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My Turning Point~広島アスリートが語る転機の物語~
【第23回】はつかいちサンブレイズ・國場紗智
新たなスポーツの楽しみ方を提供する、広島横断型スポーツ応援プロジェクト、通称『Team WISH』。プロ野球やJリーグをはじめ、数多くのトップスポーツチームを有する広島県ならではの取り組みとして、日々、各チーム・選手の魅力を発信しています。
本連載では、Team WISHに参加する全25チームの選手・関係者に、「自身にとっての『ターニングポイント』とは」をインタビュー。
競技や人との出会い、試合やできごと、忘れられない「あの日」、誰かの言葉……競技人生に影響を与えた転機をめぐる物語から、選手の新たな一面にフォーカスしていきます。

連載第23回目は、廿日市市を拠点に活動する女子野球チーム、はつかいちサンブレイズの新キャプテン・國場紗智(くにば さち)選手が登場。履正社高校女子野球部の第1期生であり、はつかいちサンブレイズで今シーズンからキャプテンを務める國場選手が、硬式野球との出会いや競技に夢中になったターニングポイント、高校時代に経験した、チームメートとのエピソードを語ってくれました。
◆女子野球部1期生としてチームメートと切磋琢磨。硬式野球に転向した高校時代
―この連載では広島で活躍するスポーツ選手のみなさんに、ご自身の競技人生におけるターニングポイントをお伺いしています。まずは、國場選手と野球の出会いから聞かせてください。
「家族の影響が大きかったですね。兄ふたりが軟式野球のチームに所属していて、父がそのチームでコーチをしていました。小学1年の時、兄たちが通っている少年野球で低学年チームの人数が足りないことがあって。ユニフォームを無理矢理着せられて、練習に参加するようになったのが最初でした。」
―周りから勧められるかたちでスタートしたのですね。
「そうですね。それまでにも兄の試合を見に行くことはあったのですが、正直、あまり興味がなくて……(笑)」
―そこから野球に夢中になるには、何かきっかけがあったのでしょうか。

「小学4年生の時に出場した大会が転機になりました。それまであまりバッティングは得意ではなかったのですが、その大会でライトオーバーの三塁打を打つことができたんです。対戦相手やその後の試合展開というよりも、とにかくその大会で三塁打を打った時の感覚やうれしさが、今もいちばん心に残っていますね。『やっぱり野球って楽しいんだな』と改めて感じた瞬間でした。」
―中学生までは軟式野球のチームに所属されていたということですが、硬式野球に転向されたのはどのタイミングでしたか?
「履正社高校で女子野球部に入部した時です。当時、履正社の硬式野球部は男子しかなかったのですが、2014年に女子野球部が創部されました。私はその1期生になります。履正社RECTO VENUS(履正社医療スポーツ専門学校・履正社スポーツ専門学校北大阪校の女子硬式野球チーム)でプレーしていた先輩が、監督に『良い選手がいますよ』と紹介してくれたのが、入部のきっかけになりました。」
―軟式から硬式に転向するタイミングであり、同時に自分たちが立ち上げメンバーの1期生となるわけですが、不安などはありませんでしたか。
「私自身『1期生』にずっと憧れがあったので、プラスのイメージしかありませんでした。自分たちでここからチームをつくっていけるのも魅力だと感じていたので、あまり悩むこともありませんでしたね。ただ、それまではずっと軟式でプレーしていましたし、何度か硬式野球の体験に行ったこともあったのですが、バッティングの時に手が痺れる感覚に『怖さ』も感じていました。それでも、もっと上を目指したいからこそ履正社高校を選んだんだという思いもありましたし、何より『怖いからといってここで諦めたくない』という気持ちがありました。もともと負けず嫌いなところがあるので、とにかく必死に練習をして結果を追求していくうちに硬式野球の面白さを感じるようになり、今は転向して良かったと感じています。」
―現在は企業チームのはつかいちサンブレイズ(以下、サンブレイズ)で内野手としてプレーされていますが、これまでの競技人生で忘れられない試合や出会いなどはありますか?

「女子野球の最高峰の大会に『女子野球ジャパンカップ』があります(現在は休止中)。これはプロチームのほかに学生チームも参加できる大会で、高校生は、全国高等学校女子硬式野球選抜大会でベスト4まで進出すると出場権を得ることができました。そのジャパンカップを目指して選抜大会に参加した高校2年生の時、私は大会直前に右肩を脱臼してしまったんです。もちろん選抜大会には出場することができなかったのですが、そんな姿を見た後輩たちが『ジャパンカップまで勝ち進みます』と言ってくれました。ジャパンカップまで進むことができれば、私のケガも治って出場できる可能性があったからです。」
―チームメートのみなさんが、國場選手のためにも戦ってくれたのですね。
「はい。初戦から強豪チームが相手だったのですが、みんなは宣言通り勝ち進んでくれました。3回戦の作新学院高校との試合で雨天コールドで負けてしまったのですが、その時に後輩たちが『ジャパンカップに連れていけなくてすみません』と謝りに来てくれたんです。自分たちも悔しいはずなのに、そうして私のことを気遣ってくれたのがすごくグッときました。改めてチームメートの存在のありがたさを感じた、忘れられない試合です。私が逆の立場になったときも『誰かのために戦う』という姿を見せることができたら良いなと思いますし、チームメートを大切にしたいという思いがより強くなりました。」
◆人生初のキャプテン就任。自分らしさを活かしながら、さらなる飛躍を目指す
―ご出身は大阪ですが、広島を拠点とするサンブレイズに加入された経緯を教えてください。

「侍ジャパンの代表合宿に参加した際に岩谷美里監督と同じチームでプレーする機会があり、すごく良くしていただきました。その岩谷監督のもとで野球をしてみたいと思ったのがひとつ。もうひとつは、もともと建築系の仕事に憧れがあったので、サンブレイズの親会社が建築関係というのも決め手でした。」
―建築にご興味があるとは意外でした。サンブレイズでは、今シーズンからキャプテンに就任されていますね。
「はい。これまでの競技人生でキャプテンをしたことがほとんどなかったので、指名をされた時には正直驚きました。キャプテンに就任することも、実はチームに発表される5分くらい前に知らされたんです。」
―それは直前ですね!驚かれたのではないですか?
「はい。岩谷監督は私の性格をよく知っているので、先に伝えると私が不安がるのではないかと思ったみたいです。ただ、どちらにしろ『今シーズンのキャプテン』と言われた時は、一瞬思考が停止しましたね(笑)」
―岩谷監督が、國場選手をキャプテンに指名された理由は?
「サンブレイズは今シーズンで4年目を迎えます。私自身、創部1年目から所属していることもあり、『そろそろ殻を破ってほしい。もう一段階、成長してほしい』という思いで指名していただいたと聞きました。このキャプテン就任が、私の新しいターニングポイントになるように精一杯頑張りたいと思っています。」
―では最後に、今シーズンの目標を聞かせてください。

「チームとしてはタイトルを狙いに行きたいです。全日本大会、クラブ選手権大会での優勝は絶対に取りたいですね。3月末に広島で開催されたオープン戦では、瀬戸内ブルーシャインズと九州ハニーズに連勝して良いスタートを切ることができました。今シーズンもファンのみなさんに楽しんでいただけるようなさまざまなイベントを予定しているので、ぜひホームページをチェックして、足を運んでいただけるとうれしいです!」
―國場キャプテンの活躍に期待しています。本日は、ありがとうございました。
「はい、ありがとうございました!」
國場紗智選手の【My Turning Point】
☆ あの感覚が忘れられない。小学4年生の大会で放ったセンターオーバーの三塁打
☆ 1期生としてチームをつくり上げ、チームメートの大切さを再認識した高校時代
☆ 『このひとのもとで野球がしてみたい』と感じた、代表候補合宿での岩谷美里監督と出会い

國場紗智(くにば さち)
Sachi Kuniba
1998年9月28日、大阪府出身。
小学生から競技を始め、履正社高から履正社RECTO VENUS(履正社医療スポーツ専門学校)へ進学。卒業後は実業団チームのエイジェックでプレーし、2021年に開催された全日本女子硬式野球選手権大会では優勝を経験した。2022年よりはつかいちサンブレイズに所属している。軽快な守備と強肩が武器の内野手。2025年シーズンはキャプテンを務めることが発表された。
◆チーム情報/はつかいちサンブレイズ
広島県廿日市市を本拠地とする、女子硬式野球チーム。2021年に創部し、2022年4月から開幕した中四国地方の女子硬式野球チームが参加する『ルビー・リーグ』に参戦している。初代総監督は元・広島東洋カープの石橋文雄。監督は女子プロ野球リーグで三冠王に輝いた岩谷美里が務め、元プロ選手も多数所属する。「地域との関わりを大切にする」というチーム方針を掲げ、女子野球の普及振興を通じた地域の活性化に向けて活動している。