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My Turning Point~広島アスリートが語る転機の物語~
【第12回】中国電力ライシス・木村光歩選手
新たなスポーツの楽しみ方を提供する、広島横断型スポーツ応援プロジェクト、通称『Team WISH』。プロ野球やJリーグをはじめ、数多くのトップスポーツチームを有する広島県ならではの取り組みとして、日々、各チーム・選手の魅力を発信している。
本連載では、Team WISHに参加する全25チームの選手・関係者に、「自身にとっての『ターニングポイント』とは」をインタビュー。
競技や人との出会い、試合やできごと、忘れられない「あの日」、誰かの言葉……競技人生に影響を与えた転機をめぐる物語から、選手の新たな一面にフォーカスしていく。
連載第12回目は、日本卓球リーグ実業団連盟女子1部に所属する中国電力ライシスから、木村光歩(きむら みつほ)選手が登場。世界の舞台で活躍する福岡春菜選手(当時)の姿に憧れてプロを目指した北京五輪のテレビ観戦、目標としていた優勝を逃したインターハイでの悔しい経験、強豪・中国電力ライシスへの加入など、卓球人生で体験したさまざまなターニングポイントについて聞いた。
◆地元・岡山でのインターハイで味わった悔しさをバネに大きく成長
―この連載では、広島で活躍されている選手に『競技人生におけるターニングポイント』をお伺いしています。まずは、木村選手が卓球を始めたきっかけからお伺いできますか?
「私には兄がいるのですが、趣味で卓球をしていた両親の影響で、兄が先に卓球を始めたんです。それを見ていた私も、5歳の時からプレーするようになりました」
―ご家族の影響が大きかったのですね。では、5歳で始めた卓球を、ここまでずっと続けてこられた一番のポイントは何だったのでしょうか。
「2016年に地元の岡山で開催されたインターハイで味わった悔しさですね。私のなかに『インターハイで優勝を狙う』という目標があったので、進学先もインターハイに出場できる学校を探しましたし、優勝に向けてずっと取り組んできました。ただ、結果は3位に終わってしまって……本当に悔しい思いをしたんです。その悔しさから、『もっと頑張らないといけない』という思いが強くなりました」
―その悔しさが、競技を続ける原動力になったのですね。プロを目指そうと思われたのも、それがきっかけですか?
「そうですね。あとは、北京五輪に出場している選手を見て、すごくかっこいいなと感じたのも理由の一つです。当時、中国電力女子卓球部に所属されていた福岡春菜さんのプレーをテレビで見て、私もこんな風になりたいと思ったんです」
―テレビ越しではありますが、福岡さんとの出会いは大きかったのですね。『出会い』という意味では、福岡さん以外にも、ご自身の変化や成長につながるような出会いはあったのでしょうか。
「高校時代の恩師の先生たちとの出会いも大きかったですね。中国電力に入社するきっかけをつくってくださったのも、後押しをしてくださったのも先生たちでした。あの出会いがなければ、私は今ここにはいないと思います」
―まさに、競技人生を左右する大きな出会いだったのですね。学生時代の忘れられない試合はありますか?
「先ほども挙げましたが、やはり高校2年生の時のインターハイ個人戦です。上位を狙っていたのですが、早い段階でライバル校の同級生に負けてしまいました。地元・岡山で開催されたインターハイでしたし、高校2年生ということもあって進路にも大きく影響する大事な大会だったので、そこで負けてしまったことは本当にショックでした。『何してるんだろう』と自分自身に腹が立ちました。そこが、私自身が変わった一つのきっかけだったと思います」
―具体的には、どのような変化があったのでしょうか。
「気持ちの部分が一番大きいと思います。それまでは、なんとなく卓球をして、『全国大会でそこそこ勝てればいいや』という気持ちがどこかにありました。ただ、インターハイで敗退したことで、他校の選手は自分より努力していると感じましたし、もっと卓球に対して突き詰めないといけないと感じるようになりました。もう一つの大きなターニングポイントは、中国電力に入社して、中国電力ライシスに加入したことです」
◆広島での競技活動は、身近で応援してくれる人たちの存在が心強い
―中国電力ライシスに加入して、ご自身の中にさらなる変化があったということでしょうか。
「はい。高校時代と社会人では、卓球そのものが全く違うという印象を受けました。『今までは勝てていたけれど、社会人の選手には通用しない』ということがすごく多かったんです。中国電力ライシスでは、卓球をまた一から教えてもらいながら、基礎からやり直したという感覚があります」
―改めて、一つずつ積み重ねていかれたのですね。木村選手は現在の所属である『中国電力ライシス』の他に『京都カグヤライズ』にも所属し、卓球のセミプロリーグであるTリーグも経験されました。これも変化の一つと捉えて良いのでしょうか。
「はい。私は中国電力ライシスの選手として出場する大会をメインに活動していますが、Tリーグにも参戦することで、さまざまな経験を積むことができました。この経験を、中国電力ライシスでの活動にも活かしていきたいと思っています」
―Tリーグの雰囲気は、他の大会と違いますか?
「全然違いますね。中国電力ライシスで出場する大会では、体育館に卓球台が何台もずらっと並んでいる状態で複数の試合が同時に進行します。一方、Tリーグの場合は試合をするのは1台だけで、観客はみんな、プレーする選手に注目します。そういう意味でも雰囲気は全く違いますね。Tリーグはお客さんとの距離感もすごく近いので、それも他の大会にはない独特の雰囲気だと思います」
―選手に注目が集まるという意味では、広島という地域はスポーツへの注目度が非常に高い地域だと思います。
「広島はスポーツが有名で本当にたくさんのチームがありますよね。スポーツ関連のイベントもたくさんあって、地域のみなさんと近くで触れ合えたり、卓球以外の競技の選手と交流できる機会もあって、すごくありがたい経験ができていると思います。ファンのみなさんや地域のみなさんといった、身近で応援してくれる存在がいることは心強いですよね」
―11月には、後期日本卓球リーグホームマッチ(広島大会)も開催されます。大会に向けた意気込みをお伺いできますか。
「今年は5月の前期日本リーグという大会で優勝できたので、いい流れを切らさず、後期も優勝できるようにチーム一丸となって頑張りたいと思います。ぜひ会場に足を運んで、応援していただけるとうれしいです」
―木村選手の活躍を楽しみにしています。本日はありがとうございました!
「ありがとうございました!」
木村光歩選手の【My Turning Point】
☆ 元・中国電力の福岡春菜さんが、日本代表として活躍する姿に憧れた北京五輪
☆ 目標としていた優勝を逃し、悔しさを噛み締めたインターハイ
☆ 高校時代の恩師に後押しされて実現した中国電力入り
木村光歩(きむら みつほ)
Mitsuho Kimura
2000年2月9日、岡山県出身。
山陽学園高校在学中の2016年、地元・岡山で開催されたインターハイでは、目標とした優勝こそ逃したものの3位入賞。2017年には世界ジュニア代表に選ばれ、世界ジュニアシングルスベスト8を獲得した。社会人5年目の2022年は全日本選手権シングルスでベスト8に。2024年でチーム在籍は7年目。主将としてチームをまとめている。
◆チーム情報/中国電力ライシス
1991年4月に中国電力のシンボルスポーツとして創部。30周年を機に新チーム名を社内公募し、2023年より「中国電力ライシス」として活動している。日本卓球リーグに参戦中で、後期リーグでは2018年から2021年まで4連覇を達成。2024年は前期リーグでも優勝を飾った。全日本選手権団体の部でも2020、21年に連覇を達成するなど、常に実業団のトップで活躍している。