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今後の広島県におけるスポーツ振興について

公益社団法人日本ホッケー協会 事務局長 坂本幼樹

皆さん、こんにちは。

公益社団法人日本ホッケー協会事務局長の坂本幼樹と申します。

普段は東京都内で公益社団法人日本ホッケー協会の運営に携わりながら、代表チームの強化活動や、国内にホッケーを普及させる取り組みを行っています。

今回は、私がホッケーの世界に足を踏み入れた経緯や現在行っている活動について、また、今までの経験を通じて広島のスポーツ振興について考えていることをお話させて頂ければと思います。

金融業界からスポーツの世界へ

私は岐阜県高山市で生まれ育ちました。昔から身体を動かすことが好きで、中学校時代と高校時代は共にハンドボール部に、また大学に入学してからは海への憧れが高じてヨット部に入部し、楽しい学校生活を送りました。

大学を卒業してからは株式会社富士銀行(現、みずほ銀行)で約10年間と米投資銀行 Morgan Stanleyで約12年間を企業の買収合併(M&A)のアドバイザーとして、資本市場のど真ん中で刺激的な毎日を過ごしていました。

(写真提供:公益社団法人日本ホッケー協会)

「いつかスポーツの世界で仕事がしたい」
という気持ちが心の奥底にあったものの、足掛かりや人脈もありませんでした。

そんな私がスポーツ業界へ足を踏み入れるきっかけとなったのが、スポーツヒューマンキャピタル(SHC)に受講したことでした。スポーツヒューマンキャピタルは、「スポーツ経営人材の育成と知恵の集積」をビジョンに人材育成を行っている団体です。私は知人に紹介され、第三期生として受講し、投資銀行の業務を続けながらスポーツ経営を学びました。

もともとスポーツを観戦するのは大好きでしたが、スポーツマネジメントについて詳しく勉強したり、様々なジャンルのスポーツ人材との交流を通じて、この業界で働きたい気持ちがより強まったのです。

(写真提供:公益社団法人日本ホッケー協会)

そこで紹介されたのが「公益社団法人日本ホッケー協会」でした。私はホッケーのプレー経験は全くなく、恥ずかしながら競技自体の存在すらよく知りませんでした。

しかし、迫る東京2020オリンピックに日本代表が出場する競技を統括する団体で働ける機会があること、そして何より、協会全体としてガバナンスの改革を強く進めたいというプロセスにおいて外部人材としての役割が強く求められていることに強い関心を持ちました。

良い機会だと思い、国内のホッケーについて調べてみたところ、私の故郷である岐阜県の各務原市には、日本代表チームが本拠地とする大規模なホッケー場(NTC)があると知ったのです。自分の地元でも親しまれているスポーツだとわかったことで、何か強い縁を感じ、事務局長に就任することと致しました。

2018年の7月に協会に加わった後、昨年の2019年6月には広島県で「FIH・シリーズ・ファイナル」という女子のオリンピック予選を兼ねた8ヵ国の国際大会が行われました。私もその大会運営に携わったことが、スポーツアクティベーションひろしまに関わるきっかけとなったのです。

オリンピック後を見据えて、今からできること

ホッケー業界を見つめてきた私ですが、現在のスポーツ振興には「オリンピック」の存在が非常に大きな役割を果たすと考えています。大会に向けての機運醸成や準備だけでなく、オリンピックの追い風を最大限に活用して、その後を見据えた計画が重要になると思うのです。

(写真提供:公益社団法人日本ホッケー協会)

そこで我々、公益社団法人日本ホッケー協会では、去年1年間をかけて中長期計画を新たに策定しました。

『Japan Hockey Road to 2030 ~東京2020レガシーでホッケーの新時代を創る~ 』と打ち出した計画では、オリンピック後の未来を見据え、我々になにができるかを考えることで、今後10年の活動の基盤となる理念・ビジョン・スローガンを再設定し、自分たちの取り組み課題を言語化したのです。

一般企業であれば理念やビジョンを定め、それらに基づいた中長期計画を策定し、経営環境に応じて修正していくというプロセスは当たり前のことですが、ホッケー協会を含め日本のスポーツ競技団体では必ずしもそうではありません。現在は中長期計画をもとに簡単なサマリーを作成し、ホッケー界へ啓蒙活動を行っています。

この中長期計画を多くのステークホルダーにご理解頂き、支持を得ることが重要となります。その中でも大きなヒントは「地域連携」にあると考えています。

ホッケーは今日まで、国体の開催地を起点に根付いてきたスポーツでした。大きな都市ではチームが少ないものの、国体の開催地と指定された小さな都市では、地元をあげてホッケーを楽しむ「ホッケータウン」のような地域が全国に存在します。

(写真提供:公益社団法人日本ホッケー協会)

前記した岐阜県各務原市をはじめとして、広島県や島根県の地域にも大きなホッケー場があるのです。今まで地域密着型で盛り上げてきたスポーツだからこそ、さらなる地域連携の推進は今後の競技の発展に必須というわけです。

現在、東京2020オリンピックが開催される大井ホッケー競技場の地元である東京品川区・大田区との地域連携を高めるために、地元自治体関係者から、町会、街づくり協議会や商店街連合会といった方々にホッケーの試合を観に来ていただき、ホッケーを知って、将来に亘り支えて頂ける裾野を広げる活動を進めています。

また、 2020年9月には東京モノレール㈱様との間で、お互いが長期的な相互協力を実施することで、沿線地域のスポーツを通じた活性化を図り、これによって両社のブランディングの向上と沿線地域の発展及び利用者満足度の向上に寄与することを目的とした『オフィシャル社会共創パートナー』協定を締結しました。

地域への貢献を言葉に出して動き始めてみると、実は多くの企業がこの話題に関心が強いことが判りました。我々の持つ地域連携の課題感と近いため、今後もパートナーづくりを広げていきたいです。

2030年に向けてのビジョン

オリンピック後も引き続きホッケーを盛り上げていくためには、「バランスのとれた協会運営」が重要だと考えています。

代表やアンダーエイジチームの強化、指導者の育成や普及活動が最優先課題であることは間違いありませんが、ホッケーはマイナースポーツである以上、地域連携を含む社会貢献や、オリンピックをきっかけに得られた様々なノウハウやネットワーク、そしてなにより競技に興味関心を持ってくださったファン層を含めた「レガシー」を活用し続けることが大切だと考えています。

我々はホッケーを野球やサッカーのような超メジャースポーツにしたいとは考えていません。する・見る・支えるの何らかの形で関わることが誇りとなるようなスポーツにしたいと思っています。

そのためには、日本のホッケーが持つ価値を言語化した上で、マイナースポーツだからこそできる新しいスポンサーシップの形を追求し、地域や人々の連携を強めていくことが、大きな目標と考えています。

ホッケーの成功事例から、広島に「わがまちスポーツ」を

 スポーツアクティベーションひろしまと、ホッケーのマネジメントの視点は非常に親和性が高いと考えています。

なぜなら、スポーツアクティベーションひろしまが実施するわがまちスポーツでは「各地域で各スポーツコンテンツを活かす」ことが必要となるからです。各地域のスポーツを子どもから大人まで楽しめるようになれば、スポーツを使った町おこしが地域単位でできるようになります。

ホッケーは多くの地域で、規模は小さいながらも強くそして深く根付いたことで、その地域スポーツとして大切にして頂いた歴史があります。このような歴史を、広島の地で様々なスポーツを通じて再現できたなら、目標の達成はそう遠くないと思っています。

メジャースポーツではないからこそ少数の熱狂的なファンをつける。地域ごとでスポーツを活用した様々な取組が行われることで、スポーツを活用した町おこしが活性化­するはずです。

今後もホッケーで町おこしをしていき、今までの成功事例を研究することで、地域に恩返しをしていきたいと考えています。


坂本幼樹

Yoki Sakamoto

公益社団法人日本ホッケー協会 事務局長

1973年11月生まれ 岐阜県高山市出身

1996年 株式会社富士銀行 入行

2006年 米投資銀行 Morgan Stanley 入社

2017年 スポーツヒューマンキャピタル受講(第3期生)

2018年8月 公益社団法人日本ホッケー協会 事務局長 就任(現)