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生まれ故郷の熊本から再出発!
戦力外からNPBへの復帰を目指す

 2022年シーズン限りで広島東洋カープを退団した山口翔。戦力外通告を受けた今、現役を続行すべく、熊本県の独立プロ野球球団「火の国サラマンダーズ」へ入団し日々汗を流している。NPB復帰を目指す山口選手に、広島での思い出やトライアウト期間中にマウンドで蘇った野球への愛、そしてファンへのメッセージを聞いた。

生粋のスポーツ少年が憧れの広島東洋カープへ入団

―幼少期は広島で過ごされたそうですね。野球を始めたきっかけを教えてください。
生まれは熊本ですが、父の仕事の関係で、2歳から小学校5年生まで広島に住んでいました。野球を始めたのは小学校4年生からです。父がもともと野球をやっていて、「スポーツは野球が一番面白い」と言われ、軟式野球チームの高陽スカイバンズに入りました。それまでは、水泳を習っていたんです。

―当時から、夢は野球選手でしたか。
小さい頃は、特に何も考えていなかったですね。僕はスポーツ少年だったので、サッカーやバスケも楽しんでいました。中学生の頃は、休日や学校の休憩時間もバスケットボールにあけくれていたほどです。でも、あまり上手じゃなかったんですよ。さまざまなスポーツをプレーする中で、一番よく出来たのが野球でした。よく同級生に「将来はカープの選手だね」って言われていましたが、その頃は絶対に無理だと思っていました(笑)。

―2017年にドラフト2位でカープに入団されました。当時の気持ちは。
中学と高校は熊本で過ごしたので、「また広島に帰れるんだ!」と嬉しく思いましたね。それに、小さい頃からカープファンだったので、喜びもひとしおでした。

―カープ在籍中の4年間で一番に心に残っている場面は。
やはり、プロ初勝利した2019年5月30日のヤクルト戦です。初めてヒーローインタビューに答えた日でもありました。とても緊張して、何を話せばいいのかわからず、ベンチ裏で考えこんでいました。事前に先輩からアドバイスをもらい、変なことは言わないように、しっかり言いたいことを覚えてマウンドに出ましたね(笑)。

戦力外から故郷熊本で自分らしい野球を

―2022年のオフに自由契約となりました。率直な気持ちを教えてください。
なかなか結果を出せずにいたので、「もしかすると…」と予測はしていましたが、やはりショックでした。とにかく悔しくて、かなり落ち込みました。「クビになった」という現実だけが脳内を巡り、セカンドキャリアについてもなかなか考えられずにいましたね。

―火の国サラマンダーズに入団した経緯を教えてください
トライアウトに参加した初日、一番に声をかけてくれたのが神田さん(SAH代表の神田康範)だったんです。ユニフォームから私服に着替え、帰ろうとした時でした。「もう(席を)開けているから。一緒にもう1度、NPB球団に戻ろう」と。その時は即答せず、「ありがとうございます」とお返事をして終わりました。実はトライアウト中も、野球を続けるかどうか迷っていたんです。そんななか、周りの人から「まだまだやれるよ」とか、ファンの方から「待っているよ」など、いろんな言葉をもらううちに気持ちが固まってきました。それにトライアウトを通じて「野球が楽しい」と久々に感じることができたんです。加えて、火の国サラマンダーズの本拠地は、僕の地元である熊本。「もう1年、ここで頑張ろう」と契約を決めました。同じカープ出身の小窪哲也さんが「火の国サラマンダーズ」からロッテ(千葉ロッテマリーンズ)に現役復帰されており、NPBへの復帰という将来が描けたのも、入団理由のひとつです。

―カープ在籍中は、野球を楽しめていなかったと。
調子が良い時はもちろん楽しかったです。でも成績を追い求めるうちにマイナス思考に陥り、自分の強みがわからなくなっていました。自信を無くしていたと思います。

―改めて、山口選手が考える自分らしさを教えてください。
直球を強気で攻めていくのが自分のスタイルだと思っています。自信のある真っ直ぐな球を跳ね返されないように思い切り投げることが大事だと、熊本に来て改めて感じていますね。

現在の練習環境はいかがですか。
NPBチームと比べると選手の数が少ないので、監督やコーチが、技術やトレーニング法、そしてマインドセットまでみっちりと教え、鍛えてくれます。自分の時間もしっかり取れますし、「火の国サラマンダーズ」は、野球をするベストな環境が整っています。ただひとつ、遠征の移動がバス利用なので、ちょっときついです。カープ時代は新幹線移動だったので…。他県に行くときは4時間以上バスに乗ることもあり、腰が破壊しそうで辛いこともあります(笑)。

―熊本での生活はいかがですか。
広島と熊本の街って、ちょっと似ているんです。市電も通っているし、熊本の下通商店街と広島の本通商店街は、雰囲気が似ています。住むのにちょうどいいコンパクトさも同じです。熊本は、皆さんが思っているよりも都会ですよ。馬刺しも美味しいですし、とても良いところなので、ぜひ遊びにきていただきたいです。

NPBへの返り咲きを掲げ日々邁進

―入団1年目。今後の展望を教えてください。
まずはやはり、「火の国サラマンダーズ」で結果をしっかり残して、よりレベルアップした自分を見てもらいたいと思います。そして、再度NPB球団から声をかけてもらえるように、1日1日を大切に頑張ります。目標は、広島東洋カープを見返すことです。でも誤解しないでください。僕はカープファンです。今でも、ちゃんとカープ情報をチェックしています(笑)。

―熊本の皆さん、そして広島のファンへ向けてメッセージをお願いします。
僕は熊本出身です。地元を盛り上げるために精一杯頑張るので、ぜひ球場へ足を運んで、選手たちのプレーを見てもらいたいと思います。そして、広島カープファンの皆さん、今まで応援ありがとうございました。僕もカープのことをずっと応援していますし、何度も言いますが小さい時から根っからのカープファン、一生カープファンだと思います。共にカープを応援しましょう。そして僕自身にもぜひ、声援をお願いします。次は、カープと戦えるような選手になって、また戻ってきたいと思います!


山口 翔

Sho Yamaguchi

1999年.熊本県熊本市出身。幼少期に広島へ移住し、小学4年生から野球をスタート。熊本県立熊本工業高等学校ではエースとして活躍。2017年のドラフト会議にて広島東洋カープから2位指名されプロ入りする。2022年、戦力外通告を受け、同球団を退団。2023年シーズンに、熊本県の独立リーグ・九州アジアリーグの火の国サラマンダーズへ入団する。


(コーディネート/大須賀あい)