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コラム
スポーツは夢を与えられる存在
皆さんにとって、スポーツとはどんな存在でしょうか?
私が広報の仕事を通じて強く感じたのは、スポーツは人々に「夢を与えられる存在」だということでした。
だからこそ、環境や年齢などの垣根を取りはらい、たくさんの人々の生活にスポーツを届けられるように力を尽くすことが、私のミッションだと思っています。
スポーツの楽しさを自分のふるさとへ
スポーツアクティベーションひろしまのアドバイザリーボードメンバーの小脇聡太と申します。
今回は私が今まで広報活動に携わってきた経験から、広島をスポーツで盛り上げるためにどうすればよいのか、についてお話しさせてください。
そもそも私がスポーツビジネスに関わるきっかけとなったのは、学生時代のインターンの経験からでした。熊本県の田舎で生まれ育った私は、大学を選ぶ際に「スポーツに携わりたい」という漠然とした思いから、京都の大学に進学することにしました。
大学でスポーツビジネスを学びながら、在学中に参加したインターンで、スポーツが持つエンターテインメント性の虜になりました。そして、「ふるさとの熊本のようなプロスポーツが存在しない街(当時)にも、スポーツというエンターテイメントを届けたい」という思いに駆られたのです。
大学卒業時に、広報・PRの仕事ができる会社という視点で就職活動を開始しましたが、当時スポーツと広報の要素を併せ持った会社は「株式会社サニーサイドアップ」の一社以外見当たりませんでした。迷わず面接を受け、入社することができました。
入社後しばらくは、PRの部署で企業や商品のPR、記者発表会の取り仕切りをメインに行っていたため、スポーツに関わることはできませんでした。しかし、ジャンルや規模を問わず幅広い広報活動に携わった経験は、現在に至っても非常に役立っています。
入社4年目にして、スポーツの部署へ異動することに。念願のスポーツビジネス分野では、一般財団法人TAKE ACTION FOUNDATIONのサッカーチャリティーマッチにおいて、宮崎・湘南・タイの三拠点を担当しました。また、アスリートのマネジメントを任され、選手複数人のマネージャーを掛け持ちしていたことも。最後には、オリンピックの招致活動にも関わっていました。
そして東京五輪が決定。肩の力が抜けた私は、次の目標を探すべく、サッカー・本田圭佑本人や彼が筆頭に展開するプロジェクトの広報担当としてHONDA ESTILO株式会社へ転職します。しばらくは本田圭佑の広報を担当していましたが、現在はスポーツ施設の運営統括をし、スポーツ施設と街を結ぶような仕事に携わっています。
今回、アドバイザリーボードメンバーとして携わることになった「スポーツアクティベーションひろしま」は、私が学生のときに感じたスポーツの可能性を再確認できるプロジェクトだと考えています。
「スポーツの楽しさをふるさとに運びたい」と願った、過去の自分と対峙するかのような気持ちです。今まで培ってきた広報の経験を活かし、スポーツによる地方創生に努めていきたいと思っています。
地方創生のカギは「地元への愛」
スポーツによる地方創生を考えたとき、私が最も重要視しているのは、「長期的なまちの盛り上がり」です。
最近では、スポーツで地域の活性化を目指す動きが全国的に増えています。新しくスポーツチームを立ち上げたり、土地を生かした広大なスポーツ施設を建設し、大会や合宿の誘致を図るなど、各地域が様々な工夫をしているようです。
その際には、短期的ではなく、もっと中長期的な街の活性化を念頭に置く必要があると感じています。長く続くエンターテイメントを生み出すには、チームの立ち上げや施設といった地方創生の重要なコンテンツをどう使うか、スポーツをどう生活の一部にしていくか、しっかりと準備段階で想定しておくことがまだまだ必要だと感じます。
私は広島に住んだことはないですが、広島に住んでいる人は、地元のスポーツにアイデンティティを持っているではないでしょうか。「幼いころから見ている、広島カープが好き!」「やっぱり、サンフレッチェ広島を応援したい!」
といった、スポーツと故郷への思い入れとが強く結びついていると想像します。
これらのビッグコンテンツをきっかけに他県から広島県を訪れる人も多いでしょう。スポーツとツーリズムは深い関係にあり、県外から人を呼ぶことは「地方活性化」の視点でも重要だと考えていますが、広島県に限っていえば、そこは他県よりも進んでいる“強み”になっているはずです。
広島県が「スポーツを通した活性化」を実施していく上で、こういった県外からの集客力という強みは強みとして伸ばしつつ、もう一度、「地元へのアイデンティティ」という強みに目を向けてみてはどうでしょうか。スポーツで地域活性化をしようと試みても、その地域がそもそもスポーツに対する熱が低かったり、地域活性化にスポーツをどう活かせばいいのかわからなかったりという声を耳にすることはあります。広島県はおそらく既にその土台はできあがっているので、あえてその内部(広島県内)に目を向けてみることが重要ではないかと感じています。県内のスポーツに対する愛情や理解、アイデンティティの中に、活性化を成功させるヒントが隠れているのではないでしょうか。
スポーツというエンターテインメントによって、地元の人々を気持ちで繋げ、広島県全体を盛り上げる!そしてそれを次世代以降にも残すような長期的な目線で構築する。 そうしてはじめて「スポーツアクティベーションひろしま」が持つ目的を果たせるのではないかと考えています。
子どもたちに夢を描ける未来を
新型コロナウイルスの世界的流行によって、我々はスポーツを楽しむことが難しくなっています。仲間と集まって、みんなでひとつの競技に励む喜びを思い出しながら、私は状況を打開するようなアイデアがなかなか浮かばずに悩んでいました。
オンラインでのスポーツレッスンや観戦も企画され始めてはいますが、実際にプレーしているときの達成感や、スタジアムの空気を肌で感じたときの臨場感は、何ものにもかえがたいということを痛感しています。
しかし、発想を転じてみればスポーツの新たなエンターテインメント性を発見するチャンスにもなり得るかもしれません。
ドイツで行われたプロサッカーリーグ1部ボルシアMG戦では、無観客のスタジアムに顔写真を貼ったダンボールを置いて試合を行うという、ユニークな施策が組まれたことが話題を呼びました。海外にならい、逆境の中で見つける新しい可能性を、絶えず探し続けていきたいと思います。
さらに、新型コロナウイルスの影響で東京オリンピックの延期も決定しました。前職でオリンピックの招致に関わっていたことも相まって、非常に残念な気持ちです。しかし、その失意の中でも、私が招致活動に携わっていたときに常に頭の中にあったことを思い出すのです。
それは「スポーツで子どもたちが夢を描ける未来を作ろう」というメッセージ。
オリンピックが決まれば、スポーツをする子どもたちが目指す先を得るでしょう。幼い心に将来に向けた希望の明かりを灯すことは、きっと意味のあることだと信じて活動してきました。
来年のオリンピックの開催が危ぶまれたとしても、私たち大人は子どもたちが夢を持てるものを、つくり続けなければいけないのではないでしょうか。そして、今はまだ東京と地方にスポーツ環境の格差があります。より多くの人々がスポーツを気軽に楽しめる環境を広島の地で目指していきたいです!
今の時代を生き抜く子どもたちが、少しでも未来に夢と希望を抱けるように、力を尽くしたいと願っています。
小脇聡太
Sota Kowaki
SOLTILO株式会社 広報部 兼 施設運営部 部長
SAH アドバイザリーボード
大学卒業後、PR会社に就職。企業、行政、商品のPRを多数担当。記者発表会やPRイベントの取り仕切りも担当した。アスリートマネジメントや国際的スポーツイベントの招致活動に携わる。
2014年、サッカー本田圭佑の広報担当として株式会社HONDA ESTILOに入社。現在は全国4施設のスポーツ施設の運営統括をしており、それぞれの街とスポーツの関わりを構築中。