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My Favorite Numbers
〜数字が紐解く広島アスリートの素顔 〜
【第5回】安芸高田ワクナガハンドボールクラブ・後藤 悟

新たなスポーツの楽しみ方を提供する、広島横断型スポーツ応援プロジェクト、通称『Team WISH』。プロ野球やJリーグをはじめ、数多くのトップスポーツチームを有する広島県ならではの取り組みとして、日々、各チーム・選手の魅力を発信している。

(安芸高田ワクナガハンドボールクラブ
後藤 悟選手)

本連載では、Team WISHに参加する全25チームの選手・関係者に、「自身にとって印象深い『数字』」をインタビュー。
競技人生における自慢の成績、好きな数字、ラッキーナンバー……数字にまつわる物語から、選手の新たな一面にフォーカスする。

連載第5回は、ハンドボールチーム『安芸高田ワクナガハンドボールクラブ(ワクナガレオリック)』から、後藤(ごとう)(さとる) 選手が登場。今シーズンからキャプテンとしてチームを率いる後藤選手の、自慢の『記録』・心に残る『数字』を紐解いていく。

◆キャリアハイの数字を残した昨シーズン。目指すは高いシュート決定率

―今シーズンからチーム名が『安芸高田ワクナガハンドボールクラブ』(以下、ワクナガ)となり、後藤選手はキャプテンに就任されました。まずは、後藤選手ご自身の思い入れのある数字についてお伺いしていきます。

「思い入れのある数字というと、まずはやっぱり背番号が思い浮かびます。現在、僕がワクナガでつけている背番号は『19』なのですが、これはチームに加入した際にたまたま空いていた番号から選んだものです。自分自身で初めて選んだ背番号は、大学の時の『8』ですね」

―『8』を選んだ理由は何だったのでしょうか?

「ラッキーセブンという言葉がありますよね。もともと7には縁起が良い数字というイメージがありますが、それだとちょっとありきたりだなと思ったんです。そこで、ラッキーセブンに1を足して、ラッキーセブンをさらに超えていくという意味も込めて『8』を選びました。数字と言われると、僕は『8』が思い浮かびます」

―それでは、後藤選手がハンドボールをプレーする中で、印象に残っている数字や自慢の記録はありますか?

「記録では、昨シーズン(2021-2022シーズン)のシュート決定率『6割8分』です。僕は昨シーズンの目標を『シュート決定率7割』に置いていました。シーズンの終盤までは7割をキープできていたのですが、最後の方で確率を落としてしまって……最終的に6割8分で終わりました。それでもキャリアハイの数字だったので、印象に残っています。僕のポジションはシュートを決めることが仕事なので、シュート決定率はチームでもトップを取っていなければいけないと考えています。これに関しては、来シーズンも引き続き高い確率を目指していきたいですね」

―後藤選手は海外チームでもプレー経験をお持ちですが、どういった経緯で海外チームに参加されたのでしょうか。

「ワクナガは若手選手の育成の一環として海外出向の制度を設けており、毎年若い選手が、2名から3名、海外に出向しています。僕も入社後、その制度で海外に行くことができました。海外と日本では、ハンドボールを取り巻く環境は全く違います。僕がドイツで所属したのは3部リーグのチームだったのですが、1部リーグのチームの試合を見に行かせてもらう機会もありました。なかでも一番印象的だったのは、12月24日の試合ですね」

―クリスマスイブに試合が開催されるのですか?

「そうなんです。その試合は1万3000人を収容できるような大きな会場で開催されたのですが、アリーナが全部埋まるくらいの観客が集まっていたんです。ヨーロッパにおけるハンドボールは、そのくらい人気の高いスポーツなんだということを目の当たりにしました。向こうではサッカーの次にハンドボールが盛んな国もあって、注目度の違いを肌で感じることができました」

◆『7メートル』がキーになるハンドボール。キーパーの阻止率も一つの指標に

―ハンドボールは直径19センチのボールを片手でつかんでプレーするスポーツです。やはり、手が大きいと有利に働くということはあるのでしょうか。

「もちろん、手のサイズが大きい方が有利ですね。実際に測ってみたことはないのですが、身長の高い選手も多いので、みんな割と手のサイズは大きいと思います。あとは、素手でボールを扱うスポーツなので、試合中に突き指をしたりして、徐々に指が太くなっていくのもハンドボールの特徴かもしれません(笑)。突き指した状態で試合に出続けたりもするので……そうして指が太くなっていく人は、結構多いかもしれませんね」

―素手でボールを扱うスポーツならではの特徴なのですね。では、ハンドボールという競技が持つ、独特の記録や数字というのはありますか?

「ハンドボールの記録としてリーグが発表しているものには、シュート率やセーブ率、得点王などがあります。そのなかでも『ハンドボールならでは』の数字というと、7メートルスロー阻止率になると思います」

―7メートルスロー阻止率とは、具体的にどのような記録なのでしょうか。

「ハンドボールの7メートルスローは、サッカーでいうPKに近いプレーです。シューターとキーパーが1対1で対峙し、シューターはゴールから7メートルの地点からシュートを打ちます。圧倒的にシューターが有利なのですが、それでも、シーズン中には7メートルスロー阻止率5割をマークするようなすごいキーパーもいます。また、7メートルスローに限らず、シーズン中にどれだけシュートを決めたか、阻止したかという数字も出ています。ワクナガであれば、キーパーの伊藤浩太郎選手のシュート阻止率が0.315でリーグ5位、7メートルスロー得点ランキングでは、稲毛隆人選手が29得点で4位になっています」

―『7メートル』というキーワードは、なかなか他のスポーツでは聞かない数字かもしれませんね。ハンドボールというスポーツ自体はかなり試合展開の早いスポーツですが、スピーディな展開も競技の特徴でしょうか。

「そうですね。ハンドボールは1試合60分ですが、平均して30点前後が入る展開の速いスポーツです。その展開の速さや、激しいコンタクト(選手同士の接触)は、ハンドボールの特徴であり魅力でもあると思います。リーグの得点王にランクインするような選手は平均して1試合10得点前後を挙げていて、昨シーズンのワクナガであれば、先ほども名前の出た稲毛選手が得点ランキングの6位(豊田合成・Yoan Balazquez選手と同率)にランクインしました」

―ちなみに、後藤選手の1試合最多得点は?

「10得点ですね。来シーズンはもっと点を取っていけるように頑張りたいと思っているので、ぜひ期待していてください」

◆ワクナガの武器・速攻を活かした迫力ある試合に注目してほしい

―後藤選手の思う、『安芸高田ワクナガハンドボールクラブ』の魅力とは何でしょうか。

「ワクナガの特徴は、速攻の速さです。展開の速さはハンドボールの魅力ですが、僕たちのチームの持ち味は走ることと速攻なので、ボールが自チームに渡ったときの走り出しであったり、ボールのつながり、そこからの得点に注目してもらいたいと思います」

―後藤選手にとって印象的な数字は、初めてご自身で選んだ背番号『8』、昨シーズンの記録であり、キャリアハイでもあるシュート決定率『0.68』(6割8分)、そして、ハンドボールならではのルールから『7』ということですね。

「そうですね。来シーズンはもっとシュート決定率も上げて、チームの勝利に貢献していきたいと思います」

―後藤キャプテンの活躍を期待しています。本日はありがとうございました。

「ありがとうございました」

後藤 悟の【My Favorite Numbers】
 『8』『0.68』『7』


後藤 悟

Satoru Goto

1996年2月26日生、大分県出身
小学1年からハンドボールを始め、大阪体育大では西日本学生ハンドボール選手権大会で最優秀選手賞に選出された。2018年、湧永製薬(当時のチーム名はワクナガレオリック)に加入し、同年、ハンドボール男子日本代表U−24チームに選出され銅メダル獲得に貢献。2019年から1年間、ワクナガからの出向でドイツのライン=ネッカー・レーヴェン2に所属。今年5月、2023-2024年のキャプテンに就任することが発表された。

◆チーム情報/安芸高田ワクナガハンドボールクラブ
1969年、湧永製薬を母体として創部された男子ハンドボールチーム。1976年から日本ハンドボールリーグに参戦。以来、一度も降格せず1部に所属し続ける強豪チームである。1983・1990年には、リーグ優勝・日本選手権優勝・社会人選手権優勝・国体優勝のグランドスラムも達成。全日本選手権で7連覇を達成するなど、男子ハンドボールチームの盟主として活躍している。2023-2024シーズンからチーム名を、本拠地である安芸高田市を冠した『安芸高田ワクナガハンドボールクラブ』に変更。