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My Turning Point~広島アスリートが語る転機の物語~
【第8回】スリストム広島・金子 陸選手

新たなスポーツの楽しみ方を提供する、広島横断型スポーツ応援プロジェクト、通称『Team WISH』。プロ野球やJリーグをはじめ、数多くのトップスポーツチームを有する広島県ならではの取り組みとして、日々、各チーム・選手の魅力を発信している。

本連載では、Team WISHに参加する全25チームの選手・関係者に、「自身にとっての『ターニングポイント』とは」をインタビュー。
競技や人との出会い、試合やできごと、忘れられない「あの日」、誰かの言葉……競技人生に影響を与えた転機をめぐる物語から、選手の新たな一面にフォーカスしていく。

連載第8回目は、3人制バスケットボール・3×3(スリー・エックス・スリー)のプロチーム、スリストム広島から金子 陸(かねこ りく)選手が登場。高校時代の恩師の言葉や、チーム消滅の危機に直面したとき出会ったスリストム広島・仲摩匠平代表とのエピソードなど、選手人生に大きな影響を与えたターニングポイントについて話を聞いた。

◆「勝負事には負けたらダメだ!」強烈なインパクトを残した恩師からの教え

―この連載では、広島で活躍するアスリートのみなさんから、人生のターニングポイントについてお伺いしています。まず初めに、金子選手がバスケットボールを始めたきっかけをお聞かせください。

「本格的に始めたのは小学校3年生ぐらいですが、父が学校の先生でバスケット部の顧問をしていたので、家にボールがあったり部活について行ったりという環境でした。そういう意味では、かなり小さい頃からバスケットボールに触れ合っていたのだと思います」

―地元のチームに所属して、プレーされていたのでしょうか。

「初めは地元の中学校でバスケ部に入っていたのですが、2年生のとき福岡県選抜の合宿に呼ばれたのを機に、父が『バスケットの強い中学校に行かせたい』と言い出して、転校することになりました。中学3年生の1年間は、北九州市の木屋瀬中学校という強い学校で鍛えていただきました」

―卒業後は名門・福岡大附属大濠高校に進学されました。進路を決めた理由は?

「2つ上の橋本竜馬さん(B1東地区・越谷アルファーズ)が、大濠高校に在学されていたんです。橋本さんは地元の先輩で、親同士が同級生だったこともあって小さい頃から知っていましたし、憧れの先輩で、ずっと尊敬していました。現在、大濠高校のバスケ部で監督をされている片峯聡太さんも地元が同じで、ミニバスケットボールクラブでも一緒にプレーしていたのですが、そういった地元の有名な先輩たちが進んでいたので、大濠高校への憧れはありました」

―憧れの先輩の背中を追いかけていかれたわけですね。高校時代のエピソードで、忘れられないものはありますか?

「大濠高校でお世話になった田中國明先生に、『勝負事には負けたらダメだ』といつも言われていたことが印象に残っています。例えば、僕が試合で20点取っても、マッチアップする相手に21点取られたら怒られるという感じでした」

―現在は3人制バスケットボールのプロ選手として活躍されていますが、それまでの5人制から、3人制に転向するきっかけは何だったのでしょうか。

「大学では地元を離れて京都の立命館大学に進み、バスケットを続けていました。24歳で福岡に帰った時に、ストリートボール(屋外のコートを使用し、簡略化したルールのもとで行うバスケットボールの一種)チーム『UNDERDOG』の 三井秀機さんに声をかけてもらったのが、3人制バスケを始めたきっかけです。三井さんは3人制バスケの先駆者的な存在で、僕を見つけてくださって、『一緒にやらないか』と声をかけてくださったんです。三井さんとの出会いも、ひとつのターニングポイントでしたね」

◆二足のわらじを履き、二拠点で活躍する『シュートが得意な銀行員』

―3人制バスケの魅力、面白さはどのようなところにあるのでしょうか。

「3人制バスケは、コートの広さが一般的な5人制バスケの半分です。その分、ボールを運ぶシーンは少なく、『ゴールを決める』シーンがメインの、バスケの『いいとこ取り』をしているスポーツだと思っています。どんどん点が入るスピーディーな展開も魅力のひとつですね。陸上競技に例えると、長距離が5人制で3人制は短距離。ずっと走り続けているようなイメージがあります。試合中はお客さんと選手の距離がすごく近くて、観客席にボールや人が飛んでくるくらい迫力もありますし、選手と観客が会話できる機会が多いのも魅力のひとつではないでしょうか」

―では、金子選手ご自身の魅力はどんなところですか?

「僕は今年34歳になるベテランなので、3×3への理解度や経験値は他の選手よりもあるのではないかと思います。最近は、頭を使ったプレーや、アシストして人を使うようなプレーを心がけています。元々すごくシュートが得意で僕の武器だと思っていて、そこに関しては負けない自信があります。ぜひシュートのシーンを見てほしいですね」

―金子選手は今季、福岡の3×3チーム『LAST ONE FUKUOKA』に在籍しながら、広島のチームである『スリストム広島』とも契約されました。広島でプレーすることになったきっかけは?

「きっかけは2年前、所属していた福岡のチームが運営の危機に面したことでした。その時に、今後のことについて初めてスリストム広島代表の仲摩匠平さんと話をさせていただきました。その後、福岡のチームは存続することになったのですが、3×3.EXE PREMIERというリーグには参戦しないことになりました。そのタイミングで仲摩さんに連絡をしたら、『ぜひ一緒にやろう』と言ってくださったんです」

―3×3には、リーグがいくつかあるのですか。

「はい。3×3.EXE PREMIERという、日本・ニュージーランド・オーストラリア・タイ・ベトナムの5カ国で開催される国際リーグや、西日本のチームが参戦している3×3 UNITEDなど、さまざまなリーグが存在します。スリストム広島は3×3.EXE PREMIERに参戦していて、LAST ONE FUKUOKAは3×3 UNITEDに参戦しています。僕は今季から、LAST ONE FUKUOKAとスリストム広島の2チームに所属して、両方のリーグに参戦することになりました。仲摩さんとの出会いは、僕にとってすごく大切な縁だと感じています」

―二拠点で活動されるということですね。現在のお住まいは、福岡ですか?

「はい。福岡で働いています。僕、実は銀行員なんですよ。ネットバンキングなので服装もわりと自由で、会社も選手活動を応援してくださっています。平日は練習をして、土日は試合という感じです。広島には月に1回、練習で行きますね。本当は牡蠣を食べたいんですけど、『当たると困るから』とシーズン中はいつも止められています。広島を満喫するためにも、オフにも来なきゃいけないな、と思っているところです」

―ぜひ、オフも広島を楽しんでください! 8月17日には『ひろしまゲートパーク』で、3×3の広島大会が開催されました。スリストム広島の選手として、ファンのみなさんの前でプレーした感想はいかがでしたか?

「オフェンスのシーンでもディフェンスのシーンでも、みなさんの声援の大きさには本当に驚きました。試合後には『感動したよ!』と言ってくださる方もいて……。そういった声をかけていただけると、『バスケをやっていて良かった』と改めて思います」

―会場は街の中心部ということもあって、大会当日は大変にぎわったのではないですか?

「そうですね。とても暑い日だったのですが、たくさんの方が足を運んでくださいました。ゲートパークのある場所は、元々はカープさんが本拠地にされていた場所だったと聞いています(ひろしまゲートパークは、旧市民球場跡地に2023年開業)。周辺には原爆ドームやおりづるタワー、広島城もあって、そうした広島を象徴する場所でプレーできたことも、アスリートとしてすごくありがたいことだと感じました」

―広島大会をきっかけに、チームのファンの輪が広がっていきそうですね。では最後に、今シーズンへの意気込みをお聞かせください。

「まずスリストム広島としては、3×3.EXE PREMIERでプレーオフに進出しようと話しています。スリストム広島は若い選手が多く、初めて3x3をプレーするBリーグの選手も所属していたりして、発展途上というか、これからますます面白くなると思っています。僕個人としては、自分の知識や持っているものをチームメイトに伝えて、広島で3×3を盛り上げていけるように頑張りたいです」

金子 陸選手の【My Turning Point】

☆ 大濠高校時代の恩師の『勝負事には負けたらダメだ』という教え
☆ 24歳で出会った、3人制バスケの先駆者・三井秀機さんとの出会い
☆ スリストム広島・仲摩匠平代表と出会って始めた、福岡と広島の二拠点活動


金子 陸(かねこ りく)
 Riku Kaneko

1990年8月23日、福岡県出身。
バスケットボールの名門校・福岡大学附属大濠高校から立命館大学へ進学。卒業後も関西の社会人チームで5人制バスケットボールを続けるが、24歳の時に地元・福岡へ帰り3人制へ転向した。現在は、「どちらかに専念しないと上のレベルでは勝てない」と3人制に絞って活動をしている。今季はLAST ONE FUKUOKAに所属しながら、スリストム広島の一員として3×3.EXE PREMIERでも活躍中。

◆チーム情報/スリストム広島
2018年に誕生した、広島県初の3人制プロバスケットボールチーム。チーム名は「広島に3×3というスポーツで旋風(嵐=storm)を巻き起こしていける存在でありたい」という思いで命名された。『地域浸透型』を掲げ、より地域と近い位置で接するクラブづくりを目指している。現在、プロリーグである3×3.EXE PREMIER(スリー・エックス・スリー・エグゼ プレミア)に参戦中。