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スポーツのツボ ~アスリートが推す『観戦を10倍楽しむコツ』~【第3回】バレーボールSVリーグ・広島サンダーズ・西知恕(にし・ちひろ)
プロ野球、Jリーグ、Bリーグをはじめ、多くのトップスポーツチームが活躍する広島県。スポーツの持つ力で県民を盛り上げようと立ち上がったのが、広島横断型スポーツ応援プロジェクト『Team WISH』です。Team WISHは、広島のトップスポーツチーム・アスリートの魅力を発信し、スポーツを通じて広島の皆さんにワクワクを届けるため、日々、競技・チーム・選手の魅力を発信しています。
本連載では「Team WISH」の25チームの選手・関係者がおすすめする、「ココさえ押さえておけば、初めての観戦でも楽しめる!」、そんな観戦ポイントをご紹介します!アスリートの目線で語られる、新たなスポーツの楽しみ方。観戦が10倍楽しくなる『スポーツのツボ』をぜひ覗いてみてください。

連載3回目の今回は、バレーボールSVリーグ・広島サンダーズから、西知恕(にし・ちひろ)選手が登場します。ポジションはミドルブロッカー。名前の通り前衛の中央で相手の攻撃をブロックし、守備の要として活躍しますが、速攻など攻撃面でも重要な役割を果たすポジションです。チーム在籍6年目の西選手に、『バレーボール観戦を10倍楽しむツボ』を聞いてきました!
他のどこよりスポーツに対して熱い広島は、「頑張ろう」と思える理想の環境
―この連載ではアスリートのみなさんに、選手ならではの視点で競技の観戦ポイントや楽しみ方をお伺いしています。今日は、西選手の思う『バレーボールを楽しむツボ』をお伺いできればと思います。よろしくお願いします。
「はい、よろしくお願いします!」
―まず初めに、西選手がバレーボールを始めたきっかけから教えてください。
「父と兄2人がバレーボールをしていたので、その影響が大きかったですね。僕がバレーを始めたのは中学1年の頃なので、周りと比べると遅い方だと思います。両親の『やるなら本格的な指導者がいるところで』という考えで、学区外の中学へ進み、そこで本格的にバレーをするようになりました。」
―高校では大分県の進学校、別府鶴見丘高校へ進まれました。
「実業系や工業系の高校からも声を掛けていただいていたのですが、両親が『将来を考えたら、大学に行って就職する道も大事』と考えてくれていました。自宅がある大分市から別府は少し遠かったのですが、バレーボールもできる進学校ということで別府鶴見丘高校を選びました。」

―常に先を見越して導いてくださるご家族だったのですね。
「そうですね。実は僕自身も、高校3年生になるまでは大学に進学して、ゆくゆくは就職して……というつもりでいました。ただ、ありがたいことに日本体育大学からお声掛けいただいて、迷った末に『バレーボールに賭けてみよう』と決めました。父も祖父も日体大の卒業生でしたし、両親が教員なので、当時は『バレーをしながら免許を取って、教員になる道もある』という話もしていました。」
―プロとして、バレーで生きていこうと決意したのはいつですか?
「大学に入ったばかりの頃は、周りのレベルも高かったので『卒業後もバレーボールで行こう』という気持ちにはなりませんでした。ただ、進路について真剣に考え始めた頃に広島サンダーズ(当時のチーム名はJTサンダーズ広島。以下、サンダーズ)から声を掛けてもらったのをきっかけに、『バレーを続けられるなら頑張ろう』という気持ちになりました。僕はずっと、サンダーズでプレーしていた八子大輔さん(やこ・だいすけ:2011〜2021年所属、2021年5月に現役引退)が大好きだったんです。八子さんや、同級生で仲の良い金子聖輝選手(かねこ・まさき)が所属していたこともあって、サンダーズにお世話になることを決めました。」
―実際に広島へ来てみて、どうでしたか?
「広島は、他のどこよりスポーツに対してすごく熱いなという印象がありました。実際、サンダーズを知ってくださっている方もたくさんいますし、そうした環境は選手としてもやりやすいですし、『よし、頑張ろう!』という気持ちになります。」

―西選手から見たバレーボールの魅力はどんなところですか。
「試合中はみなさんプレーしている選手に注目しがちだと思いますが、例えばリザーブ(控え)の選手がいつでも出られるよう準備する姿や仲間を鼓舞する姿、得点を全員で喜ぶ様子などは、バレーに限らずチームスポーツならではの面白さではないかと思います。特にサンダーズは全員が同じ方向を向いているところや、全員で戦う姿勢が他のチームにも負けていないと思うので、そこも見てもらえるとうれしいですね。」
◆100%を出して貪欲にボールへ食らいつく姿、粘り強く戦う姿に注目を!
―では、プレー面での観戦ポイントはありますか?
「今チームは、2024-25シーズンに着任したハビエル・ウェベル監督のもと、『常に100%で、継続力を持ってやる』を掲げてプレーしています。一見、手が届かないような難しいボールにも貪欲に食らいついていくなど、100%の力を出しているプレーを監督は『美しいバレー』と呼ぶのですが、そういう一生懸命な姿を見て、観戦しているみなさんにも面白いな、カッコ良いなと思ってもらえたらうれしいです。」

―2024-25シーズンは、終盤ギリギリのところでプレーオフの切符をもぎ取りました。最後まで諦めず100%で戦った結果だったのでしょうか。
「そうですね。ただ、最後はチームにケガ人も出て、本来とは違うポジションでプレーせざるを得ない選手もいるという状況でした。そんななかでも最年長のオレオル選手がポジティブな雰囲気をつくってくれて、『やるしかない、できることをやるだけだ!』という気持ちがみんなに伝染した結果、チャンピオンシップ進出を果たすことができたのだと思います。」
―今シーズンは4月で閉幕しましたが、オフはどのように過ごされる予定ですか。
「2日に1回はトレーニングをしています。シーズン中は筋肉痛が起こったり疲労が残ったりすると試合に影響するので、思い切りレーニングをすることが難しいんです。その分、オフシーズンに体づくりなど、今しかできないことに取り組んでいます。シーズン中は毎日午後から猫田記念体育館で練習していて、日曜日等、休館日以外はどなたでも見学できます。オフシーズン中はいろいろなイベントも企画しているので、ぜひ足を運んでいただけるとうれしいです。」
―試合がなくても選手に会える機会がたくさんあるのですね。では、10月からの来季に向けて、課題や目標はありますか?
「今季はブロックディフェンスというコンセプトを貫き通せたので、そこは来シーズンにもつながる部分だと思います。ただ勝ちがなかなかついて来ず、目標としていたプレーオフ進出はできたものの、そこまででした。あの場面で勝つには、勝負どころで決める1点が必要だと痛感するシーズンになったと思います。来季はプレーオフに進出するだけでなく、勝って上に行ける、優勝を狙えるだけの力をつけて、レギュラーシーズンから通して戦っていきたいです。」
―試合で西選手のここを見てほしい!というアピールポイントを教えてください。
「僕は身長が192cmなのですが、190cm後半や200cmの選手が多いミドルブロッカーのなかでは小柄な方です。ただ、その分スピードを活かした攻撃やブロックが僕の持ち味だと思っているので、そういう機動力やすばしっこさ、軽やかな動きを見てほしいですね。」

ーでは、広島サンダーズというチームの注目ポイントは、どんなところですか?
「戦術的な面では『ブロックディフェンス』に注目してもらいたいです。試合中は攻撃に目が行きがちですが、僕たちサンダーズはシステム(戦術的構造)にもこだわっています。例えば『相手のサーブレシーブが崩れたら、ブロックはこう入ってディフェンスはこう動く』……と、細かいシステムが何十通りもあるんです。初めて見るときには難しさを感じるかもしれませんが、そうした粘り強さも見てもらえればと思います。」
―ファンの方や、これからバレーを見てみたいという方に向けてメッセージをお願いします。
「バレーをまだ観戦したことのない方は、まずは『推しの選手』を見つけると、観戦を楽しむことができるんじゃないかなと思います。サンダーズは個性の強いメンバーが多いので、プレースタイルはもちろん、それぞれの人柄や、SNSの面白さとか……好きになれるところを見つけたら、そこからどんどん興味や面白さの幅が広がっていくのではないでしょうか。サンダーズは最近グッズも増やしていて、各選手の名前入りタオルも販売されています。それを掲げてくれたら僕たちも目につきますし、『頑張ろう』というパワーにもなります。試合日は最後に客席に向かってサインボールを投げる機会もあるのですが、自分のタオルを掲げてくれているとそこをめがけて投げることもできるので(笑)。まずは『推し』を見つけに、ぜひ会場に来てくださるとうれしいなと思います。」
―お話を伺って、来シーズンの開幕がますます待ち遠しくなりました。ありがとうございました。
「ありがとうございました。これからも応援よろしくお願いします!」
西知恕選手が語る!『バレーボールのツボ』
チームプレーならではの、リザーブ選手も含め全員で戦う姿勢がツボ!

西知恕(にし・ちひろ)
Chihiro Nishi
1997年11月8日生、大分市出身。
身長192cm、最高到達点は348cm。ポジションはミドルブロッカー。競技を始めたのは中学入学後とスロースタートながら、すぐに持ち前のセンスと才能を発揮し、別府鶴見丘高校、日本体育大学を経て2020年にJTサンダーズ広島(現・広島サンダーズ)入団。現在6年目。
◆チーム情報/広島サンダーズ
1931年頃、日本たばこ産業(JT)の実業団チームとして創部。第1回日本リーグからV.LEAGUEまで、1度も2部降格を経験していない唯一のチームとして日本バレーボール界をけん引している。V・プレミアリーグで優勝1回、V.LEAGUEでは準優勝1回。黒鷲旗では優勝4回、準優勝6回の実績を持つ。2024-25シーズンはチーム名を「JTサンダーズ広島」から「広島サンダーズ」に変更し、新設されたトップリーグ・大同生命SV.LEAGUEに参戦。18勝26敗、6位でチャンピオンシップに進出し、準々決勝で敗れシーズンを終えた。