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食の力で選手をサポート。スポーツ栄養から広がる可能性

日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士 上原寛恵

はじめまして。日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士の上原寛恵(うえはらひろえ)です。
現在私は、管理栄養士として病院に勤務しながら、スポーツ栄養士として、アスリートの方々へ栄養管理や栄養指導を専門に活動しています。

スポーツ栄養士とは、スポーツ選手がコンディションを保ち最大限に力を発揮するために、普段から「いつ」「何を」「どれくらい」食べたらいいか、その個人を見て的確に指導する専門職です。
個人だけでなく、チームやクラブの合宿帯同、栄養指導も行います。団体やチームで動くため、監督やトレーナーを含む全員と連携しながら、チーム全体の目標に向かってアドバイスし、栄養面でサポートします。

今回は、スポーツ愛好家の方をはじめ、アスリートの皆さん、そして部活やクラブを頑張るジュニアの皆さん、またスポーツキッズを支える保護者の方々に、スポーツをするうえでの栄養アドバイスを少しばかりお伝えしたいと思います。

普段の食事もトレーニングの1つ、スポーツと怪我と栄養の関係性

スポーツにおいて良いパフォーマンスをするための絶対的必要事項は、バランスの取れた食事です。日々の食事に気を付けなければ、怪我をするリスクが高くなります。

例えば、成長期であるジュニア選手に多く起こるのが疲労骨折です。彼らに普段の食事を聞いてみると、圧倒的にたんぱく質とエネルギーが足りていません。骨を強くするためにカルシウムは一生懸命摂取しながらも、体重を落としたいがために白米を食べず、更にタンパク質も抜く極端な食生活をしているのです。
その結果、骨折を繰り返し、治らないから試合に出られない、練習できない、最終的にはスポーツを辞めるという悪循環に陥ってしまいます。

また、怪我をした選手に食事内容を聞くと、毎日ファミレスに行って好きなものを食べたり、日々甘い炭酸飲料を飲み続けているなど、アンバランスな食事をとっている傾向が多々あります。

「普段の食事が結果を作る」

世界で活躍するトップアスリートは、食事もトレーニングの一つとして本気で取り組んでいます。強い選手になりたいと思う人ほど、スポーツ栄養学を「知識」として自ら意識し取り組むことが大切です。いくら練習をしても、努力を重ねても、食べるものに気を付けなければ、最後の最後で太刀打ちできなくなってしまいます。

競技パフォーマンスの向上に向け、体をつくる栄養摂取と食生活

(上原さん監修のお弁当)

アスリート皆さんにまず、6つのお皿を揃えることを意識していただきたいです。6皿がテーブルの上に並ぶと、大体の栄養バランスが整います。しかし、毎食6皿を揃えるのは難しいので、お皿の数にこだわらずに考え方を変えてみましょう。

 例えばカレーライスでいうと、1皿に3つのお皿、つまりご飯と主菜と副菜、米、肉、野菜が入ります。あとの3皿は、サラダとフルーツと牛乳として考えます。こうすると、難しいことではありません。

コンビニでもミックスサンドを買えば、パンと卵とハムに野菜、つまり炭水化物、たんぱく質、野菜の3つが揃います。加えて、野菜ジュースとヨーグルトとバナナで献立が完成。そう考えると6つのお皿の定義に関するハードルが下がります。この考え方をどこに行っても使えるようにしておけば、合宿や試合、部活前後など、簡単に良質な食事の揃え方ができます。

スポーツ選手、または彼らを取り巻く人々にありがちな考えが、「とにかくたくさん食べる」という大食い信仰です。しかし単純に摂取カロリーを増やせばいいわけではありません。運動をすると内臓も疲れます。そこに大量の食べ物が入ると、消化しきれず栄養素の吸収もできなくなり、下痢をするか未消化な状態で体から排出され、逆に丈夫な体が作れなくなります。

スポーツをしない人でも、風邪気味、または疲れている時に油っぽい食事は食べにくいでしょう。それと同じく、試合やハードな練習の後、選手たちの体や内蔵は疲弊しています。その状態で、ただ大量に食べさせる行為は、選手たちの疲れを増してしまいます。特にタンパク質を合成し、分解し、解毒をする肝臓が重要です。肝臓に負担をかけてしまうと、精神面でのやる気も落ちてしまうのです。

特に合宿の宿泊先でありがちな間違いが、「アスリートは揚げ物や肉を喜ぶだろう」と焼肉やカツ丼などスタミナ系メニューを組み込むことです。