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公益社団法人広島県パラスポーツ協会の新たな挑戦と変革~パラスポーツで多様性を認め合うインクルーシブ社会を目指して~【後編】

広島県パラスポーツ協会で会長を務めております、山根やまねつねひろです。

先週に引き続き、広島県における今後のパラスポーツの普及・振興について、お話させてください。

公益社団法人 広島県パラスポーツ協会のめざす姿とは

(東京2020パラリンピック聖火ランナー広島県代表 江南聖(えなみたかし)さんとご家族)

広島県障害者スポーツ協会(平成28年1月に設立。平成30年4月に一般社団法人化)は、公益社団法人パラスポーツ協会へと生まれ変わり、広島県においても、スポーツ推進課内にパラスポーツ担当を設置されたことを、大変嬉しく思います。 民と官が一緒になり、広島県内にパラスポーツ普及を目指すことを目標に、今後の活動を広げ、共生社会を一緒に作っていきます。

平成30年4月に、広島県において、パラスポーツ推進事業は健康福祉局障害者支援課から地域政策局スポーツ推進課に移管され、スポーツ振興を基軸とした施策展開に移行しています。

県全域のパラスポーツを統括する中核的な組織としての当協会においても、従来からの障害者支援、障害者福祉の枠組みを超えて、スポーツ振興を基軸にし、障害の有無、性別、年齢に関らず、多様な人々が参画する親しみやすいパラスポーツ(Inclusiveスポーツ)の普及振興を図り、パラスポーツを通じた共生社会の進展を目指していきます。

(当協会の強化指定選手 白砂匠庸(しらまさたくや)選手【東京2020パラリンピック競技大会陸上競技やり投げ6位入賞】)

現在、県と協働して、今後の5年間の県全体のパラスポーツ施策と当協会の体制強化を考えています。

その目指す姿として、①「普及啓発・認知の向上」、②「場の充実・機会の提供」、③「競技力向上」を3つ柱としています。まずは「パラスポーツをみんなに知ってもらう」、そこから、パラスポーツをもっとやってみたい、楽しみたいという人には、「きちんと場や機会を提供する」、さらに、もっと本格的にパラスポーツに取り組み、自分を高めたいという方には「競技力向上に向けた支援をしっかりと行う」、また、という風に、それぞれの施策が有機的につながり、効果的なパラスポーツ施策作り、実行していきたいと思っています。

パラスポーツフェスティバル広島の開催について

(車いすソフトボール体験会の様子)

また、私は、県内におけるパラスポーツフェスティバルを開催したいと思っています。
  パラスポーツを行う団体には、地域の身近なサークル、同好会、仲良しグループもいれば、組織化した競技団体等様々あります。

その様々なパラスポーツの団体が、はじめは小さい大会からでもいいので集まり、県内の市町で開会式を開催し、その後に、様々な市町でパラスポーツフェスティバルを行う、そうしていくうちに、団体同士の横のつながりも生まれ、コミュニケーションも深まるでしょう。行政や当協会も、大会を開催しているうちに、様々な課題が見えてくるでしょうし、パラスポーツの知見も深まってくるでしょう。そのようにして、先ほどの3つの柱の施策が自然とうまくまわっていくのではないかと考えています。

今年度は、県内で、「パラセーリングの国際大会」と「スペシャルオリンピックス2022広島」が開催!

~2022 ハンザクラス アジアパシフィック チャンピオンシップ & パラ ワールド セーリング チャンピオンシップ ハンザクラス 広島~

2022年(令和4年)10 月 20 日~23 日、広島市内の観音マリーナで、パラセーリングの2つの国際大会が同時開催されます。

(スペシャルオリンピックス2022広島分火式 有森裕子会長あいさつ)

一つは、障害の有無や性別、年齢に関わらず、皆が同じルールでセーリングを楽しみながら競い合う「ハンザクラスアジアパシフィックチャンピオンシップ」、もう一つは、障害のあるアスリート同士が競い合う「パラワールドセーリングチャンピオンシップハンザクラス」です。2つの大会には、10か国以上、選手120名、サポーター・ボランティア200名が参加予定です。
 2018年には、アジアで初めて「ハンザクラスワールド」という障害者が中心の世界ヨット大会が、観音マリーナで盛大に開催されました。選手達が懸命にレースを繰り広げるとともに、サポーター、ボランティア、スタッフなどの多くの関係者同士が交流と親睦を深め、障害の有無や国籍などを超えた「共生社会」を具現化する大会が行われたのです。
 今年の2つのパラセーリング国際大会は、2018年のハンザクラスワールドに続く、Inclusive な大会です。大会開会式では、レース海面を見渡せるデッキのある「マリーナセンター(仮称)」というユニバーサルな建物の竣工式も行います。ぜひ、みなさん、お越しになりませんか。世界に誇れる多島美の瀬戸内海で、赤、緑、青、白色のきれいなヨットの帆がなびく「命輝く姿」をSNSなどでも世界に向けて発信していきます。

~2022年第 8 回スペシャルオリンピックス日本 夏季ナショナルゲーム・広島~

(【トーチリレー】大会サポーター緒方孝市様・アスリート大賀康平さん)

また、2022年(令和4年)11月4日~6日は、広島県(広島市、呉市、三原市、北広島町)において、中四国初めて「2022 年第 8 回スペシャルオリンピックス日本 夏季ナショナルゲーム・広島」が開催され、全国47都道府県から知的障害のあるアスリートが日ごろの練習の成果を発揮するため、広島に集まり、陸上競技、競泳、卓球、馬術など12種目を競い合い喜びを共にします。

スペシャルオリンピックスは、知的障害のある人たちにスポーツトレーニングと、その成果の発表の場である競技会を、年間を通じて提供し、社会参加を応援している国際的な組織で、オリンピックと同様4年毎に夏季・冬季の世界大会を開催し、この広島大会は、2023年にドイツ・ベルリンで開催される世界大会の日本選手団の選考を兼ねています。

全国から、知的障害のあるアスリート約900名、スタッフ約1,000名、ボランティア 延べ 約4,000名、観客 延べ10,000名、という計約16,000人が広島にお越しになり、スポーツを通して広がる出会いの歓びを分かち合い、熱い想いや心の交流を図る場となります。

~パラスポーツは、共生社会を創る「新しいスポーツの力」~

(2018ハンザクラスワールド大会の様子)

東京2020パラリンピック競技大会の翌年に、県内で大きな3つの国際大会・国内大会が同時に開催され、海外や国内各地からパラアスリートが集い、競い合う姿を目の当たりにすることで、県民の方々には、パラスポーツをより身近に感じていただくいい機会になるとのではないかと思います。

障害の有無や、年齢、性別を問わず、誰もが参画し、親しむことができるパラスポーツは、共生社会を創る「新しいスポーツの力」となっています。多様性を認め合う共生社会の構築は戦争のない平和な社会を作ることになります。この3つの国際大会・国内大会が、国際平和祈念都市広島で開催され、世界に発信されることは新型コロナ感染症時代を経て、新しい時代を切り拓く人々に勇気と夢をあたえてくれるものと確信しています。

パラスポーツにおける活動のテーマは、「様々」

パラスポーツにおける活動のテーマは、「様々」だと思っています。

パラスポーツの営みは、身近な地域でのサークルから組織的な障害者団体までその活動の幅は様々で、スポーツの種目も様々で、この様々が手を携えて新しいスポーツ社会を作っていくことが当協会の役割なのだと思います。

「様々」な楽しみ方をし、そして命を輝かす。この「様々」を広島が先端を切って、パラスポーツの振興に努めていきます。ぜひ皆さん、まずは、パラスポーツの大会会場、パラセーリング会場でもまずはお越しください。今までのパラスポーツとは違う要素を、目で見て感じ取っていただけたらと思います。

パラスポーツを、一緒に楽しみませんか。きっと新しい世界が見えてくるはずです。


山根 恒弘

Tsunehiro Yamane

公益財団法人 広島県パラスポーツ協会 会長
 公益財団法人 広島県セーリング連盟 会長
 ヤマネホールディングス株式会社 取締役会長


(コラムコーディネート/大須賀あい)