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スポーツのツボ ~アスリートが推す『観戦を10倍楽しむコツ』~【第15回】中国電力レッドレグリオンズ・エドワード・カーク
プロ野球、Jリーグ、Bリーグをはじめ、多くのトップスポーツチームが活躍する広島県。スポーツの持つ力で県民を盛り上げようと立ち上がったのが、広島横断型スポーツ応援プロジェクト『Team WISH』です。Team WISHは、広島のトップスポーツチーム・アスリートの魅力を発信し、スポーツを通じて広島の皆さんにワクワクを届けるため、日々、競技・チーム・選手の魅力を発信しています。

本連載では「Team WISH」の25チームの選手・関係者がおすすめする、「ココさえ押さえておけば、初めての観戦でも楽しめる!」、そんな観戦ポイントをご紹介します!アスリートの目線で語られる、新たなスポーツの楽しみ方。観戦が10倍楽しくなる『スポーツのツボ』をぜひ覗いてみてください。
連載15回目の今回は、JAPAN RUGBY LEAGUE ONEディビジョン3に参戦するラグビーチーム・中国電力レッドレグリオンズから、エドワード・カーク選手が登場。母国・オーストラリアでは国際リーグ参戦のプロチームに所属し、U-20代表にも選ばれるなど高い能力を発揮してきました。2016年に来日し、2021シーズンから中国電力レッドレグリオンズで活躍するカーク選手と、2025シーズンから選手兼通訳として入団し、カーク選手と共にチームへ新しい風を吹き込んでいる木村勇大(きむら・たけひろ)選手に、チームの現状や『ラグビー観戦を10倍楽しむツボ』を聞きました!
オーストラリア代表、スーパーリーグで培った経験と知見でチームの文化づくりに貢献
―今回はラグビーの魅力を教えていただく企画なのですが、まずはカーク選手が競技を始めた時期ときっかけからお聞かせください。

「15人制ラグビーを始めたのは14〜15歳くらいの時でした。サッカー、バレーボール、水泳、水球、バスケットボール、クリケットなどいろいろなスポーツをしていたので、遅くなりました。初めて試合に出たのが15歳の時です。友達が所属していたチームで助っ人を頼まれて、その時に良いプレーをしたので残るようにと言われました。水泳ではコモンウェルスゲームズというオリンピックのような大会に出たこともあり、プロスイマーの道もありましたが、ラグビーを選びました。」
―遅いスタートながら、すぐに頭角を表されたそうですね。
「18歳の時、まず7人制の代表に選ばれて、その後、国際リーグのスーパーラグビーに参戦していたレッズというチームにプロフェッショナルとして呼ばれました。さらに15人制のU-20に選ばれて、2年間プレーしました。」
― 思い出に残っている試合はありますか?
「レッズのデビュー戦です。スタメン出場していたオーストラリア代表の有名選手が試合開始15分ほどで足を骨折してしまい、僕が出ることになりました。デビュー戦でまさか70分もプレーするとは思わなかったので、思い出に残っています。」
―その後、2016年に来日され、サンウルブス、横浜キヤノンイーグルスを経て、中国電力レッドレグリオンズ(以下、中電)に入られたのはどのようなきっかけですか?

「レッズ、サンウルブス、キヤノンとキャリアを積んできて、また新しい経験をしたいと思っていたところ、エージェントから電話がありました。唯一の外国人選手として、また経験のある選手としての知見などを求めているということでした。中電はまだJAPAN RUGBY LEAGUE ONE(通称・リーグワン)に入ったばかりで、選手も全員日本人選手ということで、自分が助けられることがたくさんあるのではないかと思いサインしました。一般的に、チャンピオンになることにフォーカスし、勝つことを優先する選手が多いですが、僕はそれよりもまずいい関係、いい文化をつくって、いいチームにすることが大事で、結局それが勝利につながっていくと思うので、そういうことをすごく大事にしています。」
―合流してみて、中電の印象はいかがでしたか?

「2020年9月だったので、コロナ禍の真っ只中。家族と離れて一人で知らない土地に来るのは不安もありました。でも同時に新しいチーム、環境ということで、楽しみでもありました。僕たち外国人選手と選手兼通訳兼任のキム(木村選手)はプロ契約ですが、他の選手たちはしっかり仕事もして、夕方からトレーニングや練習をし、さらに小学校を訪ねてラグビークリニックを行うなど地域活動への参加にも熱心で、とても良いことだと思います。」
―プレー面では、どんな特徴や強みがあるチームですか?
「フォワードが見どころかなと思います。ラインアウトという、サッカーで言うスローインのようなプレーや、敵味方が組んで押し合うスクラムはフォワードの選手が担うのですが、そこは昨シーズンも良かった部分です。それ以外も試合を通して良いパッションを持ってプレーしているので、そこを見てほしいです。」

―カーク選手のプレーでは、どんなところを見てほしいですか?
「ハードに走ったり体を当てたり、そういうフィジカルなプレーを見てもらえたらと思います。僕の最初のコーチは『得点することよりも、その過程にあるハードワークの方が輝かしい仕事で、大事』と言っていました。得点やトライなど華やかな部分が注目されがちですが、それまでの各局面での努力や仕事の積み重ねがあってこそなので、そういう部分で働ける人になるべきだと思っています。」
―世界を経験してきたカーク選手が、チームに貢献する泥臭い働きを身上としているのは意外な気がします。選手兼通訳の木村選手から見て、カーク選手はどんな選手ですか?

木村「すごく『チームマン』です。僕もオーストラリアに住んでいたので海外に住む大変さはよく分かっていて、外国人にとっては大変な環境だと思うんですよね。その中で、いい文化をつくろうとしている姿勢は尊敬しています。なので、カーキーが持っている知識や経験、取り組みが正しく伝わるようにすることが僕の役目だと思っていますし、やりがいはすごく感じます。」
―カーク選手、一緒にプレーされる木村選手が通訳を兼任されるのはいかがですか。
「彼はラグビーの知識がすごく豊富で、考え方も素晴らしい。僕たちはチームカルチャーをどうやって良くするか、どうプレーするのが最適なのかといったことについて、フィールド内外でいろいろな意見を交換しています。彼がここにいることは素晴らしいことだと思っています。」
◆常にボールを奪い合い、激しくぶつかり合うバトルの迫力からは目が離せない!
―ラグビーの魅力や面白さを挙げるとすると、どんな点があると思いますか?

「ボールを動かすたびに『常にバトルが発生する』ところが、ラグビーの魅力だと思います。例えば、スクラムもラインアウトもボールの奪い合いですし、ボールを持ったまま相手と当たって倒れる時の選手たちの塊をブレイクダウンというのですが、その中でもボールの奪い合いがあり、キックの蹴り合いで発生するエリアバトルもあり……そういうバトルがたくさんあるので、それが見どころだと思います。」
―広島にもラグビーファンが増えている印象を受けますが、選手としてもそうした実感はありますか?
「僕たちも同じ感覚があります。特にマツダスカイアクティブズとの広島ダービーはすごく盛り上がって、昨シーズンは5,000人以上が来てくれた試合もありました。ただ、その時だけでなく繰り返し来てもらえるようにする必要があると思っています。」
―12月13日の開幕に先駆けて、チームの状況はいかがでしょうか。
「今のところ順調です。ケガ人が多かったのですが徐々に戻ってきていて、チームの状態は昨シーズンと比べても非常に良くなっていると思います。プレシーズンマッチの中でいろいろなことを学んで積み上げて、開幕戦にピークを持ってこられるよう、着実に進んでいると思います。」
―シーズン開幕後のホーム初戦は12月20・21日の予定とのことですが、新シーズンの目標をお聞かせいただけますか。
「チームとしてはトップ2に入ることです。そのためには、目の前にフォーカスすることと、すべての試合で一貫性を持ってプレーすることが大事だと思っています。個人としては、たまに自分にプレッシャーをかけすぎてしまうことがあるので、そうならず、ラグビーを楽しむことにもう少しフォーカスしたいなと思います。」

―では最後に、読者へのメッセージをお願いします。
「試合を見るだけでなく、スタジアムの雰囲気や食べ物など、現地に来ないと味わえないことがたくさんあるので、そういったことを最初から最後まで楽しんでもらいたいです。また、ラグビーはコミュニティなので、来てくれた方同士や選手とのつながりも楽しんでいただければと思います。みなさん、貴重なお休みの時間を使い、チケット代や交通費をかけてスタジアムに足を運んでくださっていることに、すごく感謝しています。だからこそ、プレーではもちろん試合後の交流でも、できるだけ多くのものをみなさんに感じてもらいたいです。一緒に楽しい時間を過ごせればと思っています。」
―試合そのものだけでなく、楽しめるポイントがたくさんあるのですね。より行ってみたくなりました。
「お待ちしています。ぜひ家族や友達と一緒に、みなさんで来てください!」
エドワード・カーク選手が語る!『ラグビーのツボ』
ボールを動かすたび発生するバトルと、ぶつかり合う瞬間の迫力がツボ!

エドワード・カーク
Edward Quirk
1991年8月28日生、オーストラリア・ブリスベン出身。
ポジションはフォワード中堅のフランカー。
15人制ラグビーを始めたのは14〜15歳の頃と遅めながら、18歳で早々にプロデビュー。7人制ラグビー男子オーストラリア代表、U-20ラグビーオーストラリア代表にも選出されるなど一気に才能を開花させた。2016年、25歳で来日し、2021年から中国電力レッドレグリオンズ所属。アグレッシブなプレーが身上で他チームの選手には「オフフィールドで会うと超いいやつだけど、グランドの中で会うとすごく嫌なやつ」と評される。

木村勇大(きむら・たけひろ)
Takehiro Kimura
1992年11月11日生、大阪府出身
選手兼通訳。ポジションはフォワード中堅のロック。
「男子3人に1人はラグビー部だった」という中学時代にラグビーを始め、都島工業高校、近畿大学を経て日野自動車レッドドルフィンズ(現在の日野レッドドルフィンズ)入団。仲の良かった外国人コーチと自分の言葉で話すために英語の勉強を始め、30歳の時、チームの活動休止でモチベーションが下がる中「ここで辞めたら後悔する」と一念発起、エージェントの紹介でオーストラリアへラグビー留学を敢行した。今季から中国電力レッドレグリオンズで選手兼通訳として活動している。
◆チーム情報/中国電力レッドレグリオンズ
1987年創部。陸上競技部、女子卓球部とともに中国電力のシンボルスポーツチームとして活動している。2003年のラグビートップリーグ開幕後は、トップキュウシュウAに所属。2019年には同リーグでの初優勝を果たした。2021年に開幕したJAPAN RUGBY LEAGUE ONEでは、ディビジョン3に所属している。チーム名の「レッド」(赤色)はチームカラー。「レグリオンズ」は、獅子座の中で最も明るい星「REGULUS(レグルス)」と「LION(ライオン)」を組み合わせた造語で、「固い絆でつながることにより、獅子のように強いチームになる」というチームが目指す姿を表現している。