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My Favorite Numbers
〜数字が紐解く広島アスリートの素顔 〜
【第13回】中国電力陸上競技部・山口和也

新たなスポーツの楽しみ方を提供する、広島横断型スポーツ応援プロジェクト、通称『Team WISH』。プロ野球やJリーグをはじめ、数多くのトップスポーツチームを有する広島県ならではの取り組みとして、日々、各チーム・選手の魅力を発信している。

中国電力陸上競技部
山口和也選手

本連載では、Team WISHに参加する全25チームの選手・関係者に、「自身にとって印象深い『数字』」をインタビュー。
競技人生における自慢の成績、好きな数字、ラッキーナンバー……数字にまつわる物語から、選手の新たな一面にフォーカスする。

連載第13回は、ニューイヤー駅伝で優勝2回、準優勝4回の実績を持つ実業団チーム『中国電力陸上競技部』から、今シーズン、キャプテンに就任した山口(やまぐち)和也(かずや)選手が登場。陸上の名門・世羅高から日体大へと進み、箱根駅伝にも三度出場した山口選手に、自身の心に残る数字について、そして、更新し続けている〝ある記録〟について語ってもらった。

◆世羅高校から日体大へ。箱根エース区間も経験した広島生まれ・広島育ちの新キャプテン

ーまずは、山口選手が陸上競技を始めたきっかけからお伺いできますか。

「親の影響が一番大きかったですね。家族も陸上をやっていて、3歳くらいのときに『ひろしまクロスカントリー大会』というレースに出場したのが、初めての陸上の大会でした。本格的に競技に取り組むようになったのは、中学生からです。それまでは、野球や水泳、ゴルフを習ったりしていたのですが、中学から本格的に陸上に転向しました」

ー高校は陸上の名門・世羅高に進学され、日体大時代には箱根駅伝にも出場されました。ここまで陸上を続けることになった理由は何でしたか?

「これは僕の自慢の数字でもあるのですが、中学で陸上を初めてから『13』年間、自己ベストを更新し続けることができています。自分の成長を毎年ちゃんと実感できるのは、陸上を続けるモチベーションの一つになっていますね」

ー『13』年連続で、常に前年の自分を超え続けるというのは、なかなかできることではないと思います。自己ベストを出し続けるために、特に意識していることはありますか?

「そうですね。やはり更新し『続ける』というのは難しいもので、いざ僕自身の記録が出なくなった時のことを考えると、少し怖いという気持ちもあります。僕が心がけていることとしては、記録が伸びなかった時、自分に何が足りなかったのか、どこが弱かったのかを考えて、トレーニングの内容に変化をつけることですね。足りない部分を把握してトレーニングで補うことで、常に少しずつ、コツコツと強くなっているという感触があります。陸上競技は、ある時期に一気に記録が伸びる選手が多いスポーツでもあります。ただ、僕自身はそうした体験がなくて、コツコツの積み重ねで13年やってきたというイメージですね」

◆野球部時代に背負った背番号『4』は、いまも縁の深い印象的なナンバーに

ー自慢の記録以外に、好きな数字やラッキーナンバーはありますか?

「色々と考えたのですが、ラッキーナンバーは思いつかなかったんです。陸上は固定の背番号がないので、『これ!』というものも思いつかなくて……。ただ、過去のTeam WISHの連載で、ヴィクトワール広島・中田拓也選手の記事を読んで思い出したことがあるんです。中田選手と同じで、僕ももともと野球をやっていました。当時はセカンドを守っていたので背番号は『4』。そういう意味でも、4は思い入れのある数字です。それに、このインタビューを受けることになって家族と数字について色々な話をしたのですが、奥さんからも「特別な数字といえば、4でしょう」と言われたんです。思い返してみると、無意識のうちに4を選んでいることが多いんですよね。アラームをかける時も、4分で設定したり……」

ー4分ですか。かなり刻みますね。

「そうなんです。奥さんからは「うるさい」と言われたりもします(笑)。そうやって考えていくと、大会で自己ベストを出した時につけていたゼッケンも4が多かったなという気もしてきて……。このインタビューをきっかけに、『4』という数字を意識してみようかなと思っています」

ー山口選手個人にまつわる数字は、『13』や『4』が印象的ということですね。では、駅伝や陸上ならではの記録や数字はありますか?

「うーん、そうですね……。駅伝とは関係ないのですが、陸上競技全般では『400』mという数字は一つの特徴かもしれません。トラックが1周400mなのは、他の競技にはない数字なのではないかと思います。駅伝の大会でも、選手がタイムを確認する基準が400mだったりしますし、記録会でも400mのタイムは重視されていると感じています。陸上という競技としては、400という数字は一つの区切りであり、特徴でもあると思います」

◆レース中、自分自身と向き合い続ける競技だからこそ、ライバルへのリスペクトの思いもより強く

ー山口選手の思う、長距離のおもしろさ、醍醐味は何でしょうか?

「もちろん完走した時の達成感もありますが、競技をする側としてはコツコツ積み上げた努力が結果に結びつくところや、『自分とも、他の選手とも戦える』ところが面白さの一つではないでしょうか。それから個人的には、陸上競技は友達が増えるなと思っていて」

ー友達が増える、ですか?

「はい。僕は陸上を通じてたくさんの友達ができました。大会でも記録会でも、基本的にはみんな一人で走るので、待ち時間もそれぞれ一人で過ごしていたりして、お互いに声をかけやすいんです。中学で仲良くなった友達と、世羅高でチームメートになることもありました。陸上競技では、相手を〝チーム〟として意識するというよりも、〝一人の選手〟として捉える傾向がある気がしています。より一層相手に『一目置く』という感情が強くなって、リスペクトを持って声を掛け合うことができているのではないかと思います」

ー陸上選手として、山口選手が目標としている数字や記録をお聞かせください。

「スポーツ選手としては、やはり『1』位は目指していきたいところだと思います。周りに聞くと、『0』だと話す選手もいましたね。究極のタイムとして『0』秒を目指して走っているんじゃないか、と。0秒に少しでも近づけるために、少しでも早く走る。ちょっと哲学みたいな感じですが(笑)。そういう考え方もあるんだな、と感じる意見でした」

ーそれでは最後に、中国電力陸上競技部の強み、特徴をお伺いできますでしょうか。

「中国電力陸上部は、実業団チームのなかでも一番年齢層の広いチームではないかと思います。一方で若い選手も増えてきているので、フレッシュな勢いもありつつ、ベテラン選手の経験を走りを通じて若い選手が感じられる貴重な環境だと思っています。僕は今シーズンからキャプテンを任せてもらっていますが、『山口さんがこれだけやっているんだから、自分ももっとやろう』と自然と周りにそう思ってもらえるような存在として、チームを引っ張っていくことができればと思っています。偶然ですが、僕が中国電力に入社して今シーズンで『4』年目なんです。今シーズンでキャプテンになりましたし、そう考えると、やっぱり4には縁があるのかもしれないですね」

ーでは、山口選手にとって大切な数字は、さまざまな縁を感じる『4』、自己ベストを更新し続けている『13』年、そして、スポーツ選手としては誰もが目指す『1』位ということですね。

「はい、そうですね。チームは2024年の1月に、全日本実業団対抗駅伝競走大会(ニューイヤー駅伝)への出場を予定しています。チームとしての目標である8位入賞を目指して良い準備をしていこうと思っています。日頃から応援していただいているみなさんの応援は、本当にチーム全員の力になっていますので、これからも応援よろしくお願いします」

ー本日は、ありがとうございました。

「ありがとうございました」

山口和也選手の【My Favorite Numbers】
『13』『4』『1』


山口和也

Kazuya Yamaguchi

広島県庄原市出身、カープ・森下暢仁投手と同じ1997年8月25日生まれ。
中学時代から本格的に陸上競技に取り組み始め、高校は世羅高に進学。3年時には広島県代表として全国高校駅伝に出場し、5区を走り優勝に貢献した。日体大では主将を務め、箱根駅伝に出場。3年時には8区を走り3位、4年時にはエース区間である2区を任された。2020年、中国電力に入社。今季より陸上競技部の主将を務めている。

◆チーム情報/中国電力陸上競技部
1989年創部。2004年の全日本実業団対抗駅伝競走大会(ニューイヤー駅伝)で初優勝を飾ると、2001年から2008年まで8年連続で3位以内に入賞するなど、日本でもトップクラスの実力を誇る。現在は卓球部・ラグビー部とともに中国電力のシンボルスポーツチームとして活動。五輪代表として活躍した尾方剛(おがた つよし)、油谷繁(あぶらや しげる)、佐藤敦之(さとう あつし)ら、世界レベルのランナーを数多く輩出している。