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My Favorite Numbers
〜数字が紐解く広島アスリートの素顔 〜
【第16回】中国電力ライシス・成本綾海選手

新たなスポーツの楽しみ方を提供する、広島横断型スポーツ応援プロジェクト、通称『Team WISH』。プロ野球やJリーグをはじめ、数多くのトップスポーツチームを有する広島県ならではの取り組みとして、日々、各チーム・選手の魅力を発信している。

本連載では、Team WISHに参加する全25チームの選手・関係者に、「自身にとって印象深い『数字』」をインタビュー。
競技人生における自慢の成績、好きな数字、ラッキーナンバー……数字にまつわる物語から、選手の新たな一面にフォーカスする。

中国電力ライシス・成本綾海選手

連載第16回は、国内屈指の強豪女子卓球チームとして知られる『中国電力ライシス』から、成本(なるもと)綾海(あやみ)選手が登場。インタビューでは、中国電力ライシスだけでなく『京都カグヤライズ』の一員としてTリーグ(日本のセミプロ卓球リーグ)でもプレーする成本選手が、これまでに二度達成した〝ある記録〟が明らかに。独特のルールやマナーなど、卓球に関する数字のエピソードも語ってもらった。

◆強豪中学・高校で技術を磨き、大学4年間で50勝!中国電力でも達成した節目の数字

―成本選手には、2022年5月にもTeam WISHのWEB連載にご協力いただきました。今回は二度目のご登場となります。本日もよろしくお願いします。

「はい、よろしくお願いします」

―改めて、成本選手が卓球を始めたきっかけから教えてください。

「私は姉と兄がいる3兄弟の末っ子なのですが、上のふたりが卓球をしていたので、それを真似するように始めました。小学生の頃の将来の夢には『卓球の選手になる』と書いていたようですが、本格的にプロを目指すようになったのは大学、社会人になった頃からですね」

―何かターニングポイントのようなものがあったのでしょうか?

「卓球をするために中学から大阪の学校に進学したのですが、その学校は、インターハイで優勝するのが当たり前のような強豪校でした。そんな環境だったこともあって、当時の私は、なかなか個人戦で優勝を狙えるような選手とは言えなかったんです。大学の時に初めて全日本学生選手権のシングルスで優勝して、初めて『私もシングルスで優勝が狙えるんだ』という可能性が見えたのが、本格的にプロを目指すきっかけになりました」

―現在は中国電力ライシス、そしてTリーグ参画チーム・京都カグヤライズでプレーされている成本選手ですが、競技を始めてからここまでを振り返って、印象に残っている数字やラッキーナンバーはありますか。

「ラッキーナンバーは特に決めていないのですが、誕生月の『3』月にちなんで背番号は『3』にしていますね。卓球を始めてからの記録では、『50』が一つの節目の数字だと思います。中国電力に入社して7年で、日本リーグのシングルスでトータル52勝を挙げることができました」

―日本リーグのシングルスだけで50勝以上を達成するというのは、なかなか難しいのではないでしょうか。

「そうですね。チームでもこれまで5人しか達成していない記録ですし、誰にでもできるという数字ではないかもしれません。50勝を記録した際には、達成者に贈られる『ダイアモンドラケット賞』も受賞しました。そういえば……今、この話をしていて思い出したのですが、大学4年間もトータルして50勝を挙げたんです。関西リーグでは2、3敗しかしていなくて」

―それ以外は全勝、ということですか。

「はい。そう考えると、『50』というのは私のなかで一つの指標となる数字なのかもしれません」

―『50』は、成本選手を象徴する一つの数字かもしれませんね。

「そうですね」

◆トスの位置、タオルを使うタイミング……テンポの良い試合を実現するための特徴的なルールも

―卓球には様々な独特のルールがあると思いますが、競技に関する特徴的な数字や記録はありますか。

「例えば、試合のテンポを良くするために『タオルを使って汗を拭いて良いのは、両者の得点が6の倍数の時だけ』というルールがあります。選手のなかには、あえて時間を稼いで相手をイライラさせる作戦を使う人もいるんです。そうした『わざとゆっくり試合を進める』行為には、イエローカードやレッドカードが出ることもあります。ほかには、サーブのトスは必ず『16』センチ以上あげないといけない、というルールもありますね」

―16センチですか。細かく設定されているんですね。

「はい。トスは卓球台よりも下に下げてはいけないですし、台より上の位置であっても、ボールは真っ直ぐ上にあげないといけません。トスを斜めにあげるとボールに回転がかかるのですが、そうしたトスでボールに回転をかけるような行為は違反とされています。ボールはちゃんと真っ直ぐに上げて、ラケットで回転をかけてサーブをしましょう、ということになっていますね。トスの位置が低かったり、ボールが真っ直ぐに上がっていないために審判から注意されることはよくあります。2回連続で注意を受けると相手に1点入ってしまうので、プレーする選手たちも気をつけているポイントだと思います」

―成本選手は中国電力ライシスで7年間プレーされ、現在はTリーグにも参戦されています。卓球選手として、目標としている数字、達成したい記録はありますか?

「まずTリーグに参加した経緯からお話しすると、私が目標とする『全日本社会人卓球選手権・個人戦優勝』を達成するためには、より高いレベルでプレーする必要があると感じたことがきっかけでした。そこでチームにお願いして、Tリーグに参戦する許可をもらい、昨シーズンから京都カグヤライズに参加しています」

―Tリーグに参戦したことで、ご自身のプレーや成長速度に影響はありましたか?

「はい。昨シーズンの全日本実業団卓球選手権大会では、中国電力ライシス創部以来、初めて優勝することができました。目標としていた全日本社会人の個人戦では準優勝で、あと一歩届かなかったのですが、自分自身の実力は間違いなく上がっている手応えを感じています。12月には日本卓球リーグのプレーオフが開催されます。昨年は惜しいところで優勝を逃してしまったので、次はそこでの優勝を目指したいと思っています。2024年1月には全日本選手権も予定されているので、個人戦でベスト8に入ることを目標に頑張りたいですね」

―では、成本選手にとって思い入れのある数字、心に残る数字は、誕生月であり背番号の由来でもある『3』、大学時代と中国電力ライシスでそれぞれ達成した『50』勝、そして卓球ならではのルールである「トスは『16』センチ以上」の3つということですね。

「そうですね。現在、中国電力ライシスには8選手が所属していますが、ほとんど全員の戦型(プレースタイル)が違っているので、団体戦ではいろいろな卓球の形、スタイルを見て楽しんでもらえるのではないかと思います。性格的にも明るい選手が本当に多いですし、笑いの絶えないチームでもあります。試合中も試合外も、トータルで楽しんでいただけるのではないかと思っているので、ぜひ観戦に来て、私たちの卓球を楽しみながら応援してもらえたらうれしいです」

成本綾海選手の【My Favorite Numbers】
『3』『50』『16』


成本綾海

Ayami Narumoto

1995年3月13日、岡山県出身。
中学時代から大阪の強豪・大阪府四天王寺羽曳丘中へ進学し、同志社大を経て、2017年に中国電力女子卓球部に所属。小柄なサウスポーながら、『前陣速攻』を得意とするカウンタータイプのプレースタイルで活躍する。2020年にはファイナル4女子準決勝で、石川佳純(当時・昭和電工マテリアルズ)を下し話題となった。2023年に開催された後期日本卓球リーグでは、最高殊勲選手賞と優秀ペア賞を受賞。

◆中国電力ライシス
1991年、『中国電力卓球部』として創部。2018年から2021年にかけ後期日本卓球リーグで4連覇を達成し、2023年も優勝を果たすなど、常に実業団のトップで活躍を続ける女子卓球チームである。2023年シーズンからは、チーム名を中国電力卓球部から『中国電力ライシス』に変更。陸上、ラグビーに並ぶ中国電力のシンボルスポーツの一つとして親しまれている。