• バスケットボール
  • TeamWISH
  • 取材記事

My Turning Point~広島アスリートが語る転機の物語~
【第15回】広島ドラゴンフライズ・三谷桂司朗

新たなスポーツの楽しみ方を提供する、広島横断型スポーツ応援プロジェクト、通称『Team WISH』。プロ野球やJリーグをはじめ、数多くのトップスポーツチームを有する広島県ならではの取り組みとして、日々、各チーム・選手の魅力を発信している。

本連載では、Team WISHに参加する全25チームの選手・関係者に、「自身にとっての『ターニングポイント』とは」をインタビュー。
競技や人との出会い、試合やできごと、忘れられない「あの日」、誰かの言葉……競技人生に影響を与えた転機をめぐる物語から、選手の新たな一面にフォーカスしていく。

男子プロバスケットボールBリーグの2023-24シーズン、ワイルドカードからチャンピオンシップに進出し、クラブ初となる優勝を果たした広島ドラゴンフライズ。主力選手の1人として下剋上Vにも貢献した三谷桂司朗(みたに けいじろう)選手は、チーム4人目の地元・広島出身の選手でもある。2023年1月、大学在学中にプロ契約し、直後から堂々の活躍を見せている三谷選手に、バスケットボール人生で体験したターニングポイントについて聞いた。

◆『三谷桂司朗』を作り上げた、広島皆実高校時代の栄光と試練

―バスケットボールは、いつ頃、どんなきっかけで始められましたか?

「小学校1年生の時から身長が高いことを理由に誘われていました。3年生の夏にバスケットの体験に行ったのですが、それがすごく楽しかったので、そのまま続けました」

―高校は名門・広島皆実高校に進まれましたね。

「6年生の時、ミニバスのチームへ新しく来られた監督が皆実高校バスケ部のOGだったんです。監督から色々な話を聞かせてもらって、『皆実高校に行きたい』と思うようになりました。実際に皆実高校でバスケ部に入部してみると、練習もきつかったし、練習量もそれまでとは桁違いでした。ただ、今までやってきたバスケットがガラリと変わるような新しい情報や知識が学べて、競技の面白さをより深く知ることができたので、皆実高校を選んで正解だったと思っています」

―高校時代、三谷選手にとってターニングポイントになった出来事はありましたか?

「1年生のインターハイが、一つの大きなターニングポイントだったのかなと思います。初めて出た全国大会で、全国の強豪校と戦うという経験もできましたし、そこで初めてアンダー16の日本代表合宿に追加招集してもらうこともできました。同世代のトッププレーヤーたちとのコミュニケーションが増えたことで、より高いレベルのバスケットボールを知るきっかけになったので、あの大会は本当に大きかったと思います」

―1年生から主力選手として活躍されたのですね。

「2年生の時に出た国民体育大会(現・国民スポーツ大会)も印象的でした。それまではずっとゴールに近いインサイドのポジションでしたが、2年生の頃からは他のポジションでもプレーするようになりました。広島県代表で国体に出場しましたが、各県の同じポジションの選手と比べたら経験も浅く、何をしたらいいかがわからなくて、不甲斐ないプレーをしてしまいました。『このままでダメだ』という感覚になりましたし、目標としていたオールラウンドにプレーするポジションに近づくには何が必要なのかを見つめ直すことができたので、苦しくて辛い思い出ですが、次の自分の成長につながるターニングポイントだったのかなと思います」

―高校3年生の冬には、特別指定選手として広島ドラゴンフライズでプレーされました。

「ウィンターカップ(全国高等学校バスケットボール選手権大会)が終わってからの3カ月間、活動させてもらいました。ずっとプロになりたいという思いはありましたが、実際はどのような環境や雰囲気なのか分からなかったので、この経験でビジョンがより明確になり、本当にありがたかったです。そのおかげで大学4年間でのレベルアップにもつなげられたと思うので、これが僕にとっての3つ目のターニングポイントだったと思います」

◆新しい課題に向き合いながら、いい準備ができています!

―高校時代、筑波大学3年時と2度の特別指定を経て、大学卒業を控えた昨年1月にプロ契約。故郷である広島でキャリアをスタートされました。

「バスケットボールだけでなく、人間としても成長させていただいた場所なので、広島でプロキャリアをスタートしたいという気持ちはずっとありました。いろんな出会いやご縁で得られた機会だと思うので、ありがたいです」

―ルーキーイヤーとなった2023-24シーズンにはBリーグ優勝を経験されましたが、いかがでしたか。

「優勝した後は友だちをはじめ、いろんな方々からメッセージや連絡をいただいて、本当にたくさんの人が見てくれているんだなと実感しましたし、より一層、地元で結果を残すことの重要さを感じました」

―前年王者として臨む今季は、苦戦が続いています。

「チームとしては、本当に苦しい状況が続いています。ケガ人が出てしまった時期もありましたが、それは言い訳になってしまうので、今いるメンバーで精一杯戦う、という姿勢でプレーしてきました。目標に掲げた連覇を実現するためにも、これからのシーズン中盤の試合が大事だという話をチームでもしています。改めて自分たちのバスケットを追求し、しっかりミーティングをして良い準備をして、良い形で勝利をつかむことを目標にやっています。チームの雰囲気は、すごく良いです。チームとしても個人としても、新しい課題に向き合いながら試合に向けた準備ができていると思います」

―今季はEASL(東アジアスーパーリーグ)参戦もあり、かなり多忙だと思います。その負担はいかがですか?

「移動も多くてなかなかリラックスできる状況ではないし、日本とは違う部分も多くて難しいですが、今のところは楽しみながらできています。あとはケガと体調に気をつけながら、残りの試合すべてで勝ちを目指して頑張りたいなと思っています」

―最後に、応援してくださる県民の皆さんにメッセージをお願いします。

「リーグの中断期間を経て、もう一度チームとしてまとまりのあるバスケットを皆さんの前でお見せするために全員で頑張っています。苦しい状況ではありますが、勝利をぜひ願ってほしいですし、その応援が本当に僕たちの力になるので、これからも共に戦ってもらえたらと思います。よろしくお願いします!」

三谷桂司朗選手の【My Turning Point】

☆ 全国の強豪校との対戦を経験し、世代別代表の扉も開いた高1のインターハイ
☆ チームに貢献できず自分に必要なことを見直して、成長につながった高2の国体
☆ 高3の冬、特別指定選手として広島ドラゴンフライズでプレーし将来のビジョンが明確化


三谷 桂司朗(みたに けいじろう)
 Keijiro Mitani

2001年6月15日、広島県出身。
広島市立井口中学校、広島皆実高校、筑波大学を経て2023年1月に広島ドラゴンフライズ入団。高校3年時、大学3年時には特別指定選手としてプレーしたこともあり、プロデビューの際はブースターから「おかえり」と歓迎された。ルーキーイヤーから多くの試合で先発し、主力として存在感を示してチームのBリーグ優勝にも貢献した。

◆チーム情報/広島ドラゴンフライズ
広島初のプロバスケットボールクラブとして誕生。初代ヘッドコーチに佐古賢一氏を迎え、2014年にNBLへ参入した。2016-17シーズンからは新たに開幕したB.LEAGUEに参戦。2023-24シーズンはワイルドカードからチャンピオンシップに進出し、クラブ初となる優勝を果たした。シーズン終了と同時に引退した朝山正悟を新ヘッドコーチに据えてスタートした2024-25シーズンは、序盤戦14試合を3勝11敗と苦戦中。連覇に向けて巻き返しを図る。