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スポーツのツボ ~アスリートが推す『観戦を10倍楽しむコツ』~【第1回】ダイソー女子駅伝部・山際夏芽

プロ野球、Jリーグ、Bリーグをはじめ、多くのトップスポーツチームが活躍する広島県。スポーツの持つ力で県民を盛り上げようと立ち上がったのが、広島横断型スポーツ応援プロジェクト『Team WISH』です。Team WISHは、広島のトップスポーツチーム・アスリートの魅力を発信し、スポーツを通じて広島の皆さんに「ワクワク」をお届けします。

本連載では「Team WISH」の25チームの選手・関係者がおすすめする、「ココさえ押さえておけば、初めての観戦でも楽しめる!」、そんな観戦ポイントをご紹介します!アスリートの目線で語られる、新たなスポーツの楽しみ方。観戦が10倍楽しくなる『スポーツのツボ』をぜひ覗いてみてください。

連載1回目の今回は、東広島を拠点に活動する女子駅伝チーム・ダイソー女子駅伝部から、山際夏芽(やまぎわ・なつめ)選手が登場。チームの本拠地・東広島出身であり、2020年の全国高校駅伝では広島県の男女優勝に大きく貢献しました。2025年からダイソー女子駅伝部に加入し、ふるさとでの陸上生活をスタートさせた山際選手に、『駅伝観戦を10倍楽しむツボ』を聞きました!

チーム全員で試練を乗り越え、掲げた目標を追いかける。それがいつしかモチベーションに

−この連載では、アスリートのみなさんに「これさえ押さえておけば、観戦がもっと楽しめる!」をテーマに、『スポーツのツボ』をお伺いしていきます。今日は、山際選手の『駅伝のツボ』をお伺いできればと思います。よろしくお願いします。

「はい、よろしくお願いします。」

−まず初めに、山際選手が駅伝を始めたきっかけから教えてください。

「もともと走るのが好きで、小学校の持久走でも1位を取らないと泣いてしまうくらいの負けず嫌いでもありました。そんな私を見ていた母が、『陸上をやってみたら?』と言ってくれて、それで地元の東広島にある陸上クラブに入りました。」

−陸上競技には短距離や長距離、トラックと様々な種目がありますが、もともと駅伝が専門だったのですか?

「いえ、最初は短距離でした。むしろ長距離はあまり好きではなくて……。」

−そうだったのですか?

「はい(笑)。本格的に『長距離に向いているかも』と思うようになったのは、ロードレースの大会がきっかけでした。当時、どうしても犬が飼いたくて母にお願いをしたら、『大会で1位になったら飼っても良いよ』と言われました。それで、とにかく犬のために毎日毎日走っていたら、どんどん成績が上がっていって。」

−なるほど(笑)。

「そこで、『もしかして長距離に向いているのかも』と思うようになりました。ロードレース大会では結局2位に終わってしまって、犬は飼ってもらえなかったのですが……(笑)。」

−そんなきっかけがあったのですね。そこから学生時代、実業団とキャリアを積んできましたが、山際選手が思う駅伝の魅力とは何でしょうか。

「私が本格的に陸上を始めたのは中学生の頃です。当時は、全国中学駅伝大会という大会に出場するのが大きな目標でした。そのためにチーム全員で1年間かけて、夏場のつらい練習も乗り越えて準備を進めていたのですが、そうしてチーム一丸となって目標に向かって頑張ることが、自分にとっては一番のモチベーションになると感じました。苦しいこともたくさんありますが、チームでそれを乗り越えて良い結果を残すことができると、みんなで喜びを分かち合うことができます。そんなところも、駅伝という団体競技の面白さの一つだと感じています。」

−仲間と一緒に達成感を味わえるのが、魅力の一つということですね。

「そうですね。あとは純粋に『走るのが好き』というのも、今日まで駅伝を続けてきた大きな要因だと思います。練習や大会中も、走っている間はずっと楽しいかと言われると実は全然そんなことはないです。もちろん苦しい時期もあるのですが、それを乗り越えて結果が出た時はすごくうれしいですし、そのうれしさを味わうと、『やっぱり陸上って楽しいな。すごく好きだな』と思います。お正月に実家に帰省した時も元日の早朝から走りに行ったりするのですが、そんな時は、『お正月から走るなんて、自分はやっぱり走るのが好きなんだな』と改めて感じますね(笑)。」

◆駅伝観戦を10倍楽しむツボ:つないできた襷に思いを込めて仲間に託す駅伝ならではのドラマ

−私たちがテレビや沿道で駅伝を観戦するとき、どんなポイントに注目するとより競技を楽しめるのでしょうか。

「駅伝ならではという点では、襷渡しの瞬間に注目すると良いかもしれません。そこまでの区間を全力で走ってきて、最後の襷を渡す瞬間は全てを出し切った、すごくしんどい状態です。そんななかで、次の選手に『頑張って!』と声をかけて背中を押す瞬間の『仲間に託す』瞬間は、すごく良いなと思っています。」

−確かに、襷という一つのものをつないでいくのは、駅伝ならではのストーリーを感じる瞬間ですね。

「大学時代、全日本大学女子選抜駅伝(通称:富士山駅伝)でアンカーを務めたことがあるのですが、1区の選手からずっとつながれてきた襷は、みんなの汗が染み込んでいるんです。みんなの思いも込められた襷の重みを感じると、いつも以上の力を出すことができる気がします。駅伝はチームのために『自分が持っている以上の力を出すことができる』のも、魅力の一つなのだと思います。」

−ちなみに、選手のみなさんは襷を渡す練習をされたりするのですか?

「学生時代は新入部員が大会前日に練習をすることもありましたが、特にそれだけを練習するということはありませんね。ただ、私が所属していた順天堂大は、襷の渡し方が独特です。よくあるのは走りながら襷を外して、両手でつかんで地面と並行に差し出すという渡し方ですが……。」

−順天堂大は違うのですか?

「はい。代々、襷を片手でつかんで差し出すのが順天堂大の特徴です。大学に入ったばかりの頃は、先輩に教えてもらって襷の渡し方の練習をしていました。」

−独特の襷渡しが生まれた理由があるのでしょうか。

「走る時は、両腕を縦に振りながら走りますよね。片手で襷を渡せば、リズムに乗ったまま渡すことができるので、動きや時間のロスを減らすことができると聞いたことがあります。」

−確かに、両手でつかみ直して差し出すよりもスムーズな動きになりそうですね。山際選手は順天堂大を卒業後、ダイソーに入社されました。学生時代の駅伝と実業団での駅伝では、違いを感じることはありますか。

「実業団では学生時代に競っていたライバル選手と一緒のチームになることもありますし、逆に、ずっと一緒に走ってきた仲間と別々のチームになることもあります。ダイソーにも高校時代に別の高校で競い合っていた選手がいますが、そんな選手たちと一緒に走ることができているのも、実業団ならではの面白さかなと感じます。それから、ダイソーの社員のみなさんから『駅伝見るからね』や『頑張って』と声をかけてもらうこともあります。そうした社員のみなさんからの応援を受けると、よし、頑張ろう!という気持ちになれますね。」

−では最後に、「駅伝を観戦してみようかな」と感じる読者のみなさんに、メッセージをお願いします。

「ダイソーは2022年に全日本実業団対抗女子駅伝競走大会(通称:クイーンズ駅伝。宮城県の松島をスタート地点とし、仙台をゴール地点とする42.195kmのコースで開催)に出場しましたが、2023年、2024年は予選会(通称:プリンセス駅伝)で敗退しています。2025年は必ずクイーンズ駅伝に出場して、ダイソーの名前を背負って仙台で走りたいと思っています。予選会は福岡、クイーンズ駅伝は宮城で開催されますが、テレビでの中継もありますので、ぜひ駅伝のおもしろさを感じていただければと思います。そして、ダイソーの応援もよろしくお願いします!」

−今年のプリンセス駅伝、クイーンズ駅伝も楽しみにしています。本日は、ありがとうございました。

「ありがとうございました。」

山際夏芽選手が語る!『駅伝のツボ』

1区からつないできた仲間の思いが染み込んだ、『襷』を渡す瞬間がツボ!

2002年7月24日生、広島県東広島市出身。小学生から陸上を始め、世羅高校時代の2020年に出場した全国高校駅伝では1区を4位の好成績で駆け抜け、広島県代表の男女優勝に貢献した。順天堂大では度重なるケガに泣かされたものの、4年生時に全日本大学女子選抜駅伝競走(通称:富士山駅伝)でアンカーを務め、区間4位の成績でチームを19年ぶりの5位入賞へと導いた。

◆チーム情報/ダイソー女子駅伝部

2019年4月創部。初代監督に世羅高校陸上部を男女合わせて6度優勝に導いた岩本真弥氏を招聘し、東広島市を拠点として主に中・長距離選手の育成を行っている。3年目の2021年には実業団女子日本一決定戦とされるクイーンズ駅伝(全日本実業団対抗女子駅伝競走大会)に初出場を果たし、2022年も連続出場。一気に全国区で存在感を示したが、2023・2024年は、その出場権をかけたプリンセス駅伝で2年連続17位。出場枠16位に一歩及ばず涙を飲んだ。まずはクイーンズ駅伝の常連となり、さらにその先の頂点を目指し、日々トレーニングを積み重ねている。