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My Favorite Numbers
〜数字が紐解く広島アスリートの素顔 〜
【第11回】イズミメイプルレッズ・近藤万春
新たなスポーツの楽しみ方を提供する、広島横断型スポーツ応援プロジェクト、通称『Team WISH』。プロ野球やJリーグをはじめ、数多くのトップスポーツチームを有する広島県ならではの取り組みとして、日々、各チーム・選手の魅力を発信している。
本連載では、Team WISHに参加する全25チームの選手・関係者に、「自身にとって印象深い『数字』」をインタビュー。
競技人生における自慢の成績、好きな数字、ラッキーナンバー……数字にまつわる物語から、選手の新たな一面にフォーカスする。
連載第11回は、広島を拠点として活動する女子ハンドボールチーム『イズミメイプルレッズ』から、近藤万春選手が登場。日本一を目指すチームで司令塔として活躍する近藤選手の大切な『数字』、そして、ハンドボールならではのルールにまつわるエピソードを語ってもらった。
◆出会った瞬間、“一目惚れ”!走る・飛ぶ・投げるがすべて詰まったハンドボール
―近藤選手がハンドボールと出会ったきっかけを教えてください。
「小学生の頃、すごく仲の良い先輩がハンドボールをしていて、家族みんなで応援に行ったのが最初の出会いでした。実は、私の家族はみんなテニスをしていて、私自身もずっとテニスをしていたんです。松岡修造さんの『修造チャレンジ』にも参加したり、結構本格的に取り組んでいました。ただ、ハンドボールを初めて見た時に、心に突き刺さるものがあったんです。完全に一目惚れですよね(笑)。その場で家族に『絶対これ!中学校に入ったらこれやる!』と宣言しました。その時のことは、すごく鮮明に覚えています。帰り道にスポーツ店に寄って、ボールを買って帰りました」
―電撃的な出会いだったのですね。そもそも、スポーツ全般がお好きだったのでしょうか。
「まずボールで遊ぶことが大好きで、小学生の頃は休憩時間になると真っ先に運動場に出て、ドッジボールをしているようなタイプでした。テニスの他に、ヒップホップダンスや水泳も習っていました。ハンドボールは一つの競技のなかに『走る・飛ぶ・投げる』動作がすべて入っていて、スポーツの楽しい要素が詰まっている感じがすごく魅力的に見えたんです」
―そこから本格的にハンドボールを始めたのですね。当時のポジションを教えてください。
「中学生の頃は身長が低かったのですが、走るのは得意だったので、始めの1年は左サイドというポジションでプレーすることが多かったです。それ以降は、センターバックという、いわゆる司令塔のようなポジションでプレーしています。ただ、大学時代はピヴォットでもプレーしましたし、キーパー以外のポジションはすべて経験してきましたね」
◆2分間で試合の流れが変わる、ハンドボールならではの独特ルール
―近藤選手がハンドボールをプレーしてきたなかで、思い入れのある数字や記録はありますか?
「高校生の時の1試合『14』得点です。ハンドボールは1試合で平均26点前後が入る競技なので、その半分くらいを決めたことになります。その時は、そこまで点が取れるとは思っていませんでした。この得点は、人生で一番多い得点数だと思います。試合のあとは、監督にご褒美をもらったような記憶があります」
―では、ハンドボールならではの数字や、記録というものはありますか?
「『2』ですね」
―その理由は?
「ハンドボールの試合中に、試合展開がガラっと変わる瞬間があります。それがハンドボールならではのルール、『2』分退場です。相手の明らかなシュートチャンスで邪魔をしたり違反をしたりすると、審判がイエローカードを出して警告をします。その警告が続くと、ファウルをした側が2分間試合に出られなくなるというルールがあります。『2』分退場を受けたチームは1人足りない状況でプレーすることになり、守備時は数的不利の状態になります。逆に相手が2分退場になると、こちらは数的有利になります。2分あれば2、3点取ることもできるので、特に接戦の試合で2分退場になると、チームも見ている方たちもすごく盛り上がりますね」
―試合をひっくり返すこともできる、ということですか。
「はい。相手のファウルをうまく誘って、2分退場を取るのも一つのテクニックだと思います。例えば相手がしがみついても、プレーを止めずに、ゴールを目指すことが大事です」
―そういうテクニックがあるのですね。
「サッカーやバスケでも見られると思うのですが、そういうプレーやリアクションも勝負の世界では必要となってきます。『2』分という数字は、ハンドボールにとって特徴的な数字だと思います。自分で2分退場をとって、自分で得点を決めた時は、『よっしゃ』という気分になりますね(笑)」
―近藤選手自身も世界選手権に出場されるなど、代表の舞台で活躍をされています。世界を相手に戦うなかで、個人的に目標にしている数字などはありますか?
「『14』得点を超えたいという思いももちろんありますが、やっぱり競技をするうえで意識しているのは、1番になりたいということです。どの大会に挑んでも、絶対に1位になってやるぞという思いでやっています。私がメイプルレッズに加入したのは、チームがずっと2位だった時期でした。その2位を1位に変えたいという思いで、ここまでやってきましたね。今つけている背番号は『21』で、これは自分で決めた番号ではなくチームからもらった番号なのですが、とても気に入っています。『21』は2が先に来て次に1が来ますよね。これまでずっと2位で、それを1位に変えようという思いでやってきました。試合中もずっと背中につけている番号ですし、チームに加入した6年前の初心を忘れずに戦おうという意味でも、ユニフォームを着る時には『21』を確認しています」
―大切な数字とも結びつく、印象的なエピソードですね。
◆「笑って終われるシーズンにしたい」 新生・メイプルレッズが目指す日本一
―10月には日本ハンドボールリーグの2023-2024シーズンが開幕します。意気込みをお伺いできますか。
「チームは今年の4月に監督が代わり、新体制となりました。次のシーズンは、酒巻清治新監督のもと、新しいメイプルレッズのハンドボールがお見せできると思います。目標は以前からと変わらず日本一を掲げていますが、リーグの開催期間もこれまでとは変わっているので、最初からうまく行くとは思っていません。まずは6月のプレーオフ進出を目指して戦い、最後はみんなで笑って終わりたいと思っています。酒巻監督に『メイプルレッズに来て良かった』と思ってもらえるようなシーズンにしたいですね。私個人としては、膝の状態があまり良くなくリハビリを続けているのですが、今までお世話になったみなさんにコートの上で恩返しをしたいなと思っています。今までの悔しさをぶつけるような、そんなシーズンにしたいです」
―近藤選手にとって大切な数字はキャリアハイの『14』得点、背番号でもあり、「2位から1位へ」という思いのこもった背番号『21』、そして、ハンドボールの特徴的なルールである『2』分退場ということですね。
「はい。徐々にファンサービスも再開されてきて、サイン会なども開催できるようになってきました。今シーズンは、選手も、監督も、ファンのみなさんも全員で最後は笑顔で終われるシーズンにできるように、日々のトレーニングを全員で積み重ねていきたいと思います!」
近藤万春選手の【My Favorite Numbers】
『14』『21』『2』
近藤万春
Maharu Kondo
1996年1月24日生、福岡県出身
中学からハンドボールを始め、全国大会に出場。筑紫女学園高時代の2013年、ハンドボール女子ユースアジア選手権の日本代表(U−18)に選出される。大学時代に出場した2016、2017年のインカレでは2年連続で優秀選手賞を受賞。卒業後の2018年、イズミメイプルレッズに加入。7月にはU-24世界学生選手権に出場し、世界一に貢献した。同年、日本ハンドボールリーグの最優秀新人賞を受賞。2020-2021シーズンのベストセブンに輝いている。2021年、東京五輪日本代表。
◆チーム情報/イズミメイプルレッズ
1993年、イズミハンドボール部として創部。地元・広島出身の長久直子、バルセロナ五輪の元韓国代表・林五卿(イム・オキョン)らが加入し、1994年からは日本ハンドボールリーグに参入した。創部3年目の1996年にリーグ初優勝を果たすと、1998年からは7連覇を達成。実業団、学生らが競う全日本総合ハンドボール選手権大会(現:日本ハンドボール選手権大会)では1997年に初優勝、1999年からは6連覇を果たしている。2004年度、女子では1978年ぶり3チーム目となる四冠 (日本リーグ、実業団選手権(現・社会人選手権)、全日本総合選手権(現・日本選手権)、国体)を達成