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My Turning Point~広島アスリートが語る転機の物語~
【第14回】中国電力レッドレグリオンズ・森田政彰
新たなスポーツの楽しみ方を提供する、広島横断型スポーツ応援プロジェクト、通称『Team WISH』。プロ野球やJリーグをはじめ、数多くのトップスポーツチームを有する広島県ならではの取り組みとして、日々、各チーム・選手の魅力を発信している。
本連載では、Team WISHに参加する全25チームの選手・関係者に、「自身にとっての『ターニングポイント』とは」をインタビュー。
競技や人との出会い、試合やできごと、忘れられない「あの日」、誰かの言葉……競技人生に影響を与えた転機をめぐる物語から、選手の新たな一面にフォーカスしていく。
連載14回目の今回は、JAPAN RUGBY LEAGUE ONEディビジョン3に参戦するラグビーチーム・中国電力レッドレグリオンズから、森田政彰(もりた まさあき)選手が登場。ラグビーと出会った意外なきっかけや、高校・大学時代に自身を変えてくれた恩師との出会い、『選手としてラグビーを続けられること』に感謝し、更なる成長を決意するきっかけとなった実兄の引退など、これまでのラグビー人生で体験したターニングポイントについて聞いた。
◆限界に挑戦して、突破と同時に倒れた高校1年の夏が最初のターニングポイントに
―この連載では、アスリートのみなさんに競技との出会いからお伺いしています。まず、森田選手がラグビーを始めたきっかけから教えてください。
「もともとは小学2年生の時、兄と2人でサッカーができるクラブを探していたんです。その時に知り合いから『同じフットボールがあるよ』と言われて、ラグビースクールに連れて行ってもらったのがきっかけでした。確かにラグビーは『ラグビーフットボール』ともいいますから、フットボールには違いないんですよね(笑)。そこで競技を始めると、すぐに『すごいね』『エースだよ』と言われるようになりました。ただ、競技人口が少ないので、 そういった誘い文句で勧誘するのは『ラグビーあるある』なんです」
―そうなんですね(笑)。とはいえ、本当に当時から才能があったのでは?
「それはないと思います……。入った当初はラグビーボールを扱うのも難しかったですし、 試合中に砂遊びをして叱られたこともありました(笑)。一方で、兄は才能を発揮してどんどん有名になり、エリートコースを歩んでいったんです」
―お兄さんは、現在、東芝ブレイブルーパス東京のコーチングコーディネーターを務めている森田佳寿(もりた よしかず)さんですね。
「はい。現役時代は東芝で主将も務めていました」
―森田選手ご自身は、そのお兄さんと同じ御所実業高校に進まれ、ラグビー部に所属されました。高校時代、特に印象に残っている出来事はありますか?
「1年生の夏の合宿です。『御所ラグビーフェスティバル』といって、御所実業高校が中心となり、20校ぐらいのラグビー部が集まって毎日朝から晩まで試合をするという、1週間の合宿があるんです。合宿中はグラウンドまで片道10キロほどの道を走って往復するのですが、僕は持久走が苦手なのに、『頑張らなあかん!』と思って先頭の集団についていくことにしたんです。そうしたら、最終日に力尽きて倒れちゃって……(苦笑)。周りには迷惑をかけましたが、そこから試合にも出ることができるようになったので、あのときの頑張りは、自分にとって大事なターニングポイントだったのだと思います」
―では、思い出に残る試合はありますか?
「2008年の全国高校ラグビー大会、いわゆる『花園』で2位になった試合です。決勝で対戦相手だった常翔啓光学園高校は、春の選抜大会の決勝などいろいろな大会で対戦し、いずれも負けてしまった因縁の相手です。そのライバルに花園でも負けたということもあって、2008年の花園の決勝は今でも忘れられない試合になっています」
―高校卒業後は、九州共立大学に進学されました。
「はい。実は僕、カープの大瀬良大地投手とは大学の同級生で、授業もいくつか一緒に受けていました。大瀬良投手がドラフトで指名された時は、僕も中国電力レッドレグリオンズへの加入が決まっていたので、勝手に『一緒の広島だ!』と思っていました(笑)」
―それはすごいご縁ですね。九州共立大学のラグビー部は、どうでしたか?
「入ってすぐは、いろいろと苦労することもありました。悩んでいた時に高校時代の恩師である竹田寛行先生に電話をしたら、『〝どこで何をやるか〟ではなく、〝そこで何をやるか〟が重要だぞ』と言われて。大学側も、当時のトップリーグからコーチの堀田雄三さんを招聘したり、グランドを人工芝にしたりと徐々に力を入れてくれたおかげで環境が整い、チームもだんだん変わっていきました。僕にとって一番大きかったのは、堀田さんから『体が小さくてもできるラグビーがある』と教わったことです。そのおかげで、今もこうやってプレーすることができています」
◆大きな相手にも立ち向かい、倒すプレーが身上。秘訣は気持ちで負けないこと
―どのような経緯で中国電力に入社されたのでしょうか。
「高校の竹田先生や大学の波多野監督とのつながりもあり、当時の中国電力の監督が試合を見に来て下さったんです。中国電力には高校の先輩や同級生もいましたし、社業とスポーツの両立という面でも魅力のあるチームだったと感じたので、ぜひ中国電力でプレーしたいと思いました。入社前からすごくアットホームなチームという印象がありましたが、入ってみたらまさにその通りでしたね」
―社会人になってから、競技人生に影響を与えた出会いや出来事はありましたか?
「兄が数年前にケガが原因でラグビーを引退したんです。その兄の姿を見て、僕はケガも少ないし、ありがたいことにまだラグビーができているんだから、もっと成長しなければいけないと思うようになりました。ちょうど増量して体も大きくなっていた頃でしたし、それまでの得点を奪うウイングというポジションから、ウイングをアシストするセンターというポジションに転向した時期でもありました。兄の引退は、いろいろな意味でも一つの転機になった出来事だったと思います」
―『お兄さんの分も』という思いもおありだったのですね。では、森田選手の思うラグビーという競技の魅力は何でしょうか?
「コンタクトスポーツならではの迫力でしょうか。僕は身長166cmでラグビー選手にしてはかなり小さい方なのですが、180cmを超える体の大きい相手でも関係なくぶつかり合い、倒すところを見て楽しんでいただきたいと思います。チームとしても、中国電力レッドレグリオンズは他チームに比べると外国人選手が少ないですし、選手たちがみんな普段はサラリーマンをしているのも特徴の一つだと思っています。そういう選手たちが、体の大きな選手や外国人選手を相手に果敢に戦う姿を見てもらいたいですね」
―体格差がある相手にも負けない秘訣は、何でしょうか。
「スキル等ももちろん必要ですが、僕の場合は気持ちですかね。少しでも『怖い』と思ったら飛ばされてしまいますし、萎縮して変な当たり方になると、ケガもしてしまいますから。気持ちの強さは大切だと思います。でも、もともと自分はこんな性格ではなかったんです。高校までは、対戦相手の選手に当たられては飛ばされて、兄が助けに来る……というタイプで(笑)。御所実業高校時代に竹田先生に指導していただいたおかげで変わることができたので、本当に感謝しています」
―12月21日には、JAPAN RUGBY LEAGUE ONE 2024-25の新シーズンが開幕します。
「僕たちが所属するリーグワンのディビジョン3というカテゴリーは、どのチームも力が拮抗しているので、どちらかが大量得点で勝つという試合は減り、僅差の面白い試合が増えるのではないかと思っています。昨シーズン、中国電力レッドレグリオンズは最下位だったんですが、勝たなければ試合に足を運んでいただいたみなさんに喜んでもらえないと思うので、広島で開催されるホームゲームはもちろん、全ての試合で勝利をお届けできるように頑張ります。12月21日の開幕戦は、マツダスカイアクティブズ広島とBalcom BMW Stadiumで対戦します。ぜひ足を運んで、ラグビーの迫力や面白さを体感していただきたいです!」
森田政彰選手の【My Turning Point】
☆ 御所実業高校時代の恩師・竹田寛行先生との出会い、夏合宿では限界を超えるランニングに挑戦
☆ 九州共立大時代、小柄でもできるラグビーを教えてくれた堀田雄三コーチとの出会い
☆ 兄の引退をきっかけに更なる成長を期し、肉体改造とポジション転向に挑戦
森田政彰(もりた まさあき)
Masaaki Morita
1991年10月21日、奈良県出身。
ポジションはCTB(センター)。奈良県立御所工業・実業高校2年生の2008年、全国高等学校ラグビーフットボール大会で準優勝に貢献。九州共立大学を経て中国電力レッドレグリオンズへ入部し、11年目のシーズンを迎える。平日は業務終了後に週2日ずつグラウンドでの練習とトレーニングを行い、土曜は練習か試合というルーティーン。若手とのポジション争いもし烈だが、持ち味を発揮して「全試合出場」を目標に掲げ新シーズンに臨む。
◆チーム情報/中国電力レッドレグリオンズ
1987年創部。陸上競技部、女子卓球部とともに中国電力のシンボルスポーツチームとして活動している。2003年のラグビートップリーグ開幕後は、トップキュウシュウAに所属。2019年には同リーグでの初優勝を果たした。2021年に開幕したJAPAN RUGBY LEAGUE ONEでは、ディビジョン3に所属している。チーム名の「レッド」(赤色)はチームカラー。「レグリオンズ」は、獅子座の中で最も明るい星「REGULUS(レグルス)」と「LION(ライオン)」を組み合わせた造語で、「固い絆でつながることにより、獅子のように強いチームになる」というチームが目指す姿を表現している。