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福山からJリーグ参入を目指す 地域課題解決型クラブの夢と挑戦

福山シティフットボールクラブ 代表 兼 GM 岡本 佳大

皆さん、はじめまして。福山シティFCで代表兼GMを務める岡本(おかもと)佳大(けいた)と申します。

「福山シティFC」は、広島県福山市、そして備後エリアを拠点とするフットボールクラブです。設立6年目の当クラブですが、2年連続で天皇杯に出場するなど確実に成績を伸ばし、福山市からJリーグ入りを目指すべく、日々邁進しております。

今回はぜひ、多くの方に当クラブを知っていただきたく、クラブ構想や描くビジョン、そして私が考える経営論等についてお話したいと思います。

コト足りるけどモノ足りない街をサッカーで盛り上げる

福山シティFCは、福山青年会議所が母体となりスタートしたクラブです。古くから製造業が盛んで、ものづくりの街として知られる福山には、たくさんの優良企業が集結しています。その企業トップ達からなる任意団体が、スポーツを通じたまちづくりを目的とし、2015年に「福山にプロサッカークラブをつくろう会」が発足。2017年にチームが設立され現在に至ります。

福山の人口は約46万人、産業も発展した大きな街です。しかし福山市は、「コト足りるけどモノ足りない街」とも言われています。生活をするには何不自由ありませんが、何か物足りなさを感じてしまうのです。私はその理由を、エンターテイメントの欠如だと考えています。サッカーに限らず、福山市にはプロスポーツチームがほとんどありません。私は、スポーツには人々に感動と喜びを届ける力があると思っています。また、チームが試合で勝利すれば、地域全体が盛り上がり、経済効果も期待できます。県外からの来客が増え、食や観光が潤うなど、経済を循環することに繋がっていきます。

福山シティFCは、何のために勝つのか。その答えは1つ。

「全ては福山のために」

我々は、 Jリーグへの参入を目指していますが、それだけがゴールではありません。サッカーやスポーツを通じて活力ある福山市の未来創生に寄与していくことを大前提としています。福山市にとって、なくてはならない存在に、また今までのプロスポーツ概念を超えたクラブになっていきたいのです。

勝ちを科学する壮大なクラブビジョン

2年連続で天皇杯に出場。2020年には、天皇杯で全国ベスト6となった当クラブですが、全国規模で名が知れているとはまだ言えません。しかし、我々の強みは、クラブ運営とチーム強化に対するプランをそれぞれ立て、その両輪をきちんと回す戦略にあると思います。一般企業と同じく、サッカークラブ運営においても、事業戦略や経営計画は非常に大切です。
 小学生の頃から日本と海外、両方のサッカーを見てきた私は、日本のサッカーに疑問を抱くことがありました。日本のサッカーは、監督が変われば試合戦略や起用選手も変わります。

しかし、海外のサッカーは監督ありきではなくチームありき。例えば、多くの人がご存知であろうFCバルセロナ(通称バルサ)。

長年バルサで活躍してきた世界的サッカー選手のリオネル・メッシがいてもいずとも、また監督が変わっても、バルサはバルサのサッカーを展開します。このスタイルを貫く姿勢は、とても大切だと考えました。監督の主観で全てを動かすのではなく、現代のテクノロジーを用いてデジタル分析をしながら、ロジックで数値化して可視化する。我々はこれを「勝ちを科学する」と呼んでいます。
 福山シティFCのフットボールスタイルは、福山市の歴史や地域の特徴を徹底的に調べて構築しました。福山市を背負って戦うことを前提に、出てきたアイデアを言語化し、それをスピリットとしてクラブ全体に落としこんだのです。我々が導き出したのは「攻守において主導権を握るサッカーをする」という答え。それを「Ambitious Football」と呼び、クラブアイデンティティに掲げています。

全ては福山のために、J1参入を目指す

(公益財団法人日本サッカー協会サイト引用)

当クラブの目標は、将来から逆算して考えています。まずは2030年に J 1で優勝争い。2024年に はJリーグで戦うことを想定しています。昨年、J5に相当する中国社会人サッカーリーグに昇格できたので、今年はJ4に相当にするJFLにランクアップする目標を掲げています。もう一つの目標は、天皇杯でJリーグのチームを2度倒すこと。ジャイアントキリング、つまり下剋上に挑みます。

なぜストイックに戦うのか。それはやはり、福山市のためです。福山市のチームが、Jリーグチームを倒せる力があると証明できれば、福山市民に勇気や感動、明日への活力を与えることができると考えています。強きものに挑戦して勝つ。我々のメンタリティーを、市民の皆さまに本気で還元していきたいと思っています。

福山市はたくさんの課題がある街です。都市規模の割に知名度は低く、運動の実施率も全国平均に比べ10%ほど低いというデータがあります。また、少子高齢化による人口減少という地域課題もあります。我々は、その課題をスポーツの力を通じて解決していく地域課題解決型クラブです。そのため、自治体や行政とタイアップし、子どもたちに向けたサッカー教室はもちろん、市民に向けた体づくり教室を開催するなどの地域貢献活動を行っています。

当クラブが存在しているのは、多くの方々に支えられているおかげです。現在、スポンサードいただいている企業様は約180社。その他、ご支援いただいている企業様を合わせると、約700社に応援をいただいています。アットホームに支えてくださる福山市の皆さまには、感謝しかありません。
 J 1で優勝するのは1チームだけです。しかし、地域にクラブがどれだけ貢献しているかという価値の部分で、当クラブは1位をとりたいと思っています。ナンバーワンじゃなく、オンリーワン。週末にサッカーを観に行こうという、福山の日常を作るのが我々の使命です。

県東部から広島を真のスポーツ王国へ

広島は、スポーツ王国です。しかし正直なところ、このスポーツ王国という言葉は、広島市のみを指すのではと、私個人は感じています。私は広島市の出身です。広島東洋カープ、サンフレッチェ広島をはじめ、さまざまなトップスポーツが当たり前に感じられる環境で育ちました。しかし広島市を一歩出ると、市民のスポーツへの熱量は、広島市と同等ではありません。当クラブは、広島県の東部エリアからスポーツを盛り上げ、県全体をスポーツ王国にできるような存在になりたいと思っています。

また、私自身、サンフレッチェ広島が大好きです。サンフレッチェ広島があったからこそ、私はサッカーを続け、スタジアムに試合を観に行き、選手にサインをもらい、たくさんの夢や感動を与えてもらいました。いつか、同じJリーグの舞台で戦えるダービーマッチが実現できれば、これほど幸せなことはありません。その夢が叶うよう、そして皆さまの期待に沿えるよう、チーム一丸となり挑戦を続けていきたいと思います。


岡本佳大

Keita Okamoto

1989年生まれ。広島県広島市出身。広島観音高校でインターハイ全国優勝を経験。広島修道大学法学部卒業後、世界最大規模の総合印刷会社「凸版印刷」に就職。独立後、広島市で少年サッカークラブなどを経営し、2019年から福山シティFCの経営に参画。現在は代表兼GMを務め、スポーツを通じた活力ある福山市の未来創生への取り組みを進める。