する熱意をどのように感じていますか?

近賀「広島に来たばかりの頃は、想像を超えるスポーツへの“熱さ”に驚きました。以前プレーしていた海外には、スポーツに対してすごく熱い地域もあったのですが、日本国内ではここまでスポーツへの関心が高い場所でプレーしたことがなかったので、うれしさも感じました」

森﨑「過去にプレーしていた、ヨーロッパやオーストラリアに環境が似ているということ?」

近賀「そうですね。広島は、そういう土地にすごく似ていると感じます。海外でプレーして、スポーツに対して熱量のある地域の良さも感じていたので、それによく似た熱さのある広島でサッカーができることは、とても幸せだと思っています」

森﨑「僕はずっと広島で生まれ育って、クラブもサンフレッチェ一筋だったので、これまであまり広島に縁がなかった選手がそう言ってくれるのを聞くとうれしいですよね。改めて、広島はスポーツに対して熱い街なんだなと感じますし、『広島=スポーツの街』という捉え方をしてもらえるのは、サッカーに携わってきた身としてもうれしく思います」