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取材記事
My Favorite Numbers
〜数字が紐解く広島アスリートの素顔 〜
【第7回】中国電力レッドレグリオンズ・藤井健太郎
新たなスポーツの楽しみ方を提供する、広島横断型スポーツ応援プロジェクト、通称『Team WISH』。プロ野球やJリーグをはじめ、数多くのトップスポーツチームを有する広島県ならではの取り組みとして、日々、各チーム・選手の魅力を発信している。
本連載では、Team WISHに参加する全25チームの選手・関係者に、「自身にとって印象深い『数字』」をインタビュー。
競技人生における自慢の成績、好きな数字、ラッキーナンバー……数字にまつわる物語から、選手の新たな一面にフォーカスする。
連載第7回は、ラグビーチーム『中国電力レッドレグリオンズ』から、藤井 健太郎選手が登場。セブンズ(7人制ラグビー)金メダリストであり、2022-23シーズン全試合フル出場を達成した藤井選手の、自慢の『記録』・心に残る『数字』を紐解いていく。
◆ポジションによって背番号が変わるラグビー。大学4年間守り抜いた数字は・・・?
ーこの連載では、アスリートのみなさんの思い入れのある記録や数字をお伺いしています。藤井選手が、『数字』と言われて思い浮かぶものはありますか?
「ラグビーはポジションごとに背番号が決まっています。他の競技では、選手自身が好きな背番号を選ぶケースもあると思いますが、ラグビーの場合は、ポジションをつかみ取らなければ背番号をもらうことができません。僕は『14』番の背番号をつけているのですが、これは、主に攻撃を担うバックスという選手のなかでも、ウイングの選手がつける番号です。ウイングは『14』番の右ウイングと、11番の左ウイングがいて、僕は右のウイングでプレーしています」
ーラグビーを始めた頃から、ウイングでプレーをされていたのですか?
「そうですね。高校の頃は、まず『14』のポジションをつかみ取ることを意識していました。大学では1年生の時から試合に出してもらっていたので、4年間『14』の背番号を守り切るんだ、という気持ちでプレーしていました。そんな『14』という番号は、すごく思い入れのある数字の一つです」
ー藤井選手は日本代表としてのプレー経験も豊富です。
「代表に選んでいただいたのは、セブンズという7人制のラグビーです。通常、ラグビーは1チーム15人でプレーする競技ですが、セブンズはその名の通り、7人でプレーします。『7』も思い入れのある数字の一つですね」
ー7人制ラグビーの『7』ということでしょうか。
「セブンズの日本代表に選出された時の背番号が『7』だったのも、理由の一つです。僕はラグビーを始めてから、1位になった経験がなかったんです。高校、大学でも1位になったことがなく、全国大会に行ったこともありません。大学2年生の時にユニバーシアード日本代表に選出され、そこで初めて優勝することができました。その時につけていた背番号が『7』だったんです」
ー初めて1位、優勝を果たした時の背番号だったんですね。
「はい。『7』には良い思い出ばかりがあります。大学1年の時には、2018年のユース五輪にセブンズ日本代表として出場しました。15歳から18歳を対象とした五輪なのですが、僕は早生まれ(2000年1月17日生)で、そのおかげで代表に参加することができたんです。初めて世界の舞台で戦ったのも7人制のラグビーだったので、『7』という数字には思い入れがありますね。大学時代に注目してもらえたのも、セブンズがあったからこそだと思っています」
◆リーグわずか3人の“全試合フル出場”。安定したプレーをし続けることも目標の一つ
ー藤井選手ご自身のプレーにまつわる、思い出深い数字や記録をお伺いできますか。
「僕の理想の選手像は、安定したプレーをし続けることができる選手です。プレー中に力を発揮することはもちろんですが、それだけでなく、シーズンを通してずっと試合に出続けるということも意識しています。今でもシーズンを通してフルで出場することを目標にしていて、2022-23シーズンは全試合にフル出場できました」
ーハードなプレーも多いラグビーで、全試合に、しかもフル出場するというのは大変なことだと感じます。
「そうですね。僕たち中国電力レッドレグリオンズはJAPAN RUGBY LEAGUE ONE(以下、リーグワン)に参戦しているのですが、リーグワンはディビジョン1〜3まであり、全部で23チームが所属しています。そのなかで、2022-23シーズンに全試合フル出場したのは僕を含めて3人だけです。数字とは少し違うかもしれないのですが、リーグで3人しかいないフル出場選手になれたことは、自慢のひとつですね」
ー昨シーズンの成績を振り返ると、トライ数は6でディビジョン3のランキング8位、ゲインメーターは778メートルで6位にランクインされています。この『ゲインメーター』というのは?
「ゲインメーターは、ボールをもらった時点からどのくらい前に進んだかという距離のことです。進んだ距離が長いほど、ランキングの上位になります。僕は高校、大学と指導してくださったコーチがすごく熱い方たちで、チームもタックルを武器にしていました。その頃の指導が今の僕のベースをつくっていますし、そういうプレースタイルがもともと合っていたんだとも思います。タックルに阻まれるなかで、どれだけゴールラインに近づいていけるかという姿勢は、学生時代に培われたものが大きいですね」
◆たくさんの巡り合わせもありつかんだ代表の切符。大切にするもう一つの数字
ー9月にはラグビーW杯フランス大会が開催されますが、藤井選手が思う大会の見所はどこでしょうか?
「今回、日本代表に選出された木田晴斗選手(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)は、僕の立命館大時代のチームメートなんです。木田選手は左ウイングで、僕たちはふたりでチームの両ウイングを担当していました。木田選手のポジションの背番号は『11』で、お互いに「この背番号を4年間誰にも譲らず、頑張ろう」という話をしていたんです。そんな選手が代表に選ばれたことはうれしい反面、活躍を見れば自分自身の刺激にもなります。悔しいという気持ちをバネに、ここから成長していきたいと思います。W杯では、木田選手の活躍にも注目したいです」
ーでは、藤井選手の思い入れのある数字は、ポジション番号である『14』と、初の代表入りを果たしたセブンズにまつわる『7』ということですね。
「そうですね。それからもう一つは、生まれ年の『2000』です。2018年のユース五輪に呼ばれるきっかけになったのも、僕が2000年の、しかも早生まれで、その年に五輪が開催されて、競技種目にセブンズが含まれていたからです。五輪は4年に一度ですし、ラグビーは毎回競技種目に選ばれるとは限りません。どれだけ成績を残しても、タイミングが合わなければ五輪には出場することができないんです。この年にユース五輪に選ばれなければ、その先のキャリアもなかったと思っているので、そういう意味でも『2000』はすごく大切な数字ですね」
ー本日は、印象的なお話をありがとうございました。
「ありがとうございました」
藤井健太郎の【My Favorite Numbers】
『14』『7』『2000』
藤井健太郎
Kentaro Fujii
2000年1月17日生、京都府出身
ポジションはウイング。40代でラグビーを始めた父の影響で、幼少期からラグビーに親しむ。高校は関西の古豪・伏見工業高に進みラグビー部でプレー。立命館大在籍時の2018年にユース五輪セブンズ日本代表、2019年にはユニバーシアードセブンズ日本代表に選抜されメダル獲得に貢献した。2022年、中国電力に入社。1年目からポジションをつかみ取り、全試合フル出場を果たした。
◆チーム情報/中国電力レッドレグリオンズ
1987年創部。陸上競技部、女子卓球部とともに中国電力のシンボルスポーツチームとして活動している。2003年のラグビートップリーグ開幕後は、トップキュウシュウAに所属。2019年には同リーグでの初優勝を果たした。2021年に開幕したJAPAN RUGBY LEAGUE ONEでは、ディビジョン3に所属している。チーム名の「レッド」(赤色)はチームカラー。「レグリオンズ」は、獅子座の中で最も明るい星「REGULUS(レグルス)」と「LION(ライオン)」を組み合わせた造語で、「固い絆でつながることにより、獅子のように強いチームになる」というチームが目指す姿を表現している。