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スポーツのツボ ~アスリートが推す『観戦を10倍楽しむコツ』~【第7回】電動車椅子サッカー・アフィーレ広島PFCの谷本弘蔵(たにもと・こうぞう)選手

プロ野球、Jリーグ、Bリーグをはじめ、多くのトップスポーツチームが活躍する広島県。スポーツの持つ力で県民を盛り上げようと立ち上がったのが、広島横断型スポーツ応援プロジェクト『Team WISH』です。Team WISHは、広島のトップスポーツチーム・アスリートの魅力を発信し、スポーツを通じて広島の皆さんにワクワクを届けるため、日々、競技・チーム・選手の魅力を発信しています。

本連載では「Team WISH」の25チームの選手・関係者がおすすめする、「ココさえ押さえておけば、初めての観戦でも楽しめる!」、そんな観戦ポイントをご紹介します!アスリートの目線で語られる、新たなスポーツの楽しみ方。観戦が10倍楽しくなる『スポーツのツボ』をぜひ覗いてみてください。

連載7回目の今回は、障がい者サッカーチーム、アフィーレ広島。アンプティサッカー(足や腕に切断障がいのある人が行う7人制サッカー)やブランドサッカー(ゴールキーパー以外のプレーヤーは全盲の選手で、アイマスクを装着し、音の出るボールを用いてプレーする5人制サッカー)など複数あるチームの中から、電動車椅子サッカー・アフィーレ広島PFCの谷本弘蔵(たにもと・こうぞう)選手が登場します。電動車椅子サッカー歴も20年超の谷本選手に、『電動車椅子サッカー観戦を10倍楽しむツボ』を聞いてきました!

モビリティ化、EV化を先取りした電動車椅子サッカーは、最先端スポーツ

―まずは、電動車椅子サッカーがどんな競技かを教えてください。

「電動車椅子は、障がいがあり生活に不自由さがある人が、日常の移動を助けてもらうために使うものです。その電動車椅子を使ったスポーツの1つが、電動車椅子サッカーです。国際的には『パワーチェアーフットボール』と呼ばれます。足元にフットガードと呼ばれる覆いをつけ、そこでボールを蹴って競技をします。」

―日常生活で使用する車椅子と、競技用は同じものですか?

「同じものを使う人も、分けている人もいます。最近はアメリカ製の『ストライクフォース』という競技専門の車椅子ができて、それに乗る人が増えていますね。運動性能やモーターの強さが違うらしいのですが、実は……私も詳しいことは、まだよくわかっていません(笑)。」

―どんなきっかけで競技を始めたのですか?

「18歳の時に第四頸椎を損傷し、首から下を動かせなくなったことがきっかけです。もともとレスリングの選手だったのですが、練習中にケガをしてしまって……。電動車椅子サッカーのことは、病院で知り合った、僕と同じ障がいを持つ子のお父さんから聞いて知りました。すぐ見学に行きましたが、競技を始めたのは約1年後。車椅子の準備や、操作に慣れるのに時間がかかったからです。ケガをしてからはベッドかストレッチャーの上にしかいなかったので、電動車椅子に乗り始めた頃は魔法のようだと思ったのを覚えています。ゲーム感覚で操作していました。」

電動車椅子サッカーの魅力は、どんなところですか?

「一番は、電動車椅子という、本来は歩いて移動ができない人のための道具を使ってスポーツ競技ができるということ。電動車椅子に乗っていれば、年齢も性別も、障がいの有無も関係なく平等なんです。誰もが同じ条件でスポーツをして、競うことができるのが魅力的だと思いますね。進行性の病気がある人や、呼吸器をつけたままプレーする人などいろんな選手がいますが、みんな、サッカープレーヤーである自分に誇りを持っています。」

―谷本選手ご自身にとっても、大切な存在なのではないですか。

「競技を始めたおかげで、県外への遠征などたくさんの新しい経験をして、世界が広がりました。一人暮らしもしましたし。障がいを負った原因もスポーツですが、スポーツに導かれ、 助けられて今の人生も職もあると思っています。」

―競技を通して新しい人生を切り拓いてこられたのですね。私たちが観戦する際の注目ポイントは、どんなところでしょうか。

「まずは、ボールの強さや速さ、障がいがありながらも電動車椅子を操って機敏な動きができること。そして、仲間同士で励ましあいながら声を出して頑張っている様子などは、魅力的なのではないかと思います。」

―強いボールを蹴るコツはありますか?

「フットガードの前面で押すように蹴ると強いボールにはならないので、車椅子を回転させてフットガードの側面で蹴るスピンキックをよく使います。慣れないと目が回るし、気分が悪くなったりもするのですが、慣れてきたり、集中していれば大丈夫です。」

―そんなダイナミックなプレーも、見どころですね。

「スピードと、その精度も見てもらえたらと思います。上手な人は、ボール1個分くらいのところをピンポイントで狙ったりするので、驚かれると思いますよ。最近はモビリティ化、EV化が進んでいますが、電動車椅子サッカーは、その先駆け的なスポーツ競技と言っていいのではないでしょうか。」

月に1回の練習は見学自由。ぜひ電動車椅子サッカーを間近で見に来てください

―谷本選手の「ここを見てほしい!」というポイントはありますか?

「身体は重いんですが、回転キックはキレがあると思います。あとは、チーム内でも主要なポジションなので、大きな声でみんなを統制したり指揮したりしながらプレーするアグレッシブさが、自分の良いところではないかと思っています。」

―アフィーレ広島は、どんなチームですか?

「一言で言うと、『自由なチーム』ですね。電動車椅子以外にも、アンプティやブラインドなど多種多様なサッカーチームがあるので、全体的にすごく自由かつ柔軟な、いろいろな視点を持ったチームだと思います。」

―普段はどのような活動をしていますか?

「月に1回、主に佐伯区スポーツセンターで練習をしています。電動車椅子サッカーのチームに所属する選手は6名で、広島だけでなく山口や岡山の人もいます。練習以外では、先日あったインクルーシブフットボールフェスタなどのイベントにも、積極的に出るようにしています。」

―普段はどのような活動をしていますか?

「月に1回、主に佐伯区スポーツセンターで練習をしています。電動車椅子サッカーのチームに所属する選手は6名で、広島だけでなく山口や岡山の人もいます。練習以外では、先日あったインクルーシブフットボールフェスタなどのイベントにも、積極的に出るようにしています。」

―大会はありますか?

「全国規模の主要大会は、11月頃の日本選手権のみです。2023年の鹿児島国体はプレ大会として車椅子サッカー競技も開催され、私も広島県代表として出場して3位になりました。ただ、まだ本競技として定着してはいないので、毎年必ずあるわけではないんです。」

―広島でプレーを見る機会はあるでしょうか。

「公式戦はないのですが、練習や練習試合は見学していただけます。日程は私個人のSNSでも告知しているので、ぜひチェックしてみてください。」

―迫力を体感してみたいです。今後のチームとご自身の目標を教えてください。

「まずは全国大会で1勝。あとは選手を増やして、普及を図ることも目標としています。個人的には、日本代表になってみたいという思いもあります。」

―最後に、読者の皆さんへのメッセージをお願いします。

「まずは、『電動車椅子サッカーを知っていただいてありがとうございます!』と感謝を申し上げたいです。そして、障がいがあってもスポーツができて、人生を輝かせることができるということを、電動車椅子サッカーだけでなく障がい者スポーツ全般で感じてもらえたら幸いです。ぜひ目の前で見て、人間の可能性の素晴らしさを感じてほしいです。」

谷本弘蔵選手が語る!『電動車椅子サッカーのツボ』
電動車椅子の機敏な動きと、回転キックから繰り出されるボールの強さや速さ、精度がツボ!

谷本弘蔵(たにもと・こうぞう)
Kozo Tanimoto

1985年5月9日生まれ、広島出身。小4からレスリングを始め、高校時代は宮城国体と高知国体で3位入賞するなど活躍したが、2003年に練習中に第四頚椎損傷の大怪我を負う。首から下にまひがあるため、顎でコントローラーを操作して電動車椅子を操る。受傷から約1年後の2004年に電動車椅子サッカー競技を始め、2017年のチーム立ち上げからアフィーレ広島PFC所属。平日はIT企業の社員として在宅で業務をし、週末は練習やイベント参加、広報活動などを通してチームと競技のPRに努める。

◆チーム情報/アフィーレ広島

2013年に、中四国初のアンプティサッカーチームを設立。現在は四肢の切断、麻痺を持つ選手が杖を使用して行う『アンプティサッカー』、視覚に障がいのある選手が目隠しをして行う『ブラインドサッカー』、電子車椅子を用いた『電子車椅子サッカー』、歩くことをルールとしてプレーする『ウォーキングフットボール』、フレーム(歩行器)を用いてプレーする『フレームフットボール』、精神障がいを持つ選手によって構成される『ソーシャルフットボール』の6種目のチームを持つ、日本初のインクルーシブフットボールクラブとして活動している。