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公益社団法人広島県パラスポーツ協会の新たな挑戦と変革~パラスポーツで多様性を認め合うインクルーシブ社会を目指して~【前編】

広島県パラスポーツ協会で会長を務めております、山根(やまね)(つね)(ひろ)です。

広島県パラスポーツ協会は、元々「広島県障害者スポーツ協会」という名称で設立され、活動して参りましたが、令和4年4月に公益法人化するとともに、「公益財団法人広島県パラスポーツ協会」へ名称を変更しました。

当協会や広島県が目指す、今後のパラスポーツの普及・振興について、私のこれまでの経験と併せてお話したいと思います。

平成28年1月、広島県障害者スポーツ協会が設立

(全国障害者スポーツ大会の様子)

冒頭でも少し触れましたが、「広島県障害者スポーツ協会」は、視覚障害のある方・聴覚障害のある方・身体障害のある方・知的障害のある方・精神障害のある方たちのパラスポーツ施策を総合的に実施し、県全域のパラスポーツを統括する中核的な組織として、平成28年1月に設立されました。
事務局は、東広島市内にある「スポーツ交流センターおりづる」内に設置されています。

当協会は、県の「スポーツ推進計画」、「安心▶誇り▶挑戦ひろしまビジョン」等に基づいて、県の委託事業や補助金等を受けながら、県パラスポーツ事業の施策主体として、「裾野の拡大」から「競技力向上」まで取り組み、県民のみなさまがパラスポーツに親しめる環境づくりを目指してきました。

 具体的な事業としては、小中学校や商業施設等で行うパラスポーツ体験会、特別支援学校スポーツ交流会の開催支援、初級障がい者スポーツ指導員養成研修や、パラアスリートの強化支援事業などを行っています。

全国でも最先端の理念と行動力を持つ協会へ!令和4年4月「公益社団法人 広島県パラスポーツ協会」に名称変更

(公益法人パラスポーツ協会の理念について語る山根会長)

当協会は、全国でも、遅い時期に設立された協会(47都道府県中46番目)でしたが、この4月から、公益事業を主な目的とする「公益法人」とし、名前も「広島県パラスポーツ協会」になりました。全国でも最先端の理念と行動力を持つ協会として、活動を展開していきます。

東京2020パラリンピック競技大会等により、パラスポーツへの関心が高まる中、障害の有無や、年齢、性別を問わず、誰もが参画し、多様性を認め合う共生社会の進展を担うパラスポーツの振興に、県と共に今後5か年の施策を作り、県内各市町や障害者関係団体などとしっかり連携を図り、取り組んでいきます。

ここで、私のパラスポーツに関わるきっかけとなった、ハンザヨットの話をします。

ハンザヨットを通じ、多様性を認め合う共生社会を目指して

(2018ハンザクラスワールド広島大会の様子)

ハンザヨットとは、オーストラリアのクリス・ミッシェル氏により「誰でも乗れるように」と考案されたものです。さまざまな工夫により、子どもから高齢者の方、障害者の方も難しい練習などをせずに簡単に、かつ安全に帆を操って船を走らせることができます。

 私は、広島県セーリング連盟の会長も務めております。
 今から15年前、2艇のハンザヨットを観音ヨットハーバーに導入したことが、私とパラスポーツの関係の始まりです。多くのボランティアの力と時代の要請で、年々、ハンザヨットを楽しむ障がい者の方々が、そうしてヨットの数が増えていきました。 

ハンザヨットとの関わり合いは、気付きと驚きの連続です。

(障害のある方がハンザヨットに乗船する様子)

2018年には、アジア初のハンザヨットクラス世界大会を24ヶ国191人の選手が参加し開催しました。
 この大会に重度障害の10人の外国人選手が来ました。器具(サーボ)を使って操船する選手、手足が無く顎で操船する選手もいました。私は、その重度障害の選手達が参加したことに対し、彼らにも表彰の機会を与えるために特別なカップを用意しようとしたところ、国際連盟の役員は怒るのです。彼らは「All One!All One!」と繰り返します。「区別するな」というのです。なるほど、この大会の直前になってやっとInclusive Sailing大会だと解りました。

すでに「障害者のため」のセーリング大会はもはや過去のやり方であって、障害者を分離するのではなく「すべての人が一緒に参加できるプロブラム」に進化していました。すべての人のためのセーリング(Sailing for Everyone)とヨット先進国は一周先を回っていました。「この大会は共生社会(Inclusive社会)を作るツールだ」と言うのです。

勝利や記録に留まらない、命輝かす新時代スポーツ

(車いすバスケ体験会の様子)

今日まで、スポーツは競争社会の進展に貢献し、オリンピックも規模を拡大し、大きな社会的影響力を持つようになりました。記録を出す、メダルを取る、という競争至上主義スポーツと競争至上主義経済は両輪となり、経済発展で豊かさを実現してきました。

それが今、自然・地球環境の破壊、温暖化、グローバル化のなかで、地球との共生、多様な価値観の共有が国際社会共通の課題になってきました。

そういった中で、競争より共生のパラスポーツは社会の関心も高くなり新たな時代を作る力になろうとしています。

次週は、当協会が目指す姿や私の思うパラスポーツのテーマ、今後開催予定の大会についてお話します。


山根 恒弘

Tsunehiro Yamane

公益財団法人 広島県パラスポーツ協会 会長
 公益財団法人 広島県セーリング連盟 会長
 ヤマネホールディングス株式会社 取締役会長


(コラムコーディネート/大須賀あい)