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スポーツのツボ ~アスリートが推す『観戦を10倍楽しむコツ』~【第2回】男子プロバスケットボールBリーグ・広島ドラゴンフライズ・朝山正悟ヘッドコーチ
プロ野球、Jリーグ、Bリーグをはじめ、多くのトップスポーツチームが活躍する広島県。スポーツの持つ力で県民を盛り上げようと立ち上がったのが、広島横断型スポーツ応援プロジェクト『Team WISH』です。Team WISHは、広島のトップスポーツチーム・アスリートの魅力を発信し、スポーツを通じて広島の皆さんにワクワクを届けるため、日々、競技・チーム・選手の魅力を発信しています。
本連載では「Team WISH」の25チームの選手・関係者がおすすめする、「ココさえ押さえておけば、初めての観戦でも楽しめる!」、そんな観戦ポイントをご紹介します!アスリートの目線で語られる、新たなスポーツの楽しみ方。観戦が10倍楽しくなる『スポーツのツボ』をぜひ覗いてみてください。

連載2回目の今回は、男子プロバスケットボールBリーグ・広島ドラゴンフライズから、朝山正悟(あさやま・しょうご)ヘッドコーチが登場。2023-24シーズンはチーム史上初のBリーグ優勝を遂げた広島ドラゴンフライズ。チャンピオンとして臨んだ2024-25シーズン、チームを率いた朝山HCに、『バスケットボール観戦を10倍楽しむツボ』を聞きました!
期待に応えられず悔しさが残ったシーズン。若手の成長、東アジアタイトル獲得など収穫も
―5月4日の試合をもって、今季は閉幕しました。どんなシーズンでしたか?
「アップダウンの激しいシーズンでしたね。EASL(東アジアスーパーリーグ)で優勝できたことは大きな経験になりましたし、クラブの歴史にまた一つタイトルを積み上げられたのは本当に嬉しいことですが、レギュラーシーズンでは応援してくださる皆さんの期待になかなか応えられず、悔しさの残るシーズンでした。」
―そんな中でも、若手の成長は目覚ましいものがあった気がします。

「いやもう本当に、そこは間違いありません。登録選手は12人しかいないので、一人ひとりが占める割合が大きいんです。外国籍の選手含め、怪我人が続いた点では苦しめられたシーズンではあったんですが、そのおかげでこれまで出場機会が少なかった渡部琉、ロバーツケイン、三谷桂司朗らがプレータイムを得ました。そこで周囲に認めてもらえるプレーをできたのは本人たちの努力が実った結果だし、サポートしたスタッフたちの功績でもあります。彼らの成長があったからこそ、EASL優勝にもつながったし、負けはしましたけど僕はベストゲームだったと思っている天皇杯のアルバルク東京戦の戦いがあったと思っています。」
―試合内容は悪くないのに勝ちを逃すことも多く、悔しさの中で自分たちを磨いてきたのかなと想像しているのですが。
「そう思います。プロは『勝ってなんぼ』の世界で、勝つことが最優先事項。どれだけいい活躍をしても、結果がついてこなければ意味がありません。そんな時も前を向いて、何度でも立ち上がっていく姿は、彼らの今後のキャリアにもつながるはずですし、チームの色をしっかりと出せた部分かなと。」
―ヘッドコーチとしては初シーズンでしたが、いかがでしたか。

「非常に充実していましたね。ルーキーの気持ちで臨んだシーズンだったので、日々勉強。毎日が新鮮で、すごくやりがいを感じながらやらせてもらいました。苦しいことや失敗したことも含めて、この経験があったからこそ次につながっていくと思っています。これはプレイヤーと同じだと思うんですよね。もちろん役職も役割も変わっていろんなことを感じるシーズンではあったんですが、バスケットに対する情熱は変わりませんし、人としてまた1つ成長できた1年だったと言えるようにできればいいなと。」
―この1年でご自身が成長、変化を実感することは何かありましたか?
「より我慢強くなったかもしれないですね。常にポジティブに、どんな時も前を向いて立ち向かっていくというスタイルは選手時代から変わらないのですが、人に伝える方法や角度などはこれまでと違うので、言いたいことがあっても『このタイミングではどうなのかな』と我慢するとか、自分の中で制御しなければいけないことがいろいろありました。」
◆誰もが経験したことのある身近な競技だからこそ、プロのすごさをわかりやすく体感できる

―小学校5年生にバスケットボールを始め、選手として約30年プレーされてきたわけですが、朝山ヘッドコーチから見たバスケの魅力など、観戦を10倍楽しめるツボはどんなところですか?
「まずはスピード感。これほど目まぐるしく展開が変わって、点を取ったり取られたりするスポーツはなかなかありません。同時に、ゲームの終盤で1本のフリースロー、1本のスリーポイントシュートが勝敗を左右するなど、1球の重みがあるのもバスケットボールの素晴らしさだと思います。もう一つは、コートと客席の距離感ですね。選手やボールが飛び込んでくることもあるほどの近さも魅力かなと思います。帽子やヘルメットがなく、ユニフォームも短パンにノースリーブなので、選手たちの顔や肉体が見えやすいのも1つのポイントかもしれません。」
―これからBリーグを初めて見る方に、ここに注目したら面白いというポイントを教えてください。
「バスケットボールって、誰もが経験したことのある身近な競技ですよね。だからこそ、体育の授業ではなかなか入らなかったシュートをいとも簡単に決めるとか、高くジャンプしてダンクシュートをするとか、プロのすごさが体感できて面白いと思うんですよ。あと、会場の雰囲気も楽しんでほしいですね。音楽が鳴り響き、暗転したり照明を使った演出があったり……テーマパークのようなエンターテイメント性を感じてもらえると思います。」

―現役時代にここを見てほしいと思っていたなど、選手目線での見どころポイントはありますか?
「僕自身としては3ポイントシュートを得意としていたので、そこですかね。アウトサイドの遠いところからシュートを打つんですが、ボールを放ってからゴールネットまでの、誰のものでもない宙に浮いているボールをみんなが息を飲んで見つめる、あの時間と空間を味わってほしいです。1秒あるかないかですけど、ネットを通るのか落ちるのか、みんなが一点に集中した静寂からドッと湧くあの瞬間は、すごく僕は好きな時間でしたね。」
―Bリーグチャンピオンとして臨んだ今季、新しいファンもたくさん来場したと思います。この人気を来シーズン以降も継続するためには何が必要でしょうか。
「もっとバスケットボールが日常に入り込んでいくことが必要だと思います。ドラゴンフライズの試合を見たから1週間また頑張ろうとか、週末はホームで試合があるから今週も頑張れるとか、そう思ってもらえることが、本当の意味で皆さんの生活に入っていくということ。そう思えるようなプレーこそ自分たちがゲームで見せなければいけない部分だと思いますし、応援してもらうためにはオフコートでも色々な活動をして、選手たちやクラブの背景を知ってもらう活動も必要だと思っています。」
―2024-25シーズンが終わったばかりですが、秋からの次シーズンに向けてプランや抱負などあればお聞かせください。
「今季はアップダウンの激しい状況が続きましたが、どんな時も熱い、温かい声援を送り続けていただいて、何度でも立ち上がり戦える大きな原動力になりました。チームの編成や来季のプランについて詳細はこれからですが、試合は基本、土日で行うので2日間をどう戦うかも加味しつつ、攻守のバランスを考えながら来シーズンもやっていけたらと考えています。たくさんの勝利を皆さんと共有できるよう精進します。引き続き応援よろしくお願いします。」
朝山正悟ヘッドコーチが語る!『バスケットボールのツボ』
目まぐるしく展開が変わるスピード感とコートの近さ、そして、3ポイントシュートが放たれた時の緊迫感と、決まった時の歓喜の瞬間がツボ!

朝山正悟(あさやま・しょうご)
Shogo Asayama
1981年6月1日生、神奈川県横浜市出身。
小学5年生からバスケットボールを始め、2015年から10シーズンにわたり広島ドラゴンフライズで活躍。「ミスタードラゴンフライズ」と呼ばれ、クラブと広島に対する愛と情熱は誰にも負けないと公言する熱血漢。2023-2024シーズンをもって引退し、翌2024-2025シーズンからヘッドコーチに就任した。選手時代につけた背番号2は、チーム初の永久欠番となった。
◆チーム情報/広島ドラゴンフライズ
広島初のプロバスケットボールクラブとして誕生。初代ヘッドコーチに佐古賢一氏を迎え、2014年にNBLへ参入した。2016-17シーズンからは新たに開幕したB.LEAGUEに参戦。2023-24シーズンはワイルドカードからチャンピオンシップに進出し、クラブ初となる優勝を果たした。2024-25シーズンは28勝32敗で西地区5位となり、3シーズン連続でのCS出場は逃したものの、東アジアスーパーリーグでは強豪チームを撃破して東アジアNO.1の称号を得た。2026-27シーズンからは、新たに開幕するB .PREMIERへ参入し、広島グリーンアリーナへと本拠地を移すことが決まっている。