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広島横断型スポーツ応援プロジェクト「TeamWISH」始動!スポーツの力で広島をもっと笑顔に(後編)

スポーツアクティベーションひろしま(以下、SAH)代表の神田康範です。

スポーツの力で広島をもっと笑顔に(後編)ということで、先週に続き、昨年度の振り返りや今後の展望、そして私自身の経験から実感した“スポーツが持つ力”について、改めてお話したいと思います。

大きな失敗を経て見えたスポーツの偉大な力

改めてですが、私のこれまでの経験を少しお話しさせてください。今でこそスポーツに人生を注ぐ私ですが、実は数年前まで「スポーツは人を元気にする」というSAHの理念でもあるこの考えを、心のどこかで否定し、冷めた感情で見ていました。その思考をひっくり返したのが、私自身の2度の大きなしくじりです。

小さな頃からあらゆるスポーツを経験し、仕事のキャリアも全てスポーツ。しかし、私にとってスポーツは、ただのビジネスでした。

2015年、本田圭佑氏に誘っていただき、ウィーンのサッカーチーム「SVホルン」の経営に携わりましたが、結果は失敗。経営難だったチームを立て直すため、たくさん資金を集め、選手層を厚くし、好成績も収めましたが、予想を反し地元民から嫌われ、追い出されるような形で私は去ることになりました。
 「SVホルン」は100年以上続く歴史あるクラブです。ローカルサポーターたちは、細々とでも“地元の宝”としてしっかり、そして永久的に、チームを育てていきたいと考えていたのに、私は彼らの気持ちを全く汲めていなかったのです。スポーツチームは会社ではなく、公共のものだと、そこで初めて気が付きました。

その後日本に戻り、福岡県のバスケットボールチーム「ライジングゼファー福岡」の社長に就任します。このクラブも当時の経営状況は良好とはいえず、しっかりお金を稼げるシステムを構築し、わずか2年でB3からB1へ昇格させました。

しかし、私が経営に携わったタイミングで複数オーナー制からワンオーナー制に交代。スポンサーからの入金が滞り、B1昇格による支出の見立ても誤り、最終的に2億円という莫大な不足金が発生。私の全財産を売り払いましたが全く追いつかず、選手への報酬未払いも起こしてしまいました。「期日までに不足金を支払えないならBリーグから退会」と勧告され、クラブ自体も消滅の危機。私は謝罪会見を開き、その様子は全国に知られ、Yahooニュースのトップにも掲載されるほど大きく報道されました。
 会見後、誰もが知る首都圏の有名企業が複数、資金提供者として名乗りをあげてくれました。しかし結局うまく話がまとまらず日は刻々と過ぎていきます。デッドライン4日前、急遽スポンサーとして手を挙げてくれたのが、福岡に拠点を置く2つの企業です。最後の最後は、地元が救ってくれました。スポーツで地域を元気にし、パワーを与えていたからこそ救われたのです。

また、ファンからの反応も、私の予想とは真逆でした。実は、資金問題の渦中、経営難を知った選手たちがボイコットした試合があったのです。アリーナには3、000人のお客さんが来ていましたが、選手は出てきません。全ての責任は私にあるので、選手に罪はありません。私は、観客を前に、マイクを持ち「すいません。お金が足りないんです。もう無理かもしれません」と正直に話をしました。罵声や怒号が飛んでくるかと思いきや「全力で支えるから、なんとか俺らの夢を奪わないでくれ」「月曜から金曜日まで頑張って働いて、土日のバスケを見るのが唯一の楽しみだ。失くさないでくれ」と、たくさんの応援の声をいただいたのです。その後、ファンの皆さん自らクラウドファンディングを立ち上げ、街では募金活動がスタートしました。地域、そして地元があってのクラブでした。

「スポーツが持つ力、そしてその影響力は、本当にすごい」

海外と日本、この二つの大失敗を経験し、私はスポーツの力を本気で信じるようになりました。大変なしくじりがあったからこそ、胸を張って言えます。スポーツは人々の希望であり、人生を豊かにすることができる大きな存在なのです。