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【突撃!広島アスリートの食卓<第3回>】『小泉病院ブルーアローズ』立川 夏波(ソフトボール)×『ヴィクトワール広島』柴田 雅之(自転車ロードレース)

広島県はプロ野球やJリーグをはじめ、数多くのトップスポーツチームが存在する『スポーツ王国』だ。本連載は、競技の垣根を越え「新たなスポーツの楽しみ方」を提供する広島横断型スポーツ応援プロジェクト、通称『Team WISH』に参加する26チームの選手・関係者が登場し、選手を支える大事な要素である『食』を軸に、対談形式で彼らの魅力をお送りする。

連載第3回目は、三原市をホームグラウンドとする実業団ソフトボールチーム『小泉病院ブルーアローズ』から、立川(たつかわ)夏波(なつは)選手、そしてプロ自転車ロードレースチーム『ヴィクトワール広島』から、柴田(しばた)雅之(まさゆき)選手が登場。

立川選手が戦うソフトボールは、野球から派生したスポーツの一つ。イニングは7回制、投手はマウンドの代わりにピッチャーズサークル内から下投げで投球するなどのルールは異なる。競技人口は世界で男女合わせて3000万人と言われており、女子ソフトボールは1996年アトランタ五輪から正式種目となった。その後、2016年からは除外されるなど紆余曲折を経て、2020年東京五輪で復活を果たし、見事金メダルを獲得した。(2024年パリ五輪では実施されないことが決定している)

一方、柴田選手の自転車競技は、主に舗装された道路を自転車で駆け抜けるレース競技。着順を競う「ワンデイレース」や、着順だけでなく指定地点の通過順におけるポイントなどを競う「ステージレース」に分かれている。国外レースではジロ・デ・イタリアやツール・ド・フランスが特に著名で、現地での観客は1万5000人にものぼる。日本では毎年5月にツアー・オブ・ジャパンが開催され、国内外の16チームが参戦し、チーム総合時間賞、個人総合時間賞、ポイント賞、山岳賞などを争っている。毎年7月には、広島県三原市で広島ロードレースを開催しており、三原市との親交も深い。

 今回は“広島県三原市”というキーワードの下、全く異なる競技に携わる両選手を招き、お互いの競技の印象や意外な共通点、『食』へのこだわりなどを語ってもらった。

異なる競技の第一線で活躍する2人。共通するのは〝負けず嫌い〟と〝かけひき〟のテクニック

(小泉病院ブルーアローズ 主将 立川夏波選手)

--お2人が、競技を始めたきっかけを教えてください。

立川:父が趣味でバスケットボールとソフトボールをしていたので、その2つは小さい頃から身近な競技でした。小学校に入学した時に、どちらの競技をやりたいかと聞かれたのですが、その時に選んだのがソフトボールでした。ただ、当時通っていた小学校にはソフトボール部がなかったので、遠く離れた地区のソフトボールチームに入ることになりました。そのチームは男の子ばかりのチームだったのですが、「やらせてください」と頼み込んで入れてもらいました。

柴田:僕の場合は、高校時代の通学手段として自転車に乗り始めたことがきっかけです。家から学校まで13キロほど離れていたのですが、あまりにも遠いので、スポーツタイプの自転車を買ってもらったんです。毎日乗っているうちに少しずつ通学にかかる時間が短くなっていたのですが、ターニングポイントになったのは、ある日の学校の帰り道です。下校が遅くなった日の帰り道で、本格的な装備のサイクリストに抜かされたんです。そこで思い切って相手についていってみたら、通学カバンを持っていても何とかついていけたので、「これは、いけるんちゃうか」と感じました(笑)。

(ヴィクトワール広島 副主将 柴田雅之選手)

もともと負けず嫌いということもありますが、自転車は1人でもトレーニングのできる競技ですし、「前の自分よりも早くなった」という手応えを感じられるのも楽しかったですね。それまでは10年間テニスをしていたのですが、大学で本格的に自転車競技に転向しました。

立川:負けず嫌いという点では、私も同じですね。たぶん、性格が父に似たのだと思います(笑)。 実は足は遅くて、徒競走では一番になったことがないんです。でも、障害物競走は負けたことがありません。

柴田:そうなんですか?

立川:セコく、ずる賢く、「足が遅い自分が、他の子よりも早くゴールするにはどうすれば良いか」を考えるのが向いていたのかもしれませんね(笑)。 ただ、そうした考え方は、今のソフトボールという競技にもすごく活かされているんです。投手と打者の対戦にしろ、配球の読み合いにしろ、試合の中では〝かけひき〟をするシーンがたくさんあります。例えば守備であれば、本当は捕球できそうにない球であっても、「オッケー、捕れる!」と声を出すことでランナーは足を止めるんです。直接プレーには関係がなかったとしても、捕球の動作をするだけで進塁を防げたりもします。子どもの頃から「どうすれば少しでも勝ちに近づけるか」を考えてきたことが、そうした〝かけひき〟のテクニックにつながっているのだと思います。

柴田:実は自転車も、レースの中で〝かけひき〟があるんです。自転車競技は何十台もの自転車がマラソンのように一斉にスタートして同じコースを走るのですが、力の差があったとしても、必ず強い選手が勝てるとは限りません。例えば、すごく強い選手がアタック(レース中に急加速して集団から飛び出す動き)しようとしているとします。僕の役目がその選手が飛び出さないようにマークすることであれば、相手とアイコンタクトを取って「絶対に行かせないぞ」とプレッシャーをかけることで、相手がひるんで反応が鈍くなるという効果が期待できるんです。実際に相手を押さえ込んだ経験は、これまでにも何度かありますね。

立川:声かけやアイコンタクトで相手と〝かけひき〟をするという点は、どちらの競技にも共通している部分かもしれませんね。

柴田:そうですね。

--忘れられないご自身のプレーや、印象的な試合を教えてください。

柴田:2年ほど前に、手術をして半年ほどレースに出ることのできない時期がありました。そこから復帰したシーズン最終のレースで、五輪選手や日本代表選手で形成された4名の〝逃げ集団※〟に入って優勝争いができたことが、一番印象に残っています。
(※逃げ集団……メイン集団から抜け出し、先行する集団のこと。後ろに続くメイン集団のスピードをコントロールする、逃げ切ってステージ優勝を狙うなどその目的は様々)

立川:私の場合はかなり前の思い出になるのですが、中学2年の頃に出場した、都道府県対抗の全国大会が忘れられません。各都道府県から17名が選抜されて優勝を争うのですが、広島県代表として初めて出場した中学1年の時に、準決勝で栃木県と対戦して負けてしまいました。翌年は決勝まで進出できたのですが、そこで対戦相手になったのが栃木県でした。

柴田:因縁の対決になったわけですね。

立川:そうなんです。しかも2年続けて同じ投手が登板したので、「絶対に勝ってやろう」という気持ちがより強くなりました。決勝戦は延長にもつれこむ展開。私自身はどちらかというと打撃よりも守備が得意なタイプなのですが、最後のバッターになったのが私だったんです。そこでエンドランを決めて日本一になった瞬間は、今でも忘れられないですね。それまで自分のバッティングで試合を決めたことがなかったのですが、決勝打を打った時に周りから掛けられた「ナイスバッティング!」の声は、今でも忘れられません。あの経験が、今もソフトボールを続ける原点になっているのだと思います。

--お互いの競技を観戦したことはありますか?

柴田:実は観に行ったことがないんですよ。『Team WISH』の活動を通して広島にはたくさんのスポーツチームがあると知ったので、色んなスポーツの観戦に行ってみたいなと思います。

立川:私も自転車競技は見たことがないですね……。

柴田:来月(2022年7月9日、10日)広島トヨタ広島ロードレースと広島トヨタ広島クリテリウム※という大会が開催される予定で、広島トヨタ広島ロードレースは三原市にある広島県立中央森林公園が会場なので、ぜひ見に来てください!

立川:そうなんですね! ぜひ行ってみたいです。

※広島トヨタ広島クリテリウムは、7月10日に広島市西区商工センターにて開催。