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ひろしま×スポーツ×データ ~岡山県との比較から~【前編】

市町支援戦略ディレクター 藤原直幸

こんにちは。スポーツアクティベーションひろしま(SAH)で市町支援戦略ディレクターを務めている藤原直幸と申します。SAHに来る前は大学院でスポーツ科学について研究したあと、2019年の秋までは笹川スポーツ財団で研究員をしており、スポーツに関する調査や研究、政策提言などを行っていました。

私は岡山県の井原市で生まれ、18歳まで過ごしました。聞き慣れない街だと思いますが、井原市は岡山県の西の端、広島県福山市と接しています。小さな頃から遊びに行くのも買い物に行くのも家族で食事をするのも福山市でした。そして現在、私の両親は福山市に移り住み、広島県民になりました。

県境で生まれ育った人間として、広島と岡山のふたつの故郷を持つ人間として、このコラムでは広島県と岡山県の比較から、広島県のスポーツに関するデータを読み解いていきたいと思います。なお、分析には、する・みる・ささえるスポーツに関しては総務省が5年ごとに実施する「社会生活基本調査」の2016年版を、スポーツ施設に関しては文部科学省が3年ごとに実施する「社会教育調査」の2018年版を使用しています。どちらのデータも政府統計の総合窓口に公開されていますので、興味のある方はぜひご自身でデータを触ってみてください。

1.する・みる・ささえるスポーツ

まず、するスポーツとして、年1回以上のスポーツ実施率を比較してみました。最も実施率が高い都道府県は東京都で75.7%です(表1)。2位以下は埼玉県72.6%、神奈川県72.4%、千葉県と滋賀県が同率で71.6%と続きます。上位は関東地方の1都3県で占められています。全国平均は68.8%であり、過去1年間に7割弱の人が何らかの運動やスポーツを実施していることがわかります。反対に3割の人が過去1年間に何も運動やスポーツを実施していない事実も明らかとなります。

広島県と岡山県を比較すると、66.5%(27位)と66.8%(24位)でわずかながら岡山県のほうが実施率が高いという結果でした。ただ、両県とも全国平均(68.8%)よりも低く、順位も半分より下となっています。

スポーツ実施率を性別にみると、男性は東京都が78.5%と最も高く、滋賀県76.9%、神奈川県76.8%、埼玉県76.3%、千葉県75.8%と続きます(表2)。全体でも同率4位であった滋賀県の実施率が高い特徴がみてとれます。全国平均は73.5%であり、およそ3/4の男性が過去1年間に運動・スポーツを実施しています。

広島県と岡山県を比較すると、72.7%(20位)と71.4%(30位)で広島県のほうが実施率が高いという結果でした。全体では岡山県のほうが高かったですが、男性は広島県のほうがよく運動・スポーツを実施しています。ただし、両県ともに全国平均よりも低いです。

女性をみると、東京都が73.0%と最も高く、唯一7割を超えています(表3)。次いで埼玉県68.9%、神奈川県68.0%、千葉県67.5%、愛知県66.9%となり、1都3県プラス大都市のある愛知県が上位となりました。全国平均は64.4%であり、およそ2/3の女性が過去1年間に運動・スポーツを実施しています。また、男性よりも女性のほうが実施率が低い現状が明らかとなります。

広島県と岡山県を比較すると、60.7%(31位)と62.5%(19位)で男性とは異なり、岡山県のほうが実施率が高いという結果でした。また、男性と同様、両県ともに全国平均より低いです。

1-2 スポーツ種目

次に、どのような運動・スポーツ種目が実施されたのかをみました。広島県において実施率が高かった種目を11位まで示しました(表4)。「ウォーキング・軽い体操」が38.5%と最も高く、広島県民のおよそ4割が少なくとも1年に1回は実施しています。以下、「器具を使ったトレーニング」13.6%、「ボウリング」12.5%、「つり」11.7%、「ジョギング・マラソン」9.6%と続きます。ひとりや少人数でも実施できる種目の人気が高いです。

全国平均と比較すると、広島県民の実施率が全国平均よりも高い種目は「つり」(広島県11.7%:全国8.7%)、「野球(キャッチボールを含む)」(広島県8.2%:全国7.2%)、「バドミントン」(広島県6.8%:全国6.7%)となり、特に「つり」と「野球(キャッチボールを含む)」は全国4位と高順位です。しかし一方で、多くの種目の実施率が全国平均よりも低い結果となりました。

岡山県と比較すると、全国でも高順位であった「つり」(広島県11.7%:岡山県10.1%)、「野球(キャッチボール)」(広島県8.2%:岡山県7.7%)に加え「水泳」(広島県9.3%:岡山県8.6%)は岡山県よりも広島県のほうが実施率が高く、反対に「器具を使ったトレーニング」(広島県13.6%:岡山県14.3%)、「ボウリング」(広島県12.5%:岡山県12.7%)、「ジョギング・マラソン」(広島県9.6%:岡山県10.2%)、「ゴルフ(練習場を含む)」(広島県7.7%:岡山県7.9%)、「サイクリング」(広島県7.0%:岡山県7.1%)、「バドミントン」(広島県6.8%:岡山県7.2%)、「登山・ハイキング」(広島県6.8%:岡山県7.0%)では岡山県のほうが実施率が高い結果となりました。

1-3 直接スポーツ観戦

するスポーツに続いて、みるスポーツのデータを示しました(表7)。表7は年1回以上、直接スポーツを観戦した人の割合です。最も観戦率が高い都道府県は広島県で32.9%でした。2位に6ポイント以上の差をつけて圧倒的です。以下、宮城県26.4%、福岡県26.1%、神奈川県25.3%、北海道24.6%と続きます。上位はNPBのプロ野球チームがある都道府県で占められています。全国平均は21.5%で、およそ1/5の人が過去1年間にスポーツを直接観戦していることがわかります。岡山県(18.8%:28位)と比較すると、日本一の広島県とは大きな差がみられました。

直接スポーツ観戦率を性別にみると、男性は広島県が36.7%で最も高く、宮城県30.5%、神奈川県29.9%、福岡県29.9%、東京都28.7%と続きます(表8)。

全国平均は25.9%で、およそ1/4の男性が過去1年間にスポーツを直接観戦しています。女性も広島県が29.3%で最も高く、福岡県22.7%、宮城県22.5%、北海道21.2%、神奈川県20.6%と続きます(表9)。全国平均は17.4%でおよそ1/6の女性が過去1年間にスポーツを直接観戦しています。岡山県(男性24.2%:18位、女性13.8%:40位)と比較すると、男女ともに大きく差があります。広島県民は性別関係なくダントツでスポーツを直接観戦している県民だといえるでしょう。

1-4 ボランティア

最後に、ささえるスポーツであるスポーツボランティアのデータを示しました。なお、分析に使用した社会生活基本調査ではボランティアの質問項目を「スポーツ・文化・芸術・学術に関係した活動」としており、純粋にスポーツに関するボランティアだけを示すデータではないことにご注意ください。

最もボランティア実施率が高い都道府県は長野県で5.4%でした(表10)。2位以下は富山県と山梨県が同率で5.1%、島根県5.0%、岩手県4.9%と続きます。全国平均は3.7%であり、ほとんどの人が過去1年間スポーツ・文化・芸術・学術に関するボランティアを行っていないことがわかります。

広島県と岡山県を比較すると、3.4%(37位)と4.3%(11位)で岡山県のほうが実施率が高いという結果でした。広島県は全国平均よりも低く、全国順位は下位になっています。ボランティア実施率を性別にみると、男性は長野県が7.1%と最も高く、島根県7.0%、山梨県6.7%、富山県6.6%、岩手県6.4%と続きます(表11)。全国平均は4.6%でした。

広島県と岡山県を比較すると、4.4%(36位)と5.7%(9位)で岡山県のほうが実施率が高いという結果でした。順位でみると大きな差がみられました。女性をみると、愛媛県と佐賀県が4.0%で同率1位、以下、滋賀県3.9%、長野県3.8%、富山県3.7%と続きます。全国平均は2.8%でした。 広島県と岡山県を比較すると、2.4%(41位)と3.0%(20位)で岡山県のほうが実施率が高いという結果でした。


 

12月4日(金)更新「ひろしま×スポーツ×データ ~岡山県との比較から~【後編】」に続きます。