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My Turning Point~広島アスリートが語る転機の物語~
【第20回】安芸高田わくながハンドボールクラブ・中村仁宣

新たなスポーツの楽しみ方を提供する、広島横断型スポーツ応援プロジェクト、通称『Team WISH』。プロ野球やJリーグをはじめ、数多くのトップスポーツチームを有する広島県ならではの取り組みとして、日々、各チーム・選手の魅力を発信している。

本連載では、Team WISHに参加する全25チームの選手・関係者に、「自身にとっての『ターニングポイント』とは」をインタビュー。
競技や人との出会い、試合やできごと、忘れられない「あの日」、誰かの言葉……競技人生に影響を与えた転機をめぐる物語から、選手の新たな一面にフォーカスしていく。

第20回となる今回は、安芸高田市を拠点に活動する安芸高田わくながハンドボールクラブから、中村仁宣(なかむら きみのり)選手が登場。小学生からハンドボールを始め、10年以上の競技歴を持つ中村選手は、中央大学在籍時にはキャプテンとして大学日本一に輝くなど数々の実績を収めてきた。その原動力とは一体何だったのか。中村選手にとって忘れられない3つの試合について話を聞いた。

◆『1位になるまでやめない』。その思いで昇り詰めた大学日本一

―中村選手は現在、安芸高田わくながハンドボールクラブ(以下、わくなが)で広報担当と選手を兼任されながら活躍しておられます。福井県出身の中村選手ですが、まずはハンドボールとの出会いからお伺いできますか。

「僕は3兄弟の末っ子で、兄と姉がいます。いちばん最初に兄がハンドボールをするようになり、続いて姉も、そして僕もプレーするようになりました。家族の影響が大きかったですね」

―福井県はハンドボールが盛んな地域なのでしょうか?

「ハンドボールのスポーツ少年団もありますし、小学生から競技に取り組んでいる子どももたくさんいます。僕の地元にも全国大会に出場するような強いチームがあったので、そういう意味ではハンドボールが盛んな地域なのかもしれませんね。兄は3歳上、姉は1歳上なので、同じ世代で地元でプレーしていました」

―そこから中学、高校、中央大学と、ハンドボール一筋ですか?

「そうですね。ずっとハンドボールを続けてきました。小学6年生の時に、当時所属していたチームのキャプテンとして全国大会に出場したのですが、そこで3位に終わってしまったんです。僕は負けず嫌いな性格なので、その時、『絶対に1位になるまでハンドボールをやめない』と決意しました。あの時の悔しさが、ここまでハンドボールを続けることができた理由の一つだと思っています」

―ポジションはセンターバック(以下、CB)とお伺いしています。当時から同じポジションですか?

「はい。CBはバスケットボールでいうところのポイントガードに近いポジションで、主にゲームをコントロールする役割を持っています。『司令塔』と言われることもありますね。ハンドボールを始めた当時からCBで、これまでずっとCB一筋でプレーしてきました」

―小学生からプレーされているということは、ハンドボール選手としてもかなり長いキャリアをお持ちだと思います。これまでに、忘れられない試合はありましたか。

「2021年の全日本学生ハンドボール選手権大会(インカレ)です。当時僕は中央大学の4年生でチームのキャプテンを務めていたのですが、このインカレで優勝し、日本一になることができました。小学生の時に『1位になるまでやめない』と決めてハンドボールをやってきて、初めて優勝、日本一になった大会が2021年のインカレでした。あのインカレは僕にとって、すごく大きなターニングポイントですね。小学生の時に一緒にハンドボールを始めた友だちがいるのですが、彼とは高校、大学とずっと同じチームでプレーしてきました。一緒に優勝を目指してきた仲間でもあるので、大学でやっと優勝できた時はさすがに感極まって、ふたりとも泣いてしまいましたね(笑)」

―苦楽を共にされたチームメートと、やっとつかんだ優勝だったのですね。その方は、今もハンドボールをされているのですか?

「はい。東京ジークスターというチームでプレーしている、中村翼選手です。社会人になって初めて別のチームでプレーすることになりましたが、同じプロの世界でハンドボールを続けることができているのはうれしいですね。いつか優勝決定戦で対戦するのが、今の夢です」

◆失うものはないと挑んだリーグ戦で、無敗の王者を相手に1点差で勝利

―中央大学で念願の優勝をつかみ、卒業後はわくながに加入されました。加入の経緯を教えてください。

「大学4年生のリーグ戦を当時のわくながの監督が見に来てくれていて、試合後に声をかけていただいたのがきっかけでした。今シーズンで加入3年目になります」

―わくながでプレーするなかで、特に印象に残っている試合はありますか?

「今シーズンの試合になりますが、2024年9月28日の豊田合成ブルーファルコン名古屋(以下、豊田合成)戦です。豊田合成は昨シーズンの優勝チームで、ここ数シーズンはリーグ戦で負けなしという強豪でもあります。僕たちも毎シーズン非常に苦戦する相手なのですが、9月の試合では1点差で勝利することができました。あの試合はすごく印象に残っていますね」

―前年王者であり、近年無敗の相手と戦うのはやはりプレッシャーのかかるものですか?

「いえ、むしろこちらは失うものがないという気持ちで挑んだので、そこは思い切ってプレーできました。それに、豊田合成には大学時代のチームメートである宮城風太選手も所属しているので、楽しみながらプレーすることもできましたね。僕自身は先ほどもお話しした通り、試合中はゲームをコントロールする役割がメインなので、周りをいかに活かしていくか、試合を有利に進めていくかに重きをおいています。おかげで、いわゆる『会心のプレー』のようなものはなかなかないのですが(笑)。チームを勝利に導くことが自分の役割だと思っています」

―試合では、まさに司令塔として活躍する中村選手を見ることができるのですね。では最後に、このWEBマガジンをご覧の広島県のみなさんにメッセージをお願いします。

「僕たち安芸高田わくながハンドボールクラブは、広島県北の安芸高田市を拠点に活動しています。冬はかなり雪が降りますが、その分すごく自然が豊かで、食べ物も美味しい地域です。少し先にはなりますが、5月3日には僕たちが普段練習している湧永満之記念体育館でホームゲームも開催されるので、ぜひ応援にきていただければと思います。ただ、安芸高田市は鹿がものすごく多いので、お越しになる時はそこだけ気をつけてください(笑)。日本のハンドボールリーグは今シーズンから『リーグエイチ』と名称が代わり、試合数も増えるなどさまざまな変化がありました。今はちょうどシーズンの真っ最中で、直近では3月1日に三次市で、22日には東区のマエダハウジング東区スポーツセンターでホームゲームを控えています。ぜひ試合会場にも足を運んでいただいて、ハンドボールの面白さに触れていただければと思います」

―本日は、ありがとうございました。

「ありがとうございました!」

中村 仁宣選手の【My Turning Point】

☆ 3位に終わった悔しさが『1位になるまでやめない』思いの原動力に
☆ 小学校からの仲間と悲願の優勝をつかみとった、大学4年のインカレ
☆ 無敗の王者に勝利した2024-25リーグ戦での一戦


中村仁宣(なかむら きみのり)
 Kiminori Nakamura

2000年1月5日、福井県出身
北陸高校、中央大学を経て2022年3月にわくながに加入。小学校、中学校、高校、大学と各カテゴリでキャプテンを務め、大学4年時に出場した2021年・全日本学生ハンドボール選手権大会(インカレ)では自ら先制点を決めるなど、チームを40年ぶりの日本一へと導いた。チームではセンターバックとしてゲームをコントロールする役割を務め、試合の要として活躍している。

◆チーム情報/安芸高田わくながハンドボールクラブ
1969年、湧永製薬を母体として創部された男子ハンドボールチーム。1976年から日本ハンドボールリーグに参戦。以来、一度も降格せず1部に所属し続ける強豪チームである。1983・1990年には、リーグ優勝・日本選手権優勝・社会人選手権優勝・国体優勝のグランドスラムも達成。全日本選手権で7連覇を達成するなど、男子ハンドボールチームの盟主として活躍している。2023-2024シーズンからチーム名を、本拠地である安芸高田市を冠した『安芸高田わくながハンドボールクラブ』に変更。