Magazines マガジン
-
自転車ロードレース
-
TeamWISH
-
コラム
地域を愛し、愛されるチームへ
皆さん、はじめまして。
VICTOIRE(ヴィクトワール)広島の代表取締役、そして監督を務める中山卓士(なかやまたかし)です。私は学生時代から始めた自転車競技に魅力を感じ、プロ選手として活動してきました。現在は、広島のプロチームであるVICTOIRE広島を運営しながら、自転車競技の普及・発展を目指しています。
今回は、私が自転車競技に目覚めた経緯や、現在行っている活動について、そして、コロナ禍だからこそできるこれからのスポーツビジネスのあり方について、お話ししたいと思います。
人生を変えた自転車との出会い
私が初めて自転車競技に出会ったのは高校へ進学したときでした。当時の私は、若気の至りでヤンチャをしていることが多く、両親や先生によく怒られたものでした。勉強があまり得意ではなかったものの、父親に「高校だけは出るんだ」と諭されたことで、なんとか高校に入学することになりました。そして入学した高校は、偶然にも自転車競技の強豪校だったのです。
小・中学校とスポーツ経験はあったものの、本格的にスポーツに打ち込んだ経験のなかった私は、当初、なんとなく軽い気持ちで自転車競技部に入部しました。最初のうちは練習をサボろうとしていた私でしたが、先生方の熱い指導によって、だんだんと自転車の魅力を知っていきます。
それまで遊んでばかりいた私は、練習すればするほど強くなれる自転車競技に触れ、気がつけば夢中になっていたのです。その後、ずっと続けていた自転車競技でプロチームに所属し、自転車大国であるベルギーで約4年活動していました。
そして、日本に帰ってきた現在、VICTOIRE広島を運営するに至ったというわけです。
地域密着型の活動で、広島に自転車文化を根付かせる
私がプロ選手としてベルギーで活動していたころ、非常に感動した出来事がありました。それは、ベルギーの人々が皆、自転車をレジャーとして楽しんでいたことです。
ベルギーは自転車競技が国技であるため、誰もがロードバイクを一台は持っています。休日は家族でサイクリングに出かけたり、会社の同僚とロードレースを開催するなど、日常的に自転車競技に親しんでいる光景を数多く見かけました。
また、日本でいう草野球チームのように、地域で子どものサイクリングチームが作られているなど、幼少期から自転車に触れているようでした。
自転車競技は全身運動なので、健康やダイエットの面で考えても非常に身体に良く、また膝を傷めにくい競技であることから、老若男女が隔てなく楽しめる生涯スポーツです。だからこそ、国に関わらず地域に根ざしやすいスポーツなのではないかと考えてます。
私はベルギーでの光景を思い出し、「誰もが楽しめる自転車文化を、日本でももっと盛り上げていきたい」と思うようになりました。そこで、私たちVICTOIRE広島は「自転車文化の創造」を目指して、広島の地域を盛り上げるための地域密着型の活動に力を入れています。
地元の学校に訪問して交通安全授業を行ったり、各団体と協力して自転車に安全に乗るための教室を開くなど、自転車のプロだからこそできる安全啓発活動に努めています。また、講習だけでなく、広島の皆さんに自転車競技を体験していただくため、広島県内唯一の市街地ロードレースを主催してきました。
一般の方でもサイクリングを楽しめる場を設けることで、広島の方々に自転車競技へ関心を持ってもらう。そして、地域の方々に協力していただき、共にイベントを企画することで町おこしも担っています。
苦境だから気がついた、今こそやるべきこと
新型コロナウイルスという未曾有の事態に直面して、スポーツ業界、そして私たちVICTOIRE広島も、少なからず打撃を受けました。大人数で集まってのトレーニングや大会の開催も難しくなっている現状ですが、私はこの状況こそ、新しいことを始めるチャンスだと捉えています。
例えば、今年は大会を開催する見通しが立たないと判断したなかで、国内トップリーグ「Jプロツアー」に参戦する4チームで協力し、オンラインレースを開催しました。
選手たちがルームランナーのようなローラー台の上で自転車を漕ぐと、専用の装置が選手の出力を測定し、そのデータをアプリに送ることで画面上のアバターが動くという仕組みを使い、よりリアルなレース体験ができるように。本番でも、実際のレースさながらの熱狂を生み、今後の可能性を感じました。
他にも、独自のYouTubeチャンネルを開設し、選手たちのインタビューや選手の自転車にカメラを設置して選手目線を映した動画などを載せたところ、2ヶ月でなんと24万回再生を記録できました。
今までは、大会や練習でなかなか手が回らなかったオンラインでのPR活動に注力したことで、サポーターの皆さんから「選手の姿を見られて嬉しい」とご好評をいただき、また新しいファンが獲得できるなど、すでに効果が出ています。
このように、今の時代だからこそできるアイデアはたくさんあるはずです。大会がないからと言って、悲観ばかりするのではなく、新しい取り組みにチャレンジし続け、自転車競技をもっと広めていきたいと思っています。
VICTOIRE広島を日本一愛されるチームへ
「自転車文化の創造」をミッションに、様々な活動をしている私たちVICTOIRE広島には、最終目標があります。
それは、VICTOIRE広島を「日本一愛されるチーム」にすることです。
全国各地には自転車競技のプロチームが数多くあります。そのなかでも、強い弱いに関わらず、親しまれ、愛されるチームであることが最も重要だと考えているのです。
そのために、日々の練習に取り組むことはもちろんですが、私たちを支えてくれる広島の皆さんが笑顔になれるように、またYouTubeやイベントなどを通して、選手たちの素顔や競技について知っていただきたいと考えています。
地域を愛し、地域に愛され、自転車競技をより身近なものとする。それが、私たちの目指す道です。
中山卓士
Takashi Nakayama
VICTOIRE広島 監督
CYCLE LIFE株式会社 代表取締役
高校入学時に自転車競技をはじめ、高校卒業後は宇都宮ブリッツェンなどの国内チームに所属。2012年から約4年はベルギーのチームに在籍。現役時代、数々の大会で優勝や入賞を経験し、帰国後はVICTOIRE広島を創設。現在はチームの運営会社であるCYCLE LIFE株式会社の代表取締役として精力的に活動しながら、VICTOIRE広島の監督として選手と共に数々の大会に臨んでいる。