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My Favorite Numbers
〜数字が紐解く広島アスリートの素顔 〜
【第12回】JTサンダーズ広島・新井雄大

新たなスポーツの楽しみ方を提供する、広島横断型スポーツ応援プロジェクト、通称『Team WISH』。プロ野球やJリーグをはじめ、数多くのトップスポーツチームを有する広島県ならではの取り組みとして、日々、各チーム・選手の魅力を発信している。

本連載では、Team WISHに参加する全25チームの選手・関係者に、「自身にとって印象深い『数字』」をインタビュー。
競技人生における自慢の成績、好きな数字、ラッキーナンバー……数字にまつわる物語から、選手の新たな一面にフォーカスする。

JTサンダーズ広島・新井雄大選手

連載第12回は、広島を拠点として活動する男子バレーボールチーム『JTサンダーズ広島』から、アウトサイドヒッター・新井(あらい)(ゆう)(だい)選手が登場。2023年9月から開催されたアジア競技大会(中国・杭州)では日本代表としてプレーし、銅メダル獲得にも貢献した新井選手に、自身の心に残る数字について、そして、世界を舞台に戦ったアジア競技大会ついて振り返ってもらった。

◆練習で鍛えたジャンプ力。日本トップクラスの最高到達点をマークする、広島が誇るスパイカー

―まずはアジア競技大会での銅メダル獲得、おめでとうございます。本日は新井選手が大切にされている数字と合わせて、2023年9月19日〜26日にかけて開催されたアジア競技大会のエピソードや、まもなく開幕を迎えるV.LEAGUE 2023-24シーズンについてお伺いしていきます。さっそくですが、新井選手にとって思い入れのある数字、好きな数字からお伺いできますか。

「思い入れのある数字は、JTサンダーズ広島でつけている背番号の『7』ですね。僕の前には同じくJTサンダーズ広島でプレーしていた八子大輔選手がつけていた番号なのですが、八子選手は東海大の先輩に当たります。すごく尊敬している先輩でもあるので、八子選手の引退のタイミングで僕が引き継ぐことになったこの背番号『7』には、すごく思い入れがありますね」

―では、バレーボールを始めてからこれまでの競技人生で、自慢の数字や記憶に残る数字は何でしょうか。

「ひとつは、ジャンプの最高到達点『350』センチです。先日のW杯に出場していた日本代表スタメン選手の平均身長は190センチ台だったはずなので、身長188センチの僕はバレーボール選手としてはあまり大きな方ではありません。高校、大学の練習でたくさんアタックを打っているうちに、徐々にジャンプ力が鍛えられていったのだと思います。学生時代には1日の練習で200本アタックを打つという練習もあったので、次第に最高到達点が高くなっていきました。日本代表の石川祐希選手の身長は192センチで、最高到達点は351センチ前後だと聞いているので、僕自身は身長の割りに高く跳べているのではないかと思っています」

―最高到達点以外に、新井選手のなかで印象に残っている数字はありますか?また、バレーボールならではの記録や数字というものはあるのでしょうか。

「バレーボールで選手が評価されるポイントとしては、得点はもちろん、先ほどの最高到達点やサーブレシーブの返球率、サーブで相手をどれだけ崩せたかを表す効果率などが挙げられます。僕自身の印象に残っている数字でいうと、直近のアジア競技大会の3位決定戦で残した1試合『22』得点ですね。これはその試合での両チーム最多得点でもあります。ごく最近の数字にはなりますが、世界の舞台、それも3位決定戦ということもあって、すごく印象に残っている数字です」

―新井選手自身、2020年以来の代表招集でしたが、大会を振り返ってみていかがですか。

「僕は今大会を通して、ベンチから試合を見ていることがほとんどでした。Bチーム(バレーボールW杯に出場した日本代表チームをAチーム、アジア競技大会に出場した日本代表チームをBチームと呼ぶ)としては、5月から代表合宿に入り、10月までずっと代表活動をしていました。ただ、僕はスタートで出場する機会はほとんどなく、交代で途中から出場することがほとんどだったんです。そのなかで感じていたことは、『準備の大切さ』でした。スタートで出ることができない試合が続いても、そこで腐るのではなく、いつチャンスが回ってきても大丈夫なように常に準備することを意識していました。準備をしていたからこそ、3位決定戦の時のように結果につなげることができたのではないかと思っています。そういう経験ができたという点でも、僕にとっては大きな意味を持つ大会でした」

―モチベーションを保ち続けるために、新井選手が心がけていたことは何でしょうか?

「代表活動では、基本的にずっと誰かと一緒に行動することになります。試合に出ている選手と出ていない選手との間に温度差があると、出ている選手の立場だと、あまり良い気持ちにはならないのではないかと思っていました。選手間の温度や姿勢に差があるとチームの和も成り立たなくなってしまうと思っていたので、その点には気をつけて、ベンチでも常にテンションを上げてチームを盛り上げるように心がけていました。周りの人にその姿がどう映っていたかは分かりませんが、自分としてはそこが大切だと思っていましたし、意識するようにしていました」

―ベンチにいるからこそできることで、チームに貢献されていたのですね。アジア競技大会で、他に印象に残っているエピソードはありますか。

「先ほどもお話しした、3位決定戦の試合ですね。僕はリードしている状態の1セット目終盤から出場したのですが、追いつかれてしまってデュース(両チームの得点が24対24で並んだ場合、どちらかが2ポイント差をつけるまでセットが継続される)になってしまったんです。ストレートでいけば25点セットで終わるのですが、なかなか決着がつかず、結局37点までもつれました。その35点、36点の時に僕にサーブが回ってきたんです。『ここで決めてやろう』という気持ちで打ちに行ったサーブでサービスエースを取ることができ、そのまま1セット目を取ることができました。あのサービスエースは自分が波に乗るきっかけになりましたし、チームとしても良い流れを引き寄せるきっかけになったのならうれしいですね」

―サービスエースが決まった瞬間は、手応えがあったのでしょうか。

「打った瞬間、『決まったな』という感触はありました。相手チームはイン・アウト(ボールがコートに入ったかどうか)を確認するチャレンジをしていたのですが、僕自身は『入っただろうな』と感じていましたね」

◆目指すはリーグ戦上位進出!中心となってチームを引っ張る世代になりたい

―バレーボールW杯ではAチームがパリ五輪への出場を決めました。新井選手のなかにも、パリ五輪出場への思いはありますか。

「もちろん、チャンスがあれば代表として五輪に出場したいという気持ちはあります。ただ、そこだけに集中するというよりも、まずは2023−24シーズンの開幕戦が控えているので、シーズンで結果を残すことを最優先に考えています」

―その2023-24シーズンが、間もなく開幕します。シーズンを通しての新井選手の目標、そしてJTサンダーズ広島としての目標をお伺いできますか。

「僕はJTサンダーズ広島でプレーして4年目のシーズンになります。チームの順位は、加入が内定した最初の年が10チーム中6位で、その後もなかなか上に上がれないシーズンが続きました。昨シーズンは、10チーム中7位に終わっています。入団してからなかなか勝てない苦しいシーズンが続いているので、まずは、チームとして上位に食い込めるように戦って行きたいと思っています。僕自身は、昨シーズンは開幕からしばらくはベンチスタートが多かったのですが、シーズン半ばからはスタートでの出場機会も増えてきました。今シーズンは最初から最後までスタートで出場して、チームの勝利に貢献できるような存在になっていきたいです」

―新井選手の思う、JTサンダーズ広島というチームの特徴は何でしょうか。

「JTサンダーズ広島はチーム全体ですごくコミュニケーションが取れていますし、プレーヤーとしても、人としても良い選手が多いのが一つの特徴だと思います。もちろん、試合になれば勝ちに行くために全員で力を出し切ることができていますし、スイッチのオン・オフの切り替えもしっかりできているチームです。僕の同期入団の選手は現在4人いるのですが、下の世代の選手も増えてきました。これからは、チームのなかでも中心になっていかなければならない世代なのではないかと感じています」

―『新井世代』が、チームを引っ張っていくということですね。

「そうなれるように頑張りたいです」

―貴重なお話をありがとうございました。新井選手にとって大切な数字は、大学の先輩でもある八子選手から受け継いだ背番号の『7』、そしてアジア競技大会の3位決定戦でマークした、両チーム最多となる『22』得点、そしてリーグでもトップクラスの最高到達点『350』センチということですね。

「そうですね。僕たちの2023-24シーズン開幕戦は、10月21日に福山市のエフピコアリーナふくやまで開催されます。JTサンダーズ広島はファンの皆さんがすごく温かいのも特徴だと思っていて、みなさんの応援は選手にとっても大きな力になっています。チームと会場もすごく一体感があるので、ぜひ試合会場に足を運んで体感してもらえたらと思います」

新井雄大選手の【My Favorite Numbers】
『7』『22』『350』


新井雄大

Yudai Arai

1998年6月27日生、新潟県出身
兄の影響でバレーボールを始め、高校は上越総合技術高に進学。東海大学時代の2017年にユース日本代表に選出され、世界ジュニア選手権、世界U−23選手権にも出場するなど、世界を相手に経験を積む。大学2年時、3年時のインカレではベストスコアラー賞を受賞。2020年にJTサンダーズ広島内定選手となる。2021年、JTサンダーズ広島に入団。1年目から出場機会を得ると、2023年にはアジア競技大会(中国・杭州)日本代表として銅メダル獲得に貢献した。

◆チーム情報/JTサンダーズ広島
1931年頃、日本たばこ産業(JT)の実業団チームとして創部。第1回日本リーグからV.LEAGUEまで、1度も2部降格を経験していない唯一のチームとして日本バレーボール界をけん引している。V・プレミアリーグで優勝1回、V.LEAGUEでは準優勝1回。黒鷲旗では優勝4回、準優勝6回の実績を持つ。チーム名、チームロゴは『人を驚かす雷鳴、美しい稲妻』をイメージしている。チームカラーはコーポレートカラーの緑。